2023年1月24日火曜日

西洋昔噺第一号八ツ山羊(長谷川武次郎) その6

P2後半 国立国会図書館蔵

(読み)

もひ、春ぐそのいへ耳い多り戸を多ゝけ盤゛うちよ

もい、すぐそのいえにいたりとをたたけば うちよ


里、どれたととふ、おほ可みハぬ可らぬ顔(可ほ)耳て、を者゛

り、どれたととう、おおかみはぬからぬ  かお にて、おば


さん多゛よとこたふ、子山羊(こやき)ども盤そんなボーッ

さんだ よとこたう、    こやぎ どもはそんなぼーっ


といふ聲(こゑ)のをばさん盤私(王多くし)とものうち尓ハないよと

という  こえ のおばさんは  わたくし どものうちにはないよと


(大意)

(お)もい、すぐその家に向かいました。戸をたたくと、家の中から

誰だと問う。狼は抜け目ない顔つきで、叔母

さんだよと答えました。子山羊どもはそんなぼーっ

とした声の叔母さんはわたしたちの家にはいないよと


(補足)

「そのいへ耳」、「ぬ可らぬ顔耳て」、「に」はほとんどが変体仮名「尓」ですが、ここではめずらしく変体仮名「耳」(に)。「ぬ可らぬ」を確かめてみると辞書に「ぬからぬ顔」でありました。

抜け目のない顔つき。油断のない顔つき。

変体仮名「盤」(は)をつかっているのが目立ちます。

「どれたととふ」、「だれ」のまちがいかとおもったのですが、辞書をみると、『不定称の人代名詞。不特定の人をさす。だれ。』がありました。

 

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