2025年7月21日月曜日

江漢西遊日記四 その64

P74 東京国立博物館蔵

(読み)

能り一 里沖 神﨑(カウサキ)尓蘭 舶 ふなかゝ里して

のりいちりおき   こうさき にらんせんふながかりして


其 舩 能そバへ乗り付 其 高 キ事 二丈  程 モ

そのふねのそばへのりつけそのたかきことにじょうほども


あらんと見へ縄 者゛しこを登 ル事 至  て武ツカし

あらんとみえなわば しこをのぼることいたってむつかし


登 り津くして下 を見れハ屋根ニ能ぼりて見

のぼりつくしてしたをみればやねにのぼりてみ


見おろ春如 しさて大 舶 なか\/書 ニも辞(コトハ)

みおろすごとしさておおふねなかなかしょにも  ことば


ニも述へか多し舩 チヤンニて黒 ぬ里闌 干(ランカン)能ミ

にものべがたしふねちゃんにてくろぬり    らんかん のみ


黄色 なり石 火矢筒 一 方 ニ二十  五頂 いて

きいろなりいしひやつついっぽうににじゅうごいだいて


六 十  程 あり艫(トモ)能方 屋形 ありヒイドロ障子(ショウシ)

ろくじゅうほどあり  とも のほうやかたありびいどろ   しょうじ


ニして海 を望 武帆柱 ラ三 カ所 尓立ツ帆綱(ツナ)ハ

にしてうみをのぞむほばしらさんかしょにたつほ  づな は


誠  尓くも能巣能如 し綱(ツナ)毎(コト)セビとて万 力 車

まことにくものすのごとし  つな   ごと せびとてまんりきしゃ

(大意)

(補足)

「ふなかゝ里して」「武ツカし」「津くして」、「し」が他の文字とかさなっています。

「二丈程」、約6m。

「チヤン」、チャン〔「青」の中国音からか〕→瀝青(れきせい)『れきせい歴青・瀝青】

天然に産する固体,半固体などの炭化水素類の一般的総称。普通,天然アスファルト・コールタール・石油アスファルト・ピッチなどをいう。道路舗装用材料・防水剤・防腐剤などに用いる。ビチューメン。チャン』のことだとおもわれます。『チャンぬり【チャン塗り】

瀝青(れきせい)を塗ること。「―の油かはらけ,しぼかみのたばこ入」〈浮世草子・日本永代蔵6〉』

「望武」、ひさびさの「望」のくずし字、忘れていてすぐには読めませんでした。

「セビ」、西遊旅譚三の図の説明の中に「万力車。長崎にニテハセビト云。ヲランダニテハカツトロルト云」とあります。

 西遊旅譚三に蘭舶の詳細な図があります。

 船の中央で縄バシコを登っている人が描かれています。

「石火矢筒一方ニ二十五頂いて六十程あり」、画にもあるとおり、荷を運ぶ商船とは名ばかりで、実際は軍船であったのが当時の船でありました(宣教師もほとんどが軍人でした)。自分の船を守るだけではなく、海上で他国の船にであって、自分の船のほうが強そうだとみれば海賊行為に及び、荷を奪っていました。

 また本国で英仏蘭のいずれかが戦争状態であると、アジアの航路でそれらの国が出会うと即、大砲の打ち合いとなって戦闘となるのでした。それらに関するたくさんの記録や本も出版されています。

 江漢さん「石火矢筒」の数をちゃんとあわせたように描いています。ふだんの風景画とはまったくことなる筆運び、タッチです。

 

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