P2前半 国立国会図書館蔵
(読み)
ある日市街(まち)尓行(由)可んとして子どもらにむ可ひ、るす
あるひ まち に ゆ かんとしてこどもらにむかい、るす
のうち盤か多く戸をとぢて、たれ可゛きたるともかなら
のうちはかたくとをとじて、だらが きたるともかなら
須゛あく流ことな可れ、皆々(ミな\/)於と那しくる春せよ、みや
ず あくることなかれ、 みなみな おとなしくるすせよ、みや
げ尓は、旨(うま)き物(毛の)を多くさんかふてき天、あ多へんと
げには、 うま き もの をたくさんこうてきて、あたえんと、
袮んごろ尓いひ於ゐてい天゛ゆきぬ、
ねんごろにいいおいていで ゆきぬ、
(大意)
ある日街に出かけようとして子どもたちにむかって、
留守中はかたく戸を閉じて誰が来ようとも必ず
開けることはしないように、皆々おとなしく留守をしなさい。
みやげにはうまいものをたくさん買ってきてあげるからと、
よく言って聞かせて出かけてゆきました。
(補足)
以前に、木村文三郎の豆本シリーズをアップしました。その豆本は銅版で文章はこの絵本にあるような鉛筆やペンでくずし字を書いた筆刻の文章でした。筆刻の特徴は毛筆のように文字を続けて書くことが少なく、つながらないためにひと文字一文字がはっきりとわかることです。毛筆でつぶれてしまう文字も、筆刻ならばどのように書いているかがよくわかります。
よくわかるのですが、やはり変体仮名ですので、毛筆のくずし字を読んでいくのと同じ手順をふむことになります。この頁全体をパッとみると、すぐにでもスラスラ読めそうにおもいますが、読み始めるとつっかえつっかえになってしまって、変体仮名をあれこれ調べることになってしまいます。
現在では句点( 。)読点(、)の区別がありますが、この絵本では読点が両方の記号で使われています。教育的なことを意識したのだろうとおもいます。
「市街尓」、ここの変体仮名「尓」(に)のかたちは、英文小文字筆記体「y」と同じです。
「るすのうち盤」、この変体仮名「盤」(は)が悩みました。
「あく流こと」、変体仮名「流」(る)としましたが、間違っているかもしれません。
「る春」、変体仮名「春」は小さな「す」+「て」のようなかたちですが、二行目の変体仮名「盤」ににています。
「多くさん」、ここの変体仮名「多」は二行目「か多く」のものとはことなってもう少しゴチャゴチャしたかたち。
「かふてき天」、変体仮名「天」は平仮名「く」のてっぺんに飾りが付きます。次の行の「い天゛」も同じ。
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