2023年4月30日日曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その10

 

P12P13 個人蔵

(読み)P12

So the devils consulted together and

agreeing that the lump on his face,

which was a token of wealth, was

what he valued most highly, demand-

ed that it should be taken. The old

man replied,

(大意)

そうして悪鬼たちはみんなで相談し次のようにしました。

老人の頬の瘤は富のしるしだが、老人がもっとも大事にしているものである。

それをとってしまうことを要求しよう。

老人は応えました。

(補足)

 爺さんは瘤をとられて、喜んでいるのか悲しんでいるのか茫然自失の表情です。こんなときでも貴重な斧は腰の後ろに帯紐にさしたままでした。

 ここの部分、わたしの記憶にある瘤取りジジイの噺にはなかった展開です。


2023年4月29日土曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その9

P10P11 個人蔵

(読み)P10

but for fear you might not

come you must give us a

pledge that you will".

(大意)

「だが恐ろしくておまえは来ぬかもしれぬから、おまえは

何か大事なものをここにおいていけ。」

(補足)

 もうすぐ夜明けなのか、明けの三日月が山の少し上に上がってきました。空のなんとも微妙な夜明け前の色がきれいですし、その表現力がたいしたものです。

 まだ飛行機のない時代、爺さんは両手を飛行機のように広げて焚き火の周りを動き回って踊っている様子が楽しそうです。悪鬼たちも身なりや見てくれはぎょっとしますが、かれらの目をひとりひとり確かめてみると驚き楽しんでいる表情になっています。爺さんほんとに楽しそう♪

 

2023年4月28日金曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その8

P8P9 個人蔵

(読み)P9

for it I will have a dance too", crept

out of the hollow tree, and with his

cap slipped over his nose and his

axe sticking in his belt began to

dance. The devils in great surprise

jumped up saying, "Who is this";

but the old man advancing and re-

ceeding, swaying to and fro, and

posturing this way and that way,

the whole crowd laughed and en-

joyed the fun, saying, "how well

the old man dances, you must al-

ways come and join us in our sport:

(大意)

「わしも踊るのだ。」木の洞(うろ)からはい出てくると、

かぶっていた帽子は鼻までずり落ち、腰紐に斧をさしたまま踊り始めました。

悪鬼たちは大いに驚き跳び上がって「こいつは何者だ」と言いましたが、

老人はかまわずに前に進んだり後ろに下がったり、フラフラとあちらこちらへ行ったり

勝手かまわず動き回りました。悪鬼どもたちは皆大笑いで楽しみました。

「おい老人、おまえの踊りはなんてうまいんだ、おまえはいつも来てくれ、一緒に

宴会を楽しもうじゃないか」と言うのでした。

(補足)

 この見開きに挿絵はなかった分、次の頁の挿絵はどんなものか楽しみです♪

 

2023年4月27日木曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その7

P8P9 個人蔵

(読み)P8

and began to drink wine and make

merry just like human beings. They

passed the winecup around so often

that many of them became very drunk.

One of the young devils got up and

began to sing a merry song and to

dance; so also many others; some

danced well, others badly. One said,

we have had uncommon fun to-night,

but I would like to see something

new". The old man losing all fear,

thought he would like to dance, and

saying "let come what will, if I die

(大意)

酒を飲み始め、人間たちのように陽気に騒ぐのでした。

彼らは酒を何度も回し飲みしたのでほとんどの悪鬼たちは

ひどく酔ってしまいました。若い悪鬼たちのひとりが立ち上がり

陽気な歌を歌い始めそして踊りだしました。まわりのたくさんの悪鬼たちも

上手に踊るものもいれば、不格好に踊るものもいました。ひとりの悪鬼が

「今夜は久しぶりに楽しかったけど、おれは何か新しいものを見てみたいぞ」と言いました。

老人は恐怖はすっかりなくなっていて、自分も踊りたいとおもっていました。そして

「死んだっていいから、したいようにするぞ」

(補足)

 挿絵のないページはやはりさみしいですね。活字がほんとに鮮明です。

 

2023年4月26日水曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その6

P6P7 個人蔵

(読み)P7

They kindled a fire,

so that it became as

light as day.They

sat own in two

cross rows,

(大意)

彼らは薪に火をつけたので、あたりは昼間のように明るくなりました。

そして二重に車座になって座り、

(補足)

 薪に照らされ空に向かって明かりがさすので悪鬼たちの表情が生き生きと下からの光でスポットライトをあび、なんとも入念な仕上げの顔になっています。日本は古くから妖怪天国でこれくらいの人数?だったらわけのないことでしょう。中央で踊っている悪鬼のスカートにも濃淡をつけていて生地が翻る感じがよくでています。

 

2023年4月25日火曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その5

P4P5 個人蔵

(読み)P4

crowd of strange looking beings. Some

were red aud dressed in green clothes;

others were black and dressed in red

clothes; some had only one eye;

others had no mouth: indeed it is

quite impossible to des-

cribe their varied

and strange

looks.

(大意)

奇妙ないでたちをした生き物の大群衆を(見たのでした。)

あるものは赤いからだに緑色の衣をまとい、他の者たちは

黒いからだに赤い衣をまとってました。そして何人かはひとつ目で

口がない者もおりました。風変わりで珍妙な彼らの容姿はとても

伝えきれるものでなかったのです。

(補足)

 闇夜にうかぶ文章が不気味ですが、背景のあやしい暗闇の濃淡と悪鬼たちの松明でぼんやりとみえる森の樹々がいっそう怖さを深めています。

 森や悪鬼たちの背景の濃淡やぼかしの表現がここでは不気味で怖いようなものになっていますが、いっぽうではさわやかなすぅ~と胸に入ってくるような表現もあります。摺師の技は奥が深いものだと感じ入ります。

 

2023年4月24日月曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その4

P2P3 個人蔵

(読み)P3

to cut wood, when the rain began to

pour and the wind to blow so very

hard, that finding it impossible to

return home, and filled with fear, he

took refuge in the hollow of an old

tree. While sitting there doubled up

and unable to sleep, he heard the con-

fused sound of many voices in the

distance gradually approaching to

where he was. He said to himself,

"how strange! I thought I was all

alone in the mountain but I hear the

voices of many people"; so taking cour-

rage he peeped out, and saw a great

(大意)

(老人は)木を伐かり(に山へ行きましたが)、雨が降り始め

風も強く吹きだしはじめました。帰り道がわからなくなって、

不安がつのり、老人は一本の古木の洞(うろ)に避難しました。

その中に体を二つに折って身をひそめ眠ることもできずにいると、なんだかみょうな大勢の

声が聞こえてきました。それらは少しずつ老人の方へと近づいてくるのでした。

老人はひとりつぶやきました。「なんてこった!山の中でひとりだとおもっていたのに、

大勢の声が聞こえるぞ」。勇気をふりしぼって洞からのぞいてみると、

(奇妙ないでたちをした生き物の大群衆を)見たのでした。

(補足)

 洞の中の老人の表情は雨風から避難できたためかホッとして柔和です。外は大雨ですがちりめん本だとその雨も本物の雨のような表情に見えます。「doubled up」今で言う体育座りですが、なるほど両膝を両手で抱え込み窮屈そう。古い大木とその洞は丁寧に描かれています。

 

2023年4月23日日曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その3

P1 個人蔵

(読み)

THE OLD MAN & THE DEVILS

A long time ago there was an

old man who had a big

lump on the right side of his face.

One day he went into the mountain

(大意)

老人と悪鬼たち

昔むかし、あるひとりの年よりがいました。老人は右の頬に大きな瘤がありました。

ある日のこと、老人は木を伐(か)りに山へ行きましたが、

(補足)

 切通のような山道を登ってゆく老人がとても小さく描かれています。話の出だしとしては鬱蒼とした森に入っていくような風景がよいようにおもわれますけど、岩場のようなところをこえると森がまっているのでしょうか。

 

2023年4月22日土曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その2

見返し 個人蔵

(読み)

版権所有

日本昔噺第七號

瘤取

明治十九年四月廿七日版権免許

六月一日出版

譯述者 ドクトルヘボン

發行者 東京市四谷區本村町丗八番地

    長谷川武次郎

Published by T.HASEGAYA, 38 Yotsuya Hommura, TOKYO.

(大意)

(補足)

 挿絵は斧と小枝の束。里山や家や村を囲む風よけの防風林は風が吹くと小枝が必ず落ちます。かまど時代の人々はそれらを拾って火付けのために使っていました。里山などはきれいになるし火付けにも使えて一挙両得であったわけです。火付けには小枝がなければなりませんでしたから、江戸時代小枝を束にして商っている人たちが大勢いました。江戸城に納入している業者は多摩川などで上流の村々から運ばれてきてました。

 斧の刃の部分の青さがよく切れそうな感じで光って見えます。

 ドクトルヘボンとあるのは、かのヘボン式ローマ字のヘボンです。オードリー・ヘップバーンという俳優さんがいますが、あのヘップバーンはHepburnで、明治時代の人たちはこれをヘボンと発音しました。実際、ヘボンのほうが発音としてヘップバーンよりよいように聞こえます。

 綴じ部分は残念ながら傷んで切れてしまっています。

 

2023年4月21日金曜日

THE OLD MAN & THE DEVILS その1

表紙 個人蔵

(読み)

JAPANESE FAIRY TALE SERIES, NO.7

THE OLD MAN & THE DEVILS.

(大意)

日本お伽噺集第七号

老人と悪鬼たち

(補足)

 「老人と悪鬼たち」は直訳そのものですが、お話は誰でも知っている「こぶとり爺さん」です。

 表紙の絵がいいですねぇ。夜中の森の雰囲気がひんやりした空気とともに伝わってきます。ウロに隠れる爺さんは恐怖のためか我を忘れてしまって微笑んでいるように見えます。そのウロのある大木をねんいりに描いていて上の方の葉っぱが表題にからんでるところなど、なんともにくい演出です。

 悪鬼たちの松明の火の濃淡がこれまたきれい。

 

2023年4月20日木曜日

The Wonderful Tea-Kettle その28

裏表紙 個人蔵

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

 すり鉢にすりこぎ棒に羽が生えて飛んでゆくところ。最初見たとき何のことかどんな意味があるのか全くわかりませんでしたが、「The Wonderful Tea-Kettle その13」で和尚さんの語りに出てきました。すり鉢とすりこ木のバカバカしい噺は聞いたことがあるけど、茶釜に4本脚が生えてあるき回ったなんて言うことは聞いたことがないという内容でした。どちらかというと、すり鉢の話のほうが奇抜におもえるんでけど・・・

 二箇所の綴じ、大和綴じというらしい、はほつれたり傷んでいるものが多いのですが、きれにバッテンじるしで綴じられたままに残っています。 


2023年4月19日水曜日

The Wonderful Tea-Kettle その27

P24P25 個人蔵

(読み)P25

it was laid up as a precious trea-

sure, and some say, even worshipped

as a saint

(大意)

茶釜は特別な宝物として安置され、神様として崇拝されたと

言い伝えられています。

(補足)

 文福茶釜の絵本は当時、巷にあふれていたでしょうが、どの絵本を原点としたのか気になるところです。実に忠実に翻訳されていることに感嘆しました。

 長谷川武次郎は最初は英語などの外国語の初学者のために出版したらしいのですが、そのうち来日した外国人向けのお土産として出版し評判をよんで、さらに外国の出版社と契約し海外販売したという経緯があります。なんか文福茶釜的であります。

 

2023年4月18日火曜日

The Wonderful Tea-Kettle その26

P24P25 個人蔵

(読み)P24

The fame of these performances

soon spread abroad, and the theatre

was filled daily to overflowing, until,

at length even the princes of the

land sent to order the tinker and

his kettle to come to them, and

the show would take place, to the

great delight of the princesses and

ladies of the court.

At last the tinker grew so rich

that he retired from business, and

wishing his faithful kettle also to

be at rest, he took it back, together

with a large share of his wealth,

to the Temple of Morinji, where

(大意)

 これらの演技の評判はたちまち国外へも広まり、劇場は毎日あふれんばかりの満員御礼でありました。そしてとうとう、その国の若君が屑屋にその茶釜を持ってくるようにと使いがやってくるまでになりました。すぐに上演され、皇女や宮廷の淑女はたいそうな喜びようでありました。

 やがて、その屑屋は大金持ちとなり興行から引退して彼の信頼できる茶釜も休めるようにと願ったのでした。彼は茂林寺へ茶釜を戻すとともに稼いだ富の多くを寄贈したのでした。そこに、

(補足)

 茶釜は紅白ならぬ紅青の座布団の上におさまりました。現在も茂林寺はこの茶釜が伝わるといいますから、気の向いたとき文福茶釜は夜な夜な境内を徘徊しているかもしれません。

 

2023年4月17日月曜日

The Wonderful Tea-Kettle その25

P22P23 個人蔵

(読み)P23

kinds of acrobatic

perform-ances, end-

ing by making a 

profound

bow to the

spectators, and begging for

their future patronage.

(大意)

(そして)あらゆる種類の曲芸を(演じたのでした。)

舞台の最後には観客に深々とお辞儀をして

彼らの家内安全商売繁盛を願ったのでありました。

(補足)

 屑屋さんは特注の茶釜紋の裃姿。左膝脇には拍子木、口にくわえているのは笛でしょうか、芸の合間に鳴らしたり吹いたりするのでしょう。観客の一人になってみたいものです。

 

2023年4月16日日曜日

The Wonderful Tea-Kettle その24

P22P23 個人蔵

(読み)P22

which named the

Bumbuku-Chagama.

The lucky tea-kettle

at once made the affair a success,

for not only did he walk about

on four legs, but he danced the

tight rope, and went through all

(大意)

『ぶんぶく茶釜』となうった芸を(興行し始めました。)

 幸運をもたらす茶釜はすぐに評判をとりました。4つの脚で歩き回るだけでなくピンとはった綱の上で踊って見せたりもしました。そして(あらゆる種類の曲芸を)演じたのでした。

(補足)

 これだけ満員の観客の表情を描いて、驚くのは観客だけでなくこの挿絵を見ている読者もなのですが、彼らの視線が皆たぬきの芸に集中していることです。横を向いて連れに話しかけているお客さんもいます。着物姿もいろいろあって、わたしの母方の祖父にそっくりなお客さんもいます。熱気と歓声が感じられます。

 

2023年4月15日土曜日

The Wonderful Tea-Kettle その23

P20P21 個人蔵

(読み)P21

"I certainly am a wonderful

and accomplished tea-kettle, and my

advice is that you take me round

the country as a show with accom-

paniments of singing and music."

The tinker thinking well

of this advice, at once start-

ed a show

(大意)

「ボクはね、不思議で年季の入った茶釜だということは保証するよ。それでさ

屑屋さんあなたがさ、ボクが歌や音楽の伴奏に合わせて芸を披露して国中を連れて回る

っていのはどうだい。屑屋はその申し出がとてもよいようにおもえて、すぐに

『ぶんぶく茶釜』となうった芸を興行し始めました。」

(補足)

幟の旗の色がきれいです。茶色とみかん色の幟には「文ふくさん」とあります。青色は「茶釜」の次が読めません。文章の背景の淡い青空もきれいです。

 

2023年4月14日金曜日

The Wonderful Tea-Kettle その22

P20P21 個人蔵

(読み)P20

"How can I please you, then?"

asked the tinker, "Shall I keep

you in a box?"

"Oh! no, no," answered the tea-

kettle, I like nice sweet things to

eat, and sometimes a little wine to

drink, just like yourself. Will you

keep me in your house and feed

me? And, as I would not be a

burden upon you, I will work for

you in any way you like."

To this the tinker agreed.

Next morning he provided a

good feast for Bumbuku, who then

spoke---

(大意)

「では、どうもてなしたらいいのですか?」屑屋は尋ね「箱の中に入れておいたらいいのですか」と聞きました。

「いやぁだめだめっ!」茶釜はこたえて、おいしい甘いものを食べたいし、たまにはお酒をちょっと飲んでみたいね、あなたが飲んでるようにね。あなたの家に置いて養ってくれないかなぁ?それに、あなたの負担にならないようにボクはあなたののぞむままになんでもして働くよ。

 屑屋はこの申し出を受け入れました。

翌朝、屑屋は(誰がそう呼んだか)『文福』にごちそうでもてなしました。

(補足)

 芝居小屋といいますが、まさしく竹竿などを格子状に組んでの小屋が描かれています。呼び込みの口上や太鼓三味線の音などでにぎやかなはず。

 

2023年4月13日木曜日

The Wonderful Tea-Kettle その21

P18P19 個人蔵

(読み)P19

bring good luck to anyone who

treats me well; but of course,I

don't like to be set on the fire,

and then beaten with sticks,as

happened to me up at the temple

yesterday."

(大意)

良くしてくれた人たちに幸運を運んでくるのさ、でもね火の上にかけられるのは嫌だよ。あっ、あと棒で叩かれるのもね。昨日お寺でされたことのようにね。」

(補足)

 やはり有明行灯が雰囲気をだしていい感じ。たぬきの目がわかりにくいですけど煙管をスパスパやりながら屑屋さんの目を見て語っている様子が愉快です。興味深そうに体を傾け聞き入っている屑屋さんの姿は恐れが消えてなんかしんみりとしています。

 

2023年4月12日水曜日

The Wonderful Tea-Kettle その20

P18P19 個人蔵

(読み)P18

But he was disturbed once more

by some one calling_ "Tinker! Tin-

ker! Get up! Get up!

 This time he sprang up, wide

awake, and lo and behold, there

was the tea-kettle with the head,

tail, feet and fur of a badger,

strutting up and down the room!

"Goblin Goblin!" shrieked the

tinker. But the tea-kettle langhed

and said.--

"Don't be frightened, my dear

Tinker. I am not a goblin, only

a wonderful tea-kettle. My name

is Bumbuku-Chagama, and I will

(大意)

 しかし、屑屋は何者かが「屑屋!屑屋〜!起きろ!起きろ〜!」と呼びかける声で

眠りを邪魔されたのでした。

 今度は彼は跳ね起きすっかり目覚め、な、なんと驚くべきことに、頭と尻尾と脚とたぬきの毛のついた茶釜があったのでした。茶釜は部屋の中を気取って歩き回っていました。

 「妖怪だ!妖怪だ!」屑屋は金切り声で叫びました。しかしその茶釜は笑って言ったのでした。

「驚かないでよ、ねぇ屑屋さん。ボクは妖怪じゃないよ、ただの不思議な茶釜さ。ボクは文福茶釜っていう名前だよ。それでね、ぼくは

(補足)

「and lo and behold」、わたしが中学生のときに英語小話集のシリーズ本(Happy Princeなど)があって、そのはなしのひとつの中にあったような記憶がありました。残念ながら意味までは思い出せませんでした。

 

2023年4月11日火曜日

The Wonderful Tea-Kettle その19

P16P17 個人蔵

(読み)P17

heard somebody moving in the room,

but when he opened his eyes and

looked about, he could see nobody.

"It was only a dream, I suppose,"

sald he to himself, as he turned

over, and went to sleep again

(大意)

誰かが部屋の中で動き回っている気配を感じたような気がしました。

しかし、彼は目を開けてまわりを見回してみましたが、誰もいませんでした。

「夢だったかもしれないな」ひとりごとをつぶやき、寝返りをうちながら

ふたたび眠りに落ちてしまいました。

(補足)

 有明行灯が目をひきます。明かりの濃淡が寝間の雰囲気を出しています。敷布団や掛け布団のちょっと使い込んだ感じもうまなぁとおもいます。箱枕が敷布団の上ではなく布団を外して外に置いてありますが、このように使っていたものなのか、それとも腹ばいになってまわりに誰かいるのを確かめるために布団からはずしたものなのか、さて・・・

 

2023年4月10日月曜日

The Wonderful Tea-Kettle その18

P16P17 個人蔵

(読み)P16

the tinker bought the tea-kettle for

a few coppers, and carried it home,

well pleased with his purchace.

Before going to bed he took

another look at it, and found it

still better than he had at first

thought, so he went to sleep that

night in the best

of spirits.

In the midst

of a pleasant

dream the tin-

ker suddenly

started up,

thinking he

(大意)

 屑屋は二束三文でその茶釜を買い取り、家へ持って帰りました。とても良い買い物をして満足でした。布団に入る前、屑屋は違う向きからそれをながめてみると、最初に見たときよりいっそうよく見え品物がよりよいことに気づきました。

 それから、屑屋はその晩はいつになく気持ちよく熟睡したのでした。心地よい夢見の真っ最中、屑屋は突然目を覚まし、

(補足)

 何度目かの茶釜が箱の上に鎮座している挿絵、紫の包風呂敷(袱紗)がきれいで、今回のこの挿絵で気づいたのですが、箱をしばる紐は、真田紐の縛り癖まで描き込んでいるようにみえます。

 狸の姿になっているのがかわいらしい。

 

2023年4月9日日曜日

The Wonderful Tea-Kettle その17

P14P15 個人蔵

(読み)P15

Then the old priest heartily re-

pented having bought the mischiev-

ous tea-kettle, and was debating in

his own mind how he should get

rid of it, when who should drop

in but the tinker!"

 "Here's the very man," thought

the priest.

A bargain

was soon

struck,

(大意)

 それから、老和尚はなやましい茶釜を買ってしまったことをつくずく後悔してました。どうしたらよいのかをあれやこれや思い悩みました。「そうだ、鋳掛屋の屑屋に引き取ってもらうしかない!ピッタリの男がいるじゃないか」和尚はそう考え、すぐに取引は成立して茶釜は引き取られました。

(補足)

 屑屋さんの茶釜を品定めする様子がなんともきまっています。また老和尚の「どうじゃろう」とその様子を遠目に眺める姿もほほえましい。ふたりの視線は茶釜に注がれています。

 

2023年4月8日土曜日

The Wonderful Tea-Kettle その16

P14P15 個人蔵

(読み)P14

"We'll soon find out whether

it's alive or not," and began beat-

ing it with might and main. There

was evidently no life in the thing,

and only a metalic clang! clang!

responded to his

lusty blows.

(大意)

「さぁもうすぐあれが生き物かどうかがわかりますよ」と叫び、力いっぱいにその茶釜を打ち叩き始めました。この中に生き物がいないことは確かなことで、弟子が茶釜を強く叩くと、カンカンと金属音しかしなかったのでした。

(補足)

 文章の内容の挿絵がないのが残念ですけど、屑屋さんに見てもらっている様子の挿絵がきれいです。月にすすきの間仕切り屏風が素敵です。こんなものは絵師はササッと描いて彫師摺師も満月の背景に濃淡入れ難なく仕上げてしまうのでしょう。やや使い古した屏風の感じに仕上がっているところがうまいなとおもいます。

 

2023年4月7日金曜日

The Wonderful Tea-Kettle その15

P12P13 個人蔵

(読み)P13

But when the novices rushed to his

help, the kettle at once resumed its

natural form; so, one of them, seiz

ing a stick cried.

(大意)

しかし、弟子たちが和尚を助けにかけつけたのと同時に、茶釜はもとのふつうの形に戻ってしまっていました。そうして弟子たちの一人が棒をつかみ取りながら、

(補足)

 たぬきは熱くて目をむいて叫び声をあげていますが、和尚さんも顔がしわくちゃになっても目だけはクワッとひらいてのけぞっているように見えます。

 和尚さんの着物の紐の締め方がねじりしめのようで格好いい。茶道具一式が散らばっていますがどれも一つ一つ丁寧に描いています。

 

2023年4月6日木曜日

The Wonderful Tea-Kettle その14

P12P13 個人蔵

(読み)P12

intending to make some tea. But, as

soon as the water bogan to boil-

"Hot! Hot!" cried the kettle, and

jumped off the fire.

 "Help! Help!" cried the priest

terrified out of his wits.

(大意)

 お茶を点てようと(お湯を沸かすために囲炉裏の上に茶釜をのせました。)

しかし、お湯が沸いたとたんに、「あちちあちち」と茶釜が叫んで囲炉裏をとび出しました。

 住持は「助けてくれ助けてくれ」とひどく驚いて叫び声をあげました。

(補足)

 沸騰したお湯が流れ出るそのむこうに透き通って尻尾や湯気と煙が立ち上がっています。うまいもんです。ちらりと赤い火も忘れていません。

 たぬきは口を苦しくて開け放ち、目をむいてます。髭も丁寧に描いています。

 

2023年4月5日水曜日

The Wonderful Tea-Kettle その13

P10P11 個人蔵

(読み)P11

rolling-pin that grew a pair of wings

and flew away, but, long as I have

lived, never have I heard before

of a tea-kettle walking about on

its own feet.You will never make

me believe that."

 But for all tbat, tbe priest was

a little uneasy in his mind, and

kept tbinking of the incident all

that day. When evening came, and

he was alone in his room, he took

down the kettle, filled

it with water, and

set it upon the

embers to boil,

(大意)

(わしは)すりこぎ棒の両側に羽が生えて飛び去ったという話(は聞いたことがあるが、)いやしかし、長いこと生きてきたが茶釜に脚が生えてその脚で歩きまわるなんていうことは聞いたこともない。年寄りをからかわないでくれ。」

 しかし弟子たちの様子を振り返ってみると、なにかひっかかることがあると住職は感じました。その日は一日中、その出来事について思いめぐらせたのでした。夕方になって自室に一人でいると、住職は茶釜を取り出し水を入れ、沸かすために残り火のある囲炉裏にのせました。 

(補足)

 茶釜が古びて見えるようにするのは摺師の仕事だと思います。うまいもんです。

 

2023年4月4日火曜日

The Wonderful Tea-Kettle その12

P10P11 個人蔵

(読み)P10

Only look master, your tea-kettle

has got feet and is running about."

"What! What! What! What's

that you say?" asked the priest

again. "The kettle got feet!

What's this! Let me see!"

 But by the time the old man

was thoroughly roused the tea-kettle

had turned into its ordinary shape,

and stood quietly on its box again.

 "What foolish young fellows you

are!" said the priest, "There stands

a kettle on the top of a box, surely

there is nothing very strange in

that. No, no, I have heard of the

(大意)

「和尚様、しっかり見て下さい。あなたの茶釜に脚がはえて暴れまわっているのですよ。

「なに!何!何だって!おまえは何を言っているんだ!」住持はまた聞き返しました。

「茶釜に脚がはえたって!なんてことだ!確かめさせてくれ!」

 しかしそのときまでには、和尚様はすっかり目覚め茶釜はいつもの形に戻ってしまっていて、いつもの箱の上に何事もなかったかのようにのっていました。

 「なんて愚かな弟子たちだ」「いつもの箱の上に茶釜はたしかにあるじゃないか、見た限りいつもとなんらの変化はない。いやいや、わしはすりこぎ棒の両側に羽が生えて飛び去ったという話は聞いたことがあるが、

(補足)

 頁の綴じ側になにか水分の含んだものをたらしてしまったのか、いたんだ跡があります。この絵本の前の持ち主がウトウトしながら読んだときにまさか・・・

 

2023年4月3日月曜日

The Wonderful Tea-Kettle その11

P8P9 個人蔵

(読み)P9

old man, drowsily rubbing his eyes

"what a noisy fellow!"

 "Anyone would be noisy when

such a strange thing as this is

going on.

(大意)

 老和尚は(言い)、ねむい目をこすりこすりしながら

「なんて騒がしい者どもたちだ!」とこぼしました。

「こんな変なことがおきているのに、静かになんて

だれがしていられるもんですか」

(補足)

 文机を囲う屏風の絵の色が以前の頁では淡黄色でしたが青に変わってしまいました。裏側の柄は前頁のふすまの柄に似ていますが、襖紙の柄は菊の花でしたが、こちらは絞り柄のような感じです。

 

2023年4月2日日曜日

The Wonderful Tea-Kettle その10

P8P9 個人蔵

(読み)P8

"It's a goblin! It's coming at us,

let us run away!"

The third novice was not so

easily frightened.

"Come, this is rather fun," said

he, "how the creature does jump,

to be sure! I will rouse the

master and let him see too."

So he went into

the room and shook

the priest, crying

"Wake! Master,

Wake! A strange

thing has happened."

"What's the matter?" said the

(大意)

「妖怪だ!こっちに向かってくるぞ、逃げろ!」

3人目の修行僧はそれほど驚いてはいませんでした。

「なんだ、かえって面白いじゃないか」と言いい

「この生き物はどうやって飛び上がるんだ、確かめなくちゃ!

おれは和尚様を起こすよ、和尚様にも見てもらわなくちゃ」

 そうして修行僧は和尚様の部屋へ入り、和尚様を揺さぶり、

大声で「目を覚ましてください和尚様、起きて下さい!

妙なことが起きているんです」と叫びました。

「どうしたのじゃ」と(老和尚は)言い

(補足)

 茶釜が箱の上にのっている挿絵はこれで3回目。間違い探し問題ではありませんがどこかに違いがあるのではとさがしてみると、箱の紐のほどけ方しかありませんでした。

 

2023年4月1日土曜日

The Wonderful Tea-Kettle その9

P6P7 個人蔵

(読み)P7

"What!" said the second novice,

"Do you mean to say that the

tea-kettle is turned

into a badger?

What nonsense!"

So saying, he

pushed his

companion

to one side and

peeped in, but he also was ter-

rified by what he saw and screamed,

(大意)

「なにっ!」二番目の修行僧が聞き返し「茶釜がたぬきになっているって言っているのか?そんな馬鹿なことがあるか!」そう言いながら、彼は仲間を片方へ押しやりのぞいてみると、彼もまた自分が見たものに恐れおののき、叫び声を上げていました。

(補足)

 床は淡い畳の色、ふすまはそのまま使えそうな襖紙、なんか妙に現実感があります。