2018年9月15日土曜日

紙漉重宝記 その36




P.16 同皮を漬置く圖の6行目まで


(読み)
いさや紙 を漉 ん
いさや可ミを春可ん

と思 ふ時 朝 ゟ 晩
とおもうときあさより者゛ん

晩  方  奈れバ朝
者゛ん可゛多なればあさ

まで水 へ漬 於き
までみずへつけおき

持 可へりう春皮 を
もちかえりうす可ハを

春ご起取 なり
すごきとるなり

(大意)
いざ紙を漉こうとおもうときは、楮苧の皮を水に漬けておくのだが
それは、朝から晩まで、または晩につけたのなら朝まで行う。
持ち帰ったら、薄皮をしごき取る作業をする。


(補足)
「思」、前後関係から読めなくもありませんが、初めて見ると?です。
「朝」、旁の「月」が特徴的。よく出てきます。
「ゟ」(より)、フォントを探したらありました。ひらがな二文字をくっつけたもので合字といいます。このフォントは機種依存字なので他機種では表示されないかもしれません。
「晩方奈れば」の「奈」の変体仮名が「る」そのままで、紛らわしい。
次の「朝」の「月」はそのままでくずされてません。美意識としておきます。

「水」はなんでこんなくずし字になるのかわからないながらも、最初の最上部の点みたいのが一画目の「|」で、二画目で左部分を、三画目で右部分の「く」を流してゆくと勝手に解釈してます。

「持」、ぱっと見た目で判断すると「枝」と読んでしまう。旁の「寺」はこんな感じにくずされることが多いですが、2行目の「時」では「寸」のようになってます。
「春」のくずし字は頻出ですが、「す」と「て」をくっつけたようにも見えます。

 作業をしている人たちはいままで裸足が多かったのですが、この御婦人は草鞋をはいてたすき掛けをしています。川の流れは速そう。

 「紙漉重宝記」は海外で翻訳出版されていることは以前の投稿で紹介しました。
1871年にイギリス議会で「Reports on the manufacture of paper in Japan」として出版されています。



 「同皮を漬置く圖」は「Washing the skins」と題して収められています。



 このレポートに収められている、色絵は原図に比べると稚拙です。
誰が写したかはわかりません。
雰囲気は出ているのですが、細かな描写が手抜きです。
急いでいたのかもしれませんが、そうだとしてももっとマシな絵師を雇うべきでした。


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