P1 国立国会図書館蔵
(読み)
多ハけのい多り殊 ニ去 春 奈ぞハ世の中 に
たわけのいたりことにさくはるなぞはよのなかに
あしき飛やうきをうけ候 事 ふ可く
あしきひょうぎをうけそうろうことふかく
これらを者ぢ候 て当 年 よりけ川して
これらをはじそうろうてとうねんよりけっして
戯作 相 やめ可 申 と和多くし方 へもか多く
げさくあいやめべくもうすとわたくしかたへもかたく
ことハり申 候 へ共 さやう尓てハ御ひいきあつき
ことわりもうしそうらえどもさようにてはごひいきあつき
王多くし見世き う尓すいひニ相 成 候 事 由へぜひ\/
わたくしみせきゅうにうしひにあいなりそうろうことゆえぜひぜひ
(大意)
(そのようなことは)
愚の骨頂です。ことに昨年の春ごろには世間より
悪い評判をうけてしまいましたことを深く
身にしみ恥じ入りまして、今年より決して
筆はもうとらないとわたくしどもへもはっきりと
断ってきたのですが、そのようなことでは日頃よりあつくご贔屓くださっている
わたくしの店はすぐにかたむいてしまいますれば、どうかどうか
(補足)
「去春」、「春」のくずし字は変体仮名「春」(す)とはことなっています。
「世の中に」、平仮名「に」はあまり目にしません。ほとんどが変体仮名「尓」(に)かこの行にもあるように右下に小さくカタカナ「ニ」です。
「飛やうき」、評議。変体仮名「飛」(ひ)と「心」のくずし字がにていてよく間違えます。「や」が「ゆ」のような筆順で書かれているので間違えやすい。「ゆ」は変体仮名「由」で5行先の「相 成候事由へ」にでてきます。
「者ぢ候て」、読みを「はじそうろうて」としましたが、「候而者」(そうらいては)がありますので「はじそうらいて」かもしれません。
「け川して」、でこぼこしているので変体仮名「川」(つ)としました。
「和多くし方へも」、ここは変体仮名「和」ですが2行先の「王多くし見世」では変体仮名「王」。
「ことハり申候へ共」、「こと」が合字になっていて一文字です。このフォントはありませんが「より」の合字「ゟ」はありまして一文字です。「候へ共」は古文書によく出てくるのは候得共(そうらえども)です。
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