P.1 5行目〜8行目まで。「飯能市立博物館所蔵」「平沼家文書」
(読み)
噺し承候処、只 今 正 覚 寺旦 中 之者 飯 能
ただいましょうがくじだんちゅうのものはんのう
穀 屋共 江米 穀 直下ケ無心 二参 り候 風 聞 二
こくやどもへべいこくねさげむしんにまいりそうろうふうぶんに
御座候、 只 今 御出 差 留 被下 候 趣、 小殿 江も
ござそうろう ただいまおいでさしとめくだされそうろうおもむき こどのへも
其 趣 申 参 り、是 ゟ 太次郎 殿 江も申 通 参 候
そのおもむきもうしまいり、これよりたじろうどのへももうしとうしまいりそうろう
(大意)
たった今、正覚寺檀信徒の者が飯能の
穀物屋へ米穀値下げの要求をしているとのうわさを知らせてくれた。
(啓蔵殿が)たった今こちらに立ち寄り連絡して下さり、小殿へも
同じように伝えてきて、これから太次郎殿へも知らせに行くところであった。
(補足)
「飯能」、「能」が「触」にみえますが、よく見れば「能」のようです。この後頻出です。
「穀屋共」、「屋」のくずし字は右側の「、」が特徴。「共」は頻出です。字体はいくつかあるが使われ方は、ここのようにかたちがほとんど。
「江」、この4行の中にも3箇所でてきてます。やや左側に小さく書かれます。
「直下ケ」(ねさげ)、「直」=「値」。くずし字は「ホ」+「一」のような形で頻出。「置」の「直」の部分も同じ形になっている。
「無心」、「心」はわかりやすいが「無」が最初は??。しかしよく出てくるので覚えやすい。
「参」、くずし字は「彡」の部分が「ホ」or「木」のようになる。
「風聞」、「聞」のくずし字が元の字の片鱗がない。しかし「門」の仲間の字はみなこのようにくずす。「門」を冠のように上部のもってきて、中の「耳」を脚のように下部にもってきます。
「耳」のくずし字は「夕」と「メ」を重ねたような形。
「御座候」、この3文字まとめて覚える。源左衛門の「御座候」は大変にわかりやすい形ですが
くずし字の種類はとても多いです。
「差留」、「差」は頻出でくずし字もたくさんありわかりにくいが、ここの字体は楷書に近い。
「留」、頻出。「田」の中が「十」ではなく「メ」。
「被下」、(くだされ)。古文書では頻出で、ごくあたりまえに使われる表現。下から返って読む例はたくさんある。当時の人は下から返って読むなんて意識してなかったはずです。現代でも
「為替」(かわせ)などは新聞に載らない日はないくらいですが、下から返って読むなんて意識しないで読み書きしています。
「趣」、「走」+「取」。「走」(そうにゅう)のほうは?ですが、「取」のくずし字はここの形が典型で、これを頼りに読み取ります。
正覚寺、ネットで調べられます。現在でも当時のままのようです。
小殿は吉田伴次郎、新組組頭(しんぐみくみがしら)。
太次郎は新組名主。
埼玉県飯能市上名栗村の出来事ですが、もう少し読み進めてから、
ここに記されている地名がのっている地図を掲載する予定です。
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