P5 国立国会図書館蔵
(読み)羊ノ三
戸(と)の春きよ里みゆるあしといひ、者ゝによく尓多れ
と のすきよりみゆるあしといい、ははによくにたれ
バう連しく於もひ、者ゝさ満お可へ里かと、戸(と)をあ
ばうれしくおもい、ははさまおかえりあと、 と をあ
久流やい奈や、狼 ハ志春まし多利ととび可ゝ里、可多者
くるやいなや、おおかみはしすましたりととびかかり、かたは
しよ里くらひころし个る、そのうち一 疋 の子ハ暖爐(ストーブ)
しよりくらいころしける、そのうちいっぴきのこは すとーぶ
の蔭(可げ)耳かくれゐ多里し由ゑ、狼 ハ七 疋 をくらひつく
の かげ にかくれいたりしゆえ、おおかみはしちひきをくらいつく
(大意)
戸の隙間より見える脚といい、母によく似ていたので
うれしくなって、母様お帰りかと戸を
開けるやいなや、狼はここぞとばかりとびかかって、つぎつぎと
食い殺してしまいました。しかしそのうち一疋はストーブ
の蔭にかくれていたので、狼は7匹を食い殺して
(補足)
豆本にはなかった絵割です。わたしの住居の近所に山羊を飼育しているところがあって、子ヤギがたくさんいます。道路に面している柵のところで見ることができるのですけど、小さい体に小さなしっぽをせわしなくふってかわいらしい。一疋飼ってみたくなります。この絵の子ヤギたちは子犬のよう。
変体仮名がたくさん用いられているし、その変体仮名の平仮名も混在していて、意外と読みにくい文章になっています。
「戸をあく流やい奈や」、変体仮名「流」が変体仮名「満」(ま)とにているとおもったのですが、1行前の「さ満」と比べてみると、見た感じがすでに異なっていました。変体仮名「奈」(な)が久しぶりに使われています。「く」はよく見るとてっぺんが「ゝ」のようになっていて変体仮名「久」としたほうがよかったようです。
「志春まし多利」、辞書には「しすます。為済ます」とあって、最後までうまくやる。まんまとやってのける、となっていました。
「可多者しよ里」、そのまま片っ端よりでもよいとおもいます。
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