P69 東京国立博物館蔵
(読み)
其 内 より出で手ニ長 ヒキセルを持チ吾 等ニ
そのうちよりいでてにながいきせるをもちわれらに
向 て挨 拶ツ春松 十 郎 通 辯 して云 ニハナント。
むかいてあいさつすまつじゅうろうつうべんしていうにはなんと
リツパ。尓ケツコーカとあちら可ら自慢(シマン)して
りっぱ にけっこーかとあちらから じまん して
云フなり彼 等日本 をバ物 をかさら春゛至 て素
いうなりかれらにほんをばものをかざらず いたってそ
なる国 風 と思 ヒ云フなるべし夫 よりこちらからも
なるこくふうとおもいいうなるべしそれよりこちらからも
是 ハ目を驚(ヲトロ)可し多る事 と返 答 春夫 より
これはめを おどろ かしたることとへんとうすそれより
黒 坊 二 人銀 能盆 の上 尓金 を焼 付し多る
くろんぼうふたりぎんのぼんのうえにきんをやきふしたる
コツプとフラスコと能せ傍 ラ尓立ツ其 コツプ
こっぷとふらすことのせかたわらにたつそのこっぷ
ニて酒 を呑ムアネイス。ウヱインと云 焼酎(セ ウチ ウ)也
にてさけをのむあねいす うえいんという しょうちゅう なり
是 ハウイキヨウニて造 ル酒 なり剛(ツヨイ)酒 故 ニ吾 ニ
これはういきょうにてつくるさけなり つよい さけゆえにわれに
(大意)
略
(補足)
「アネイス。ウヱインと云焼酎」、フランスではパスティス、アニゼット、ギリシャではウゾ、トルコではラクと呼ばれる酒のことか、食前酒。
カピタンの云う「ナント。リツパ。尓ケツコーカ」は「どうです、とても立派でよい部屋でしょう」と手振り身振りで部屋を指し示し、江漢一同はお世辞もあるでしょうけど、結構本気で驚きながら「どこを見ても驚いています」というような会話でしょうか。
「ウイキヨウ」、『ういきょう ―きやう【茴香】セリ科の多年草。南ヨーロッパ原産で,古く日本に入り栽培される。芳香があり,高さ1~2メートル。葉は複葉で小葉は糸状の裂片となる。六月ごろ,枝頂に黄色の小花を多数つけ,秋,円柱状の小果を結ぶ。乾燥した果実を健胃薬・香味料などにする。フェンネル。〔「茴香の花」は 夏〕』
少々長くなりますが、オランダはこの頃より危機に陥ります。このような状況です。
『18世紀末のフランス革命に始まる動乱の中でオランダも危機を迎え、1795年に連邦共和国は滅亡、新たに成立したバタヴィア共和国は東インド会社を経営不振を理由として廃止した。さらに1806年からは本国は実質的にフランスの支配を受けた。1808年8月にはフランスと敵対していたイギリスの軍艦がオランダの艦船を追って長崎に強制入港するというフェートン号事件が起きた。1811年からはバタヴィアをイギリスに占領され、オランダ国家とその植民地が消滅するという事態となった。しかし、長崎のオランダ商館は江戸幕府に対して、東インド会社の解散やオランダ国家の変動を知らせず、出島は当時世界で一ヶ所だけオランダの国旗を掲げ続けていた』。
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