2018年9月2日日曜日
紙漉重宝記 その23
P.10 冬楮苧苅とる圖
(読み)
冬 楮苧苅とる圖 可ミくさ
ふゆ可うそとるづ かみくさ
十 月 かり取 也
じゅうがつかりとるなり
木立 を見せ
こ多゛ちをみせ
苅 春゛して商 ふ
可らず してあき奈ふ
もあり
もあり
間半 に
ま奈可に
切りそろへ類
きりそろえる
於ら尓用 可゛有 なら
おらにようが あるなら
む可ひのたを可らひや
むかいのたをから「ひや
これ といふて下 され
これ」というてくだされ
か多ふ くびつ天 く連ふ
かたふ くびつて くれふ
(大意)
冬に楮苧を刈り取る図。かみくさ。
十月に刈り取る。楮苧の育ち具合を見せて、刈らないで売ることもある。
半間に切りそろえる。
「おらに用事があるなら、向かいの峠から大声で呼べと言って下され」
「固く結んでくれ」
(補足)
「ひやこれ」「ひゃこれ」、島根県は石見の方言だそうです。ネットで調べるといろいろでてきます。
見せるだけで売買していたとありますから、今でいう青田買いなのかな。
「間半」(まなか)、一間の半分。三尺なので90cmくらい。
刈っている様子から、楮苧の立木はすっかり葉を落とし、地面近くで枝分かれしているのがわかります。のこぎりではなく、鎌で切っているのですね。
固く結んでいる人は、上半身ハダカです。力仕事なんでしょう。
ちなみに、薪などをくびるときは結んだあとに、その束に薪を数本無理やり押し込むと決してゆるゆるにはなりません。
「取」のくずし字は既出ですが、あらためてながめると「死」に似てなくもない。
見出しに「〜の圖」とあります。この後この形が続くのですが、旧字の「圖」のこともあれば「図」のこともあります。特に使い方の統一がないところがゆるくて、そんなことを構わない、気を使わないのが当時では当たり前だったのでしょう。
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