2023年11月23日木曜日

人間一生胸算用 その3

P1P2 国立国会図書館蔵

P1

(読み)

ある時 京  傳 うか\/と

あるとききょうでんうかうかと


艸庵(そうあん)を多ち出 いづく共

   そうあん をたちいでいずくとも


奈く行个る可゛思 ハ須゛善魂(ぜん多ましゐ)の

なくゆけるが おもはず    ぜんたましい の


かくれ可゛へ来 り人 間 の可ら多゛の

かくれが へきたりにんげんのからだ の


可う志やくをきく

こうしゃくをきく


〽それ人 間 のから多ハ天 地の小 サき

 それにんげんのからだはてんちのちいさき


やふ奈ものじやす奈者ち二 ツの

ようなものじゃすなわちふたつの


目ハ日 月 のごとく肉(尓く)ハ土 尓ひとしく

めはにちげつのごとく  にく はつちにひとしく


本年ハ岩 石 のごとく血(ち)は水 尓て

ほねはがんせきのごとく  ち はみずにて


脈(ミやく)ハ水 のさし引 尓飛としく

  みゃく はみずのさいひきにひとしく


毛(け)や爪(つめ)ハ艸 木尓天つくいきと

  け や  つめ はくさきにてつくいきと


飛る屁(へ)ハ風 のごとく奈ミ多゛と

ひる  へ はかぜのごとくなみだ と


小  へんハあめ尓飛としく

しょうべんはあめにひとしく

(大意)

 あるとき、京伝はウキウキして草庵からどこへともなく

出かけたところ、おもいもせず善魂の隠れ家を訪れ、

人間の体の講釈を聞くこととなった。

「そもそも人間の体は、天地創造の世界を小さなものにしたようなものじゃ。

すなわち、二つの目は日月のごとく、肉は土にひとしく、骨は岩石のごとく、

血は水にて、脈は水の干満にひとしく、毛や爪は草木にて、呼吸と屁は

風のごとく、涙と小便は雨にひとしく

(補足)

 講釈する善魂のからだは、腹が少々でて肉付きもよくいたって健康そう、作者の京伝のほうがほそくてちとみすぼらしい。

「共」のくずし字はよくでてきます。

「行」のくずし字は元字の名残が残っていて覚えやすいのですが、このくずし字はなんだっけと悩むこともおおいです。

「ごとく」、「ごと」が合字(二文字で一文字)になっています。

「水」のくずし字はとても特徴的で基本のくずし字。

 

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