P57 東京国立博物館蔵
(読み)
ニて之 ハ画も好キな人 故 夫 より色\/
にてこれはえもすきなひとゆえそれよりいろいろ
所 持の物 を取 出し能そき目か年を
しょじのものをとりだしのぞきめがねを
皆 〃 見 物 して感 心 春ぢ〃様 も甚 タ
みなみなけんぶつしてかんしんすじじさまもはなはだ
よろこび者〃様 も出て話 春夫 より
よろこびばばさまもでてはなしすそれより
膳 を出春茶 碗 も里焼 物 坪(ツホ)ひら
ぜんをだすちゃわんもりやきもの つぼ ひら
皆 料 理手き王なる事 也 爰 ハ湖水
みなりょうりてぎわなることなりここはこすい
へ毛遠 く魚 一 向 尓得か多し夜 ニ入 休
へもとおくさかないっこうにえがたしよるにいりやす
ミ希る尓夜具ハどん春也 蚊屋ハモヱギ
みけるにやぐはどんすなりかやはもえぎ
能紗(シヤ)なり遍里ハ緋ぢりめんなりき
の しゃ なりへりはひちりめんなりき
十 日朝 曇 ル後 天 氣此 日野ハ山 中 故 可
とおかあさくもるのちてんきこのひのはさんちゅうゆえか
(大意)
略
(補足)
「焼物」、鯛の尾頭付きの塩焼きが正式。箸をつけずに持ち帰るのが通例。「坪」、煮汁の少ない小煮物。蒸してあんをかけるような料理。「ひら」、鳥・肉・野菜などのうま煮などを3品または5品盛り合わせる。平皿・平椀ともいう。本膳料理というらしい。
料理もさることながら、寝具もとびきり上等な最高のもの。
「湖水」、琵琶湖。
「十日」、天明8年八月十日。1788年9月9日。現在の9月上旬で標高もある山の中でも、蚊帳は必要だったみたいで、「モヱギ能紗(シヤ)なり」とあって豪華。
文化八(1811)年の江漢の随想集『春波楼筆記』は、自筆本・書写本はなく、現存するのは明治24年の翻刻された本ということで、中井家に関するところだけそこから抜き出しました。
道中、掘っ立て小屋の蚤虱が飛び跳ねて眠れぬような宿にとまることもあれば、大富豪の申し分なく、きっと江漢さんも経験したことのないような豪華なところもあって、これも旅の醍醐味。
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