P8P9 国立国会図書館蔵
P8
(読み)
これハこれ可の
これはこれかの
うらしまと
うらしまと
こいとの奈可尓
こいとのなかに
でき多る人 魚
できたるにんぎょ
此 沖 尓て人 と
このおきにてひとと
奈り者やとしも
なりはやとしも
十 七 八 尓天
じゅうしちはちにて
本んまの人 間
ほんまのにんげん
奈らいろざ可り
ならいろざかり
いぢ王るく可本ハ
いじわるくかおは
ろこう尓万 きく
ろこうにまんぎく
とじやく尓ぐ尓や
とじょくにぐにゃ
とミをべ尓おし
とみをべにおし
ろいでぬ多尓し多る
ろいでぬたにしたる
ごとく尓うつくし个れハ
ごとくにうつくしければ
(大意)
が、これはこれは、かの浦島と鯉との
あいだにできた人魚ではないか。
この沖で人となり、はや歳も十七八にて、
ほんとうの人間ならば、一番の娘盛り。
ちょと意地悪にいうと、顔は(歌舞伎の有名な女形の)路考(ろこう)・万菊(まんぎく)・杜若(とじゃく)・ぐにゃ富をあわせて、紅白粉で塗りたくったような美しさである。
(補足)
「人間」、「間」のくずし字は「門」が上にきて、「日」が下にとふたつに分かれます。
「ろこう尓万きくとじやく尓ぐ尓やとミ」、読めてもサッパリ?当時有名な若女形歌舞伎役者の名前でした。路考茶は着物の色として二代目瀬川菊之丞(ここの話に出てくるのは三代目)が着てその名を残しています。
「ぬ多尓し多るごとく」、料理の「ぬた」なんてことはないので、「塗りたくる」かと。「ごと」は合字。
舟に飛び込んだお鯉、じっと見るもやはり奇妙な人魚です。デンマークの人魚像をみたことがありますが、なんの違和感もありませんでした。腰から上はまったくの人間で、見ようによっては細長いスカートをはいた裸婦像とも言えます。しかし、お鯉は別物、魚姿九割五分であります。
平次の小舟はとても良くできていて立派です。お鯉は一番ステキな舟を見つけてそれに飛び込んだのかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿