2024年6月10日月曜日

莫切自根金生木 その5

P1P2 国文学研究資料館蔵

(読み)

P1

多゛ん奈の

だ んなの


於可をも

おかおも


このごろハ

このごろは


ひんそう

ひんそう


於奈り

おなり


奈され多

なされた


されバで

さればで


ござります

ござります


これでハ御いへ

これではおいえ


御すいびのもとい

ごすいびのもとい


於めで多う

おめでとう


ござります

ござります


すて

すて


られる

られる


可ミ

かみ


あ連バ

あれば


多すけ

たすけ


られ

られ



可ミ

かみ



あり

あり


可゛てへ

が てえ


P2

をん本゛ろ

おんぼ ろ


\/

おんぼろ


ひん本゛う

びんぼ う


奈り多や

なりたや


そ王可

そわか


於とゝい

おととい


こい\/

こいおとといこい

(大意)

「旦那のお顔も、この頃は貧相におなりになられた」

「さようでござります。これでお家はご衰微は確実、おめでとうござります」

「捨てられる神(大黒様)もあれば、助けられる神(貧乏神)もありがてえか」

「おんぼろおんぼろ、貧乏なりたや、そわか」

「おとといこい、おとといこい」

(補足)

 かすれているところもあって読みにくいがなんとか、適当です。

最初のセリフは妻、次は煙管をくわえている手代、その次は振り返っている手代、その次が主人である萬々、で最後が下女。まだ吹き出しがないときだったので、人物の上下左右近いところへセリフを書いています。

 下女がうちわで追い払っているのは大黒様(米俵が車輪のよう)。

「をん本゛ろ」、薬師如来のご真言「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」を引っ掛けたもの。

 なんのへんてつもない一場面ですが、登場人物五人はそれぞれ別の所作をして、大黒様もあたふたと逃げるところ、画面に動きを与えています。また部屋はさすが大金持ちだけあって凝った作り、縁側の左奥、庭に出るところなどなかなかであります。

 

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