2022年9月30日金曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その12

P8 国立国会図書館蔵

(読み)

「奈ん

 なん


でも

でも


とう

とう


可゛らし

が らし


可゛多ん

が たん


との

との


本う可゛

ほうが


きゝ可゛

ききが


いゝと

いいと


サ

さ


(大意)

「なんでも、唐辛子が

たくさんのほうが

ききがよいとさ」


(補足)

 P5ではすすきに満月の屏風の左側にポンポコたぬきが描かれていましたが、この頁では実物がやけどの背中に唐辛子入り味噌を塗られるという図です。うさぎが手にするすりこぎ棒といい、すり鉢といい本物と見まがうできばえです。おちょこのようなものもありますが薄めるための水でもはいっていたのでしょうか、なかなか細かい。うさぎの着物は縦縞をほどこし、たぬきのは網代柄のような細かい線で刻まれています。

 背景は次頁の内容の絵。うさぎが自分の木の船を造船しているところです。うさぎの左手に持っているものは大工道具のひとつである手斧(ちょうな)と呼ばれるのものです。「釿」(金へんに斤)ともかきます。粗削りで材木の形を整えていきます。仕上げには槍鉋(やりがんな)などを用います。豆本にも描かれるぐらいですから当時でも大工現場では当たり前に使われていた道具のひとつだったのかもしれません。

 束ねて立て掛けてある表面に文字が書かれていますが、読めません。

 

2022年9月29日木曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その11

P7 国立国会図書館蔵


P7拡大

(読み)

うちかやへもへ

うちかやへもへ


うつりそうしん

うつりそうしん


やけ多ゞれ大

やけただれおお


やけどゝ奈り

やけどとなり


多り个り

たりけり


(大意)

(と言う)うちに、茅へ燃え

うつり全身

焼けただれ

大やけどと

なってしまいました。


(補足)

 ぼやけることもなくくっきり文字で問題なく読むことができます。

前頁うさぎの腰についていたものと同じものがたぬきの腰にも見えました。やはり斧でありました。斧を拡大してみると、丁寧な仕事をしています。刃の部分からミネの部分の鉄の濃淡がきれいです。

またわらじの裏の部分も拡大して見るに藁を編んだように横に編み込みの筋が入っています。

左下の民家と立木がたぬきのアチチぶりの表現に比べるとやや稚拙なところが笑えます。

 

2022年9月28日水曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その10

P6後半 国立国会図書館蔵

P6拡大

(読み)

を可り尓由く

をかりにゆく


べしとさそひ

べしとさそい


多゛し多ぬ起尓

だ したぬきに


可やをせおハせ

かやをせおわせ


あと可ら可ち

あとからかち


\/とひをうて

かちとひをうて


バい満のおとハ

ばいまのおとは


奈んじやかち\/

なんじゃかちかち


山 じやといふ

やまじゃという


(大意)

(茅を)刈にゆこうとさそって出かけました。

たぬきに茅を背負わせて、うしろから

カチカチと火をうつと

「今の音はなんじゃ」

「カチカチ山じゃ」という(うちに)


(補足)

「さそひ」、「誘い」ですが、なかなか読めませんでした。

うさぎの腰うらに見えるのは斧みたいですが、茅を斧で刈るわけないし、さてなんでしょうか。

 

2022年9月27日火曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その9

 

P6前半 国立国会図書館蔵

P6拡大

(読み)

ゐ多るところ

いたるところ


へうさ起゛可゛き

へうさぎ が き


多りぢいさん\/

たりじいさんじいさん


そのやう尓奈

そのようにな


げ起多るやふ奈

げきたるような


可多起をうち

かたきをうち


て志んぜんと

てしんぜんと


多ぬきのゐ

たぬきのい


る山 へ由きて

るやまへゆきて


いつしよ尓可や

いっしょにかや



(大意)

(嘆いて)いるところへ

うさぎがやってきました。

「じいさんじいさん

それほどの嘆きの

かたきを討って

しんぜよう。

たぬきのいる

山へ行って

いっしょに茅(かや)」


(補足)

3行目行末「く」のようにえるのは小さい繰り返し記号と解釈しました。

5行目「(奈)げ起多るやふ奈」、ずいぶんニラメッコしましたが、「多」の次からがよくわかりません。

「いつしよ尓可や」、「可や」は「茅」です。「いっしょ」だとおもうのですが、う〜ん・・・

 うさぎの腰手ぬぐいの文字は「火之用」(心)でしょうか。両手の部分がぼやけてしまっていますが、火打ち石を打ち付けています。


2022年9月26日月曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その8

P4 国立国会図書館蔵

P5後半

P5拡大

(読み)

奈してぢゝい尓くハせ多ちま

なしてじじいにくわせたちま


ちもとの多ぬきと奈り者゛ゝア

ちもとのたぬきとなりば ばあ


くつ多ぢゝいヤイ奈可゛しの志多

くったじじいやいなが しのした


の本年をミろといひ奈可゛ら山

のほねをみろといいなが らやま


へ尓げ由起多りぢゝいハ奈げ起X

へにげゆきたりじじいはなげき


(大意)

(食事の支度を)して、ジジイに食べさせ

るとたちまちたぬきとなって

「ババアをくったジジイやい、流しの下の

骨を見ろ」といいながら、山へ

逃げて行きました。ジジイは嘆き


(補足)

「ぢゝい尓くハせ」「者゛ゝアくつ多ぢゝいヤイ」、「く」の次に筆が流れているので読みづらい。「くつ多」もしばらくわかりませんでした。「ヤイ」は語尾につけて、からかうような馬鹿にするような感じをにおわせますが、カタカナ「ヤイ」をみるのは初めてなような気がします。

 ポンポコたぬきが屏風に見事です。そのすぐうしろの縁側で、顔に手ぬぐいを押し当て嘆き悲しんでいるのはもちろん爺さんです。屏風の手前ではまさにババア汁をおいしそうに食べている爺さん。屏風の一枚向こうでは、それを知って嘆いている爺さん。天国と地獄です。

 うさぎが山へ逃げてゆくたぬきを見て、なにか決心している感じです。


 

2022年9月25日日曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その7

P4 国立国会図書館蔵

P5前半

P5拡大

(読み)

かくとも志ら春゛ぢゝいハや満

かくともしらず じじいはやま


より多起ゞをせおひ可へりき

よりたきぎをせおいかえりき


多連バ多ぬきの者゛ゝアハ??

たればたぬきのば ばあは


ぢいさんく多び連多であらう

じいさんくたびれたであろう


あさい者つしやつ多たぬき

あさいわっしゃったたぬき


志゛るをこしらへ多りとぜん多゛て

じ るをこしらえたりとぜんだ て


(大意)

そうともしらず、ジジイは山

より薪(たきぎ)を背負い帰ってきました。

たぬきのババアは

「さあさあじいさんくたびれたことでしょう。

朝、言ってらっしゃったたぬき汁

をこしらえましたよ」と

食事の支度を


(補足)

 1ページ前はあれほどボケて不鮮明だった文章も、この頁ではなんともありません。

何が原因なのでしょう?

「や満」、「や」が現在の「ゆ」にみえますが、「や」です。「ゆ」はたいてい変体仮名「由」を使います。

3行目の行末「者゛ゝアハ」の次がよくわかりません。呼びかけの「ヤウ\/」のように読めますがよくわかりません。

「い者つしやつ多」、そのまま「いはつしやつた」と読むと、さて?と考えてしまいます。

 P4はババア汁ジジイに食わせるの絵。爺さん婆さんの顔の描き方が何度も言ってしまいますがこの作者独特の表現であります。

婆さんの姿のどこかにたぬきの片鱗が描かれてないかを拡大して調べましたがなさそうです。

後ろのついたてにはすすきに満月、P5に目をやるとぽんぽこたぬきが描かれてました。

 

2022年9月24日土曜日

かち\/山咄し(木村文三郎) その6

P2 国立国会図書館蔵

P3後半

P3拡大

(読み)

ころしおの連ハ者゛ゝアの春可゛多尓

ころしおのれはば ばあのすが たに


者゛けてし可゛ひを志るの奈可へい連て

ば けてしが いをしるのなかへいれて


者゛ゝア志るをこしらへ本年ハ奈可゛しの

ば ばあしるをこしらへほねはなが しの


志多へ可くしぢゝいの可へりをまちゐ多り

したへかくしじじいのかえりをまちいたり


(大意)

(打ち)殺して、自分はババアの姿に

ばけ、死骸を汁の中へ入れて

ババア汁をこしらえました。骨は流しの

下へ隠し、ジジイの帰りを待っていました。


(補足)

 薄汚れた透明な下敷きを透かして読んでいるようで、なかなか厄介です。ちょっと前でしたら読めなかったことは確実で、まぁここまで読めるようになったことは日頃の成果であります。

おじいさんの顔を拡大してみると、やはりこの絵師独特の描き方で、いわゆる好々爺ふうなものではありません。