P14P15 国立国会図書館蔵
P14
(読み)
ヲゝそれよ王れハいやしき
おおそれよわれはいやしき
人 魚 奈れどもおつとを思 ふ
にんぎょなれどもおっとをおもう
袮ん力 ハ奈ど可梅 可゛え尓
ねんりきはなどかうめが えに
おとるべき
おとるべき
それハ手おもひ三 百 両
それはておもいさんびゃくりょう
こつちハ王川゛可七 八 里やう
こっちはわず かしちはちりょう
多ゞもく里やうといひて可゛
ただもくりょうといいてが
ありそう奈ものおりふし
ありそうなものおりふし
て うづ者ちも奈个れバ
ちょうずばちもなければ
うを尓ゑんある
うおにえんある
め多゛可者゛ち尓て
めだ かば ちにて
ま尓
まに
あ王
あわ
(大意)
「あぁそうですよ、わたしは卑しき人魚ですが
夫をおもう念力はどうして梅が枝に劣ることがあるでしょうか。
あちらは手にも重い三百両、こっちはわずか七、八両。
ただでくれてやるという人がいそうなもの。
手水鉢がみあたらないので、ちょうど目の前にある
魚に縁あるめだか鉢で間に合わせましょう」
(補足)
「ヲゝ」、読めてしまえばなんでもないですけど、結構悩みます。
「奈ど可梅 可゛え尓」、わからないのでいろいろ調べました。「などか」は「反語の意を表す。どうして…であろうか。「―,翁の手におほし立てたらむものを,心に任せざらむ」〈竹取物語〉」が適当でしょうか。
「梅が枝(うめがえ)」は元文四年(1739)浄瑠璃『ひらかな盛衰記』初演の四段目に登場する傾城の名前。無間(むけん)の鐘(静岡県掛川市にあった無間山観泉寺の鐘)はこれを撞くと来世は無間地獄へ堕ちるが、現世では金持ちになれるという伝説。傾城梅が枝がその無間の鐘になぞらえて手水鉢をうつと、三百両の金がバラバラと降ってくる場面があった。
「多ゞもく里やうと」、「く」はここにあるような形もあれば「ム」のようなものもあって、くせものです。
縁側に落ちているのは小判。枕屏風にかけてある手ぬぐいの紋は梅が枝役をお家芸とした瀬川菊之丞のものとものの本にはありました。
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