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(読み)
自然 煮 といへども、煮 奴事 有。
し袮ん尓尓へるといへども、尓へぬことあり
其 時 蠟 灰 一 升 程 入 る。早 速 煮 ると志るべし。
そのときろう者いいっしょう本どいるる。さつそく尓由るとしるべし
蠟 灰 奈き時 ハ、石 灰 尓天もよし。
ろう者いなきときは、いし者いにてもよし。
灰 を加 へしハ紙 漉 立 し後、 紙 少 しく赤 ミさ春なり。
者いをくわへしは可ミ春き多てしのち、かみ春こしくあ可みさ春なり。
爰 尓いら佐゛る事 奈可゛ら、心 得のために記 し置 也。
こゝにいらざ ることなが ら、こゝろえのためにしるしおくなり。
初 め蒸春節、 又、 かく乃
者じめむすせつ、また、かくの
古゛とく煮る時、
ご とく尓るとき、
(大意)
楮苧皮は普通はそのままで煮えるものであるが、煮えないこともある。
そのときは蠟の灰を一升程入れると、すぐに煮えることを知っておくとよい。
その蠟灰がないときは石灰でもよい。
灰を加えて紙漉きした後、その紙は通常のものより少し赤みがさしている。
ここで、いらないことかもしれないが、心得のために記しておくことがある。
最初に楮苧の枝を蒸すときや、また、前述のように煮るとき、
(補足)
この頁は絵図なしの文章のみとなります。
「自然」の振り仮名が「し袮ん尓」(しねんに)となってます。この振り仮名ならば
「自然二」とカタカナの「二」があるかとおもうのですが、そうなってません。
ここでの「自然」は山川海などの自然ではなく、そのままで、ひとりでに、ほおっておいてもなどという意味です。
「有」のくずし字、「メ」の部分がなんかすごい。「月」は普通のくずし字。
「蠟灰」、日本農書全集53の注には、蠟を取るのに使った「ハゼ」の実の灰だろうか、とあります。
「早速」は常套句で頻出。
「爰」(ここ)、頻出。
「いらざる事」の「ざ」は「佐」。「亻」+「ち」のような形です。「流」のくずし字に似ています。
「心得」、古文書には頻出用語で日常語の上位の言葉だった感じがします。くずし方の形も数通りあり、出てきたら必ず読めるようにしておくべき用語です。
「初」のくずし字、「於」に似ています。
「節」のくずし字は、冠の「竹」が「前の上部」(りっとう)になってます。
「〜節」というふうに頻出です。
同じようものに「筋」があります。くずし字は「リットウ」+「助」。
この「節」の次の字は「又」です。「尓」に似て、筆記体の「y」の大きな字みたい。
絵がないと寂しいので、以前の頁の
2_Cutting the paper-mulberry in winter.の絵図。
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