2023年6月14日水曜日

箱入娘面屋人魚 その13

P6P7 国立国会図書館蔵

P6

(読み)

扨 もうら志まとこいとの中

さてもうらしまとこいとのなか


志奈川 のせ川ちんよりこうじ

しながわのせっちんよりこうじ


町 の井戸よりもふ可く奈り

まちのいどよりもふかくなり


古ん尓こんをそめこミて

こんにこんをそめこみて


るりこんのこひぢと

るりこんのこいじと


奈り二尺  五寸 の

なりにしゃくごすんの


手ぬくひ

てぬぐい


地可ぶら尓や

じかぶらにゃ


奈らぬ王けと

ならぬわけと


奈りつい尓

なりついに


こいハミごもり

こいはみごもり


个れハうら嶋 も

ければうらしまも

(大意)

 さて、浦島と鯉との仲は、

品川の雪隠(せっちん)より、

麹町の井戸よりも深くなり、

紺に紺を染め込んで、瑠璃紺の恋路となり

二尺五寸の手ぬぐいを被らねばならなく訳

となったのでした。ついに鯉は身ごもり、

浦島も

(補足)

「志奈川のせ川ちん」、当時品川宿の街道のすぐ脇は海でした。便所はその海辺につきだして造られていて、その下の海まではかなり深かった。

「こうじ町の井戸」、麹町は高台に位置していて、井戸は深く掘らなければなりませんでした。

「こひぢ」、ここも瑠璃紺の「生地」に掛けています。

「二尺五寸の手ぬくひ地可ぶら尓や奈らぬ王け」、布地の寸法を測るのに使われていた鯨尺(くじらじゃく)で約37.879cm。現在でも鯨尺の物差しは販売されています。駆け落ちやこっそり姿を隠し逃げたりなどするときに頬被りする手ぬぐい。手ぬくひ地も「地」と韻をふんでいます。

 

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