2023年11月29日水曜日

人間一生胸算用 その9

P3P4 国立国会図書館蔵

P4

(読み)

ごぜへせ う今 可らぐ川と

ごぜえしょういまからぐっと


とび出しハ於もくろ山 の

とびだしはおもくろやまの


むらつ者゛め

むらつば め


柳  者し尓

やなぎばしに


さい王い

さいわい


や川

やつ


可れ

がれ


奈じ

なじ




舟 やど

ふなやど


もあれバ

もあれば


サア\/すぐいき

さあさあすぐいき


\/とせり多つ

いきとせりたつ


連バ善 多満しゐ

ればぜんたましい


イヤ\/ふ年も

いやいやふねも


へち

へち


まも

まも


いらぬと

いらぬと


ひとこゑ

ひとこえ


のりものこれへと

のりものこれへと


与へハ一ツへんのく毛於こり

よべばいっぺんのくもおこり


善 多満しゐと京  伝 を

ぜんたましいときょうでんを


のせどこへ行 可と思 つ多ら

のせどこへゆくかとおもったら


京  伝 可゛東  と奈りのうとく

きょうでんが ひがしとなりのうとく


なるあきんど無名(むめい)や

なるあきんど   むめい や


無(む)次郎 可゛家 尓来 り个れども

  む じろうが いえにきたりけれども


多れあつて志るもの奈し

だれあってしるものなし

(大意)

(「こりゃあ行くほうで)ございやしょう。今からぐっとくり出せば

おもくろ山の群燕。柳橋に幸いわたしの馴染みの舟宿もあるので、

さあさあすぐ行きましょう行きましょう」とせかせると、

善魂「いやいや舟もヘチマもいらぬ」と一声、

「のりものをこれへ」と呼ぶと、一片の雲が起こり、

善魂と京伝をのせ、どこへ行くかとおもったら、

京伝の東隣の裕福な商人無名屋無次郎の家に来たのだが、

誰にも知られることはなかった。

(補足)

「於もくろ山のむらつ者゛め」、面白いの意味の洒落。

「舟やど」、於やど?かとおもってよくみると「舟」でした。

「ひとこゑ」、「と」と「こ」のつながりがよくわかりません。

「へちまも」「のりもの」「く毛」、「も」のかたちがみなことなります。

 善魂は天狗の羽うちわならぬ軍配をもっています。

 

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