P92 東京国立博物館蔵
(読み)
なり引 手真紅(シンク)能婦さお多巻 武春び誠 ニ堂
なりひきて しんく のふさおだまきむすびまことにどう
上 方 能おもむき別 なり爰 を出て二十 余町 行キ
じょうがたのおもむきべつなりここをでてにじゅうよちょうゆき
嵯峨の釈 迦十 九日 より開 帳 亦 七 八 町 過 て
さがのしゃかじゅうくにちよりかいちょうまたしちはちちょうすぎて
嵐 山 桜 松 の木陰 より咲(サキ)出テ前 ハ大 井河 の流 レ
あらしやまさくらまつのこかげより さき いでまえはおおいがわのながれ
此 比 ハ出張 の茶 屋アリ床(セウ)木(キ)を貸(カス)床 机(キ)の足
このころはでばりのちゃやあり しょう ぎ を かす しょう ぎ のあし
を流レ 尓ひ多し盃 を持テハ花 ひら飛 来て酒 尓
をながれにひたしさかずきをもてばはなびらとびきてさけに
いる向 フ山 の根ハ水 深 く笩 を丹 波の方 よりおろ春
いるむこうやまのねはみずふかくいかだをたんばのほうよりおろす
然 ル尓吾 等不案 内 ニして酒 肴 を先 ニて
しかるにわれらふあんないにしてしゅこうをさきにて
求 メんと思 ヒし尓茶 屋ニハ茶 能ミ尓して且 テ麁(ソ)
もとめんとおもいしにちゃやにはちゃのみにしてかって そ
菓もなし故 尓他 の酒 呑 楽 し武を見て爰 を
かもなしゆえにほかのさけのみたのしむをみてここを
(大意)
略
(補足)
「お多巻武春び」、『おだまき を―【苧環】① つむいだ麻糸を巻いて中空の玉にしたもの。おだま。』
「堂上方」、『どうじょう だうじやう【堂上】〔古くは「とうしょう」「どうしょう」とも〕① 昇殿を許された公卿・殿上人の総称。公家。堂上方。 ↔地下(じげ)』
「嵯峨の釈迦堂」、清凉寺 (嵯峨釈迦堂)、JR嵯峨嵐山駅からすぐ。
「大井河」、大堰川。
「床木」、床几。「床机」、床几。「笩」、筏もありますけど、どちらも読みは(いかだ)。
「麁(ソ)菓」、『そか ―くわ【粗菓】粗末な菓子。人に菓子を勧めたり,贈ったりするとき,謙遜していう語』。『そひん【粗品・麁品】① 粗悪な物。粗物。「御覧に足らぬ―なりとも御収納下され」〈近世紀聞•採菊〉』

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