P14P15 国立国会図書館蔵
P15
(読み)
せんと思 ひこん多゛る人 魚 の
せんとおもいこんだ るにんぎょの
一 袮ん王れを王すれ春で尓
いちねんわれをわすれすでに
飛しやくをお川とらんとせし可゛
ひしゃくをおっとらんとせしが
かんじんの手可゛奈个れバ大 き尓
かんじんのてが なければおおきに
ま可゛ぬけ志バし多めらふその
まが ぬけしばしためらうその
所 尓思 ひ可け奈きうしろ
ところにおもいがけなきうしろ
より多れ可ハ志ら須゛その
よりだれかはしらず その
手ハこゝ尓とひしやく
てはここにとひしゃく
もちそへふり上 しハ
もちそえふりあげしは
すさまじ
すさまじ
可り个るといふ
かりけるという
保ど尓こそ奈个れ
ほどにこそなけれ
む多゛らし可り个る
むだ らしかりける
志多゛
しだ
い奈り
いなり
め多゛可
めだ か
者ちの
ばちの
せき
せき
しやう
しょう
ふき
ふき
水 の
みずの
ミへ尓
みえに
奈る
なる
(大意)
と、思い込んだ人魚の一念、我を忘れて
まさに柄杓に手をのばしかけていたのだが、
肝心の手がないので、ひどく間が抜けて
しばらくためらっていたところ、
思いがけずにうしろより
誰かはわからないが、その手はここですよと
かわりに柄杓を持ちそえて振り上げてくれました。
これは、興ざめしてしまうということのほどもないけれど
ちょっと徒労におわってしまったような次第でありました。
めだかの鉢の石菖(水草)が(水曲芸の)吹き上げ水のように
見えていました。
(補足)
「すさまじ可り个るといふ保ど尓こそ奈个れむ多゛らし可り个る志多゛い奈り」という部分は、人魚が手水鉢のかわりにめだか鉢をたたこうとしたところへ、うしろから黒子があらわれて手のない人魚にかわって柄杓を持ちあげたたいてくれたという筋書きが、あまりいいおもいつきではなかったかなと作者が自嘲しているのでしょうか、う~ん・・・
座っている人魚はともかく、立っている人魚はこれまたちと怖い。ましてや髪振り分け・・・
しかし、その髪の毛の一本一本、また鱗模様の繰り返しとその数の多さ、尾鰭の細かさと彫師の手並みは見事です。
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