P1 国立国会図書館蔵
(読み)
まじめ奈る口 上
まじめなるこうじょう
まつも川て王多くし見せの儀おの\/様 御ひゐきあつく
まずもってわたくしみせのぎおのおのさまごひいきあつく
日満し者んしやう仕 ありが多き仕 合 ぞんし奈り候
ひましはんじょうつかまつりありがたきしあわせぞんじなりそうろう
扨 作 者 京 傳 申 候 ハ多ゞ今 まで可りそめ尓
さてさくしゃきょうでんもうしそうろうはただいままでかりそめに
つ多奈き戯さく仕 り御らんニ入 候 へとも
つたなきげさくつかまつりごらんにいりそうらえども
可やうのむゑきの事 尓日 月 および
かようのむえきにことににちげつおよび
筆 紙 を徒いやし候 事 さりとハ
ふでかみをついやしそうろうことさりとは
(大意)
まじめな口上
まずはわたくしどもの店、皆様方の格別のご贔屓をたまわり
日増しに繁盛しておりますことありがたき幸せに存じ上げます。
さて、作者の京傳という人物はこれまでにどうでもよい
下手糞な戯作をみなさまに御覧に入れてまいりましたが
このような役に立たない事に時間と紙を費やしますこと、そのようなことは
(愚の骨頂です。)
(補足)
「奈る」、「る」は変体仮名「留」。変体仮名「可」「ら」「う」「り」などと間違えることが多く、みなそっくりです。
「まつも川て」、「つ」に濁点「゛」がありませんが、そのへんはいい加減であったりなかったり、次の文字についてしまっていたりと、いろいろ。変体仮名「川」はなんとなく「つ」の平らな部分が凸凹していて元の形が残っている感じ。そのカタカナ「ツ」はちゃんと三本縦棒があります。
「王多くし」、平仮名「く」は現在のものと同じ縦長のもの(この行の一番下)と、カタカナ「ム」のようなかたちのものがあって後者はよく読み違えます。
「御ひゐき」、「御」のくずし字はよく使われるので、たくさんの形があります。ここのはわかりやすい形。
「ありが多き」、平仮名「か」が使われるのは比較的少ないです。
「入候へとも」、「候」が「〃」のようになってます。もっと略して「丶」のときもあります。頻繁につかわれる文字ほど簡略化されます。
「筆紙を徒いやし」、変体仮名「徒」。ここの「筆」のくずし字は「竹」「ヤ」「免」のようにみえます。
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