2023年1月28日土曜日

西洋昔噺第一号八ツ山羊(長谷川武次郎) その10

P5 国立国会図書館蔵

(読み)羊ノ三

戸(と)の春きよ里みゆるあしといひ、者ゝによく尓多れ

  と のすきよりみゆるあしといい、ははによくにたれ


バう連しく於もひ、者ゝさ満お可へ里かと、戸(と)をあ

ばうれしくおもい、ははさまおかえりあと、  と をあ


久流やい奈や、狼   ハ志春まし多利ととび可ゝ里、可多者

くるやいなや、おおかみはしすましたりととびかかり、かたは


しよ里くらひころし个る、そのうち一 疋 の子ハ暖爐(ストーブ)

しよりくらいころしける、そのうちいっぴきのこは   すとーぶ


の蔭(可げ)耳かくれゐ多里し由ゑ、狼   ハ七 疋 をくらひつく

の  かげ にかくれいたりしゆえ、おおかみはしちひきをくらいつく


(大意)

戸の隙間より見える脚といい、母によく似ていたので

うれしくなって、母様お帰りかと戸を

開けるやいなや、狼はここぞとばかりとびかかって、つぎつぎと

食い殺してしまいました。しかしそのうち一疋はストーブ

の蔭にかくれていたので、狼は7匹を食い殺して


(補足)

 豆本にはなかった絵割です。わたしの住居の近所に山羊を飼育しているところがあって、子ヤギがたくさんいます。道路に面している柵のところで見ることができるのですけど、小さい体に小さなしっぽをせわしなくふってかわいらしい。一疋飼ってみたくなります。この絵の子ヤギたちは子犬のよう。

 変体仮名がたくさん用いられているし、その変体仮名の平仮名も混在していて、意外と読みにくい文章になっています。

「戸をあく流やい奈や」、変体仮名「流」が変体仮名「満」(ま)とにているとおもったのですが、1行前の「さ満」と比べてみると、見た感じがすでに異なっていました。変体仮名「奈」(な)が久しぶりに使われています。「く」はよく見るとてっぺんが「ゝ」のようになっていて変体仮名「久」としたほうがよかったようです。

「志春まし多利」、辞書には「しすます。為済ます」とあって、最後までうまくやる。まんまとやってのける、となっていました。

「可多者しよ里」、そのまま片っ端よりでもよいとおもいます。

 

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