P2後半 国立国会図書館蔵
(読み)
もひ、春ぐそのいへ耳い多り戸を多ゝけ盤゛うちよ
もい、すぐそのいえにいたりとをたたけば うちよ
里、どれたととふ、おほ可みハぬ可らぬ顔(可ほ)耳て、を者゛
り、どれたととう、おおかみはぬからぬ かお にて、おば
さん多゛よとこたふ、子山羊(こやき)ども盤そんなボーッ
さんだ よとこたう、 こやぎ どもはそんなぼーっ
といふ聲(こゑ)のをばさん盤私(王多くし)とものうち尓ハないよと
という こえ のおばさんは わたくし どものうちにはないよと
(大意)
(お)もい、すぐその家に向かいました。戸をたたくと、家の中から
誰だと問う。狼は抜け目ない顔つきで、叔母
さんだよと答えました。子山羊どもはそんなぼーっ
とした声の叔母さんはわたしたちの家にはいないよと
(補足)
「そのいへ耳」、「ぬ可らぬ顔耳て」、「に」はほとんどが変体仮名「尓」ですが、ここではめずらしく変体仮名「耳」(に)。「ぬ可らぬ」を確かめてみると辞書に「ぬからぬ顔」でありました。
抜け目のない顔つき。油断のない顔つき。
変体仮名「盤」(は)をつかっているのが目立ちます。
「どれたととふ」、「だれ」のまちがいかとおもったのですが、辞書をみると、『不定称の人代名詞。不特定の人をさす。だれ。』がありました。
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