2023年6月11日日曜日

箱入娘面屋人魚 その10

P4P5 国立国会図書館蔵

P5

(読み)

御そんし

ごぞんじ


のいろ

のいろ


男  あり

おとこあり


ゑよう

えよう


ハもち

はもち


の可ハ可の

のかわかの


うつくしひ

うつくしい


おとひめも

おとひめも


すこ者奈尓

すこはなに


つきこの

つきこの


ころハ

ころは


ひそ可

ひそか


尓この

にこの


中 すへ志のひ

なかすへしのび


き多り可の

きたりかの


志ごく

じごく


のうち尓て

のうちにて


うつくしき

うつくしき


と袮川 やの

とねがわやの


お鯉(り)のといふ

おり   のという  


本つとりものと

ぽっとりものと


あい本れ尓て

あいぼれにて


多可い尓志年志奈ふ

たがいにしねしなぬ


里やうられやう

りょうられよう


尓ら連やふと

にられようと


いふ中と

いうなか


奈る

なる

(大意)

御存じの色男がおりました。

栄燿(えよう)は餅の皮、かの美しい乙姫も

少し鼻につきだして、この頃は

ひそかにこの中洲へ忍んで来ていました。

例の地獄(素人売春婦)のなかに、

美しい利根川屋のお鯉のというぽっとり者(愛嬌があり色気もある女)と

相思相愛の互いに死ね死なぬ、料理されようが煮られようが

想いは変わらぬという中になりました。

(補足)

「栄燿(えよう)は餅の皮」、「栄燿」は贅沢をすること。ぜいたくになれて,餅の皮まで剝いて食べる。この上ないぜいたくのたとえ。

「うつくしひ」「うつくしき」、ここの「く」は、下半分が「ム」のように水平になっているのでわかりにくい。

「すこ者奈尓」、「こ」と「と」は区別しにくいです。「少」(すこ)。

「里やうられやう尓ら連やふと」、「尓ら連やふと」が煮られようとわかって、「里やうられやう」がわかりました。

 利根川(現在の江戸川)の鯉が当時名物であったので、利根川屋のお鯉のとしたとものの本にはありました。

 

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