2025年2月18日火曜日

江漢西遊日記二 その49

P59 東京国立博物館蔵

(読み)

て龍  吐水 ニて庭 尓水 をかけさて其 比 中

てりゅうどすいにてにわにみすをかけさてそのころちゅう


年 能婦人 是 ハ京  大 火事ニて此 所  ヘ奉

ねんのふじんこれはきょうおおかじにてこのところへほう


公 ニ来 りし者 也 相 應 尓暮 し多る者 尓や之(コレ)

こうにきたりしものなりそうおうにくらしたるものにや  これ


尓琴 を弾(ヒカ)せ个り亦タ吾 所 持し多る地球  ノ

にことを  ひか せけりまたわれしょじしたるちきゅうの


圖を取 出し来 ル人 々 尓講 訳  して見セ个るニ

ずをとりだしきたるひとびとにこうしゃくしてみせけるに


歳 比 三 十  六 七 位  能婦人 か多和ら尓居て

としごろさんじゅうろくしちくらいのふじんかたわらにいて


話 シを聞 し尓や可゛て近 くへより只(タゝ)今 御咄  ヲ

はなしをききしにやが てちかくへより  ただ いまおはなしを


承    ル尓天 竺 お釈 迦さ満能おいでなさる

うけたまわるにてんじくおしゃかさまのおいでなさる


所  も承(セ ウチ)ちい多しまし多可゛極 楽 と云 処  ハ何(イツ)

ところも  しょうち ちいたしましたが ごくらくというところは  いず


く尓こざりま春私   ハどふそ活(イキ)て極 楽 へ

くにござりますわたくしはどうぞ  いき てごくらくへ

(大意)

(補足)

「水」のくずし字は読めるようになりましたが、その形は形を持たぬように筆の流れにまかせたよう。その上の「龍吐水」では「水」は楷書。

「京大火事」、天明8年1月30日(1788年3月7日)に京都で発生した史上最大規模の火災。御所・二条城・京都所司代などの要所を軒並み焼失したほか、当時の京都市街の8割以上が灰燼に帰した。被害は京都を焼け野原にした応仁の乱の戦火による焼亡をさらに上回るものとなり、その後の京都の経済にも深刻な打撃を与えた。

「地球ノ圖」、この画像は江漢が各地で見せていたものではなく、江漢が作成した銅版画です。 

「講訳」、講釈。

 この場面、御婦人と江漢さんの会話は何度よんでもグッとくるところで、江漢さん独特の優しさあふれる受け答えに、そして御婦人の対応に目頭があつくなります。

 

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