2021年4月8日木曜日

豆本 開化地獄論前編 その11

P10P11

(読み)

奈ん里本ど者奈れておりますと

なんりほどはなれておりますと


いへバ可多ハら尓い多る三 途の者゛ゞア可゛

いえばかたわらにいたるさんずのば ばあが


「それハおろ可ものゝいふ

「それはおろかもののいう


こと奈りか奈らず

ことなりかならず


ある尓ち可い奈しこゝより

あるにちがいなしここより


十  万 おくど者奈れて

じゅうまんおくどはなれて


極  東 のと奈りの

きょくとうのとなりの


く尓奈り

くになり


「それでも

「それでも


世界 尓ハ

せかいには


五大

ごだい


州  より▲

しゅうより


(大意)

何里ほど離れておりますと言うと

そばに居座る三途のババアが

「それは愚かも者の言うことであるぞ。

必ずあるに違いないのだ。

ここより非常に遠く離れた極東の

隣にある国である」

「それでも世界には五大州より


(補足)

変体仮名「本」(ほ)もしつこく使われ続けたひとつです。変体仮名「奈」(な)もそうですけど、これは形が「な」にもともと近い。

「おろ可もの」、「ろ」と変体仮名「可」はほとんど同じ形です。

「か奈らず」、平仮名「か」も使われてきはじめています。

「十万億土」、今ではすっかり死語になりました。もともとは極楽浄土のこと。転じて非常にの意。

「それでも」、ここの「も」と3行目の「も」の形と筆順が異なっています。

「州」のくずし字はいろいろあります。

三途のババアは長煙管を振り回して、子どもに反論中。閻魔大王は小僧言いたいことを言ってみろと余裕の笑顔、くっくっくっと押し殺した笑い声が聞こえてきそう。「王」様ワッペンが復活してる。

 

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