2024年11月8日金曜日

時代世話二挺鼓 その24

P16P17 国立国会図書館蔵

P17

(読み)

ひてさとハうちもの王ざ

ひでさとはうちものわざ


尓て可奈ふましと日ころ

にてかなうまじとひごろ


袮んするあさくさのく王ん

ねんずるあさくさのか ん


せ於んを袮んし个れハふしきや

ぜおんをねんじければふしぎや


うんち う尓く王ん於んあらハれ給 ひ千

うんちゅうにか んのんあらわれたまいせん


のやさきをそろへてい可け給 ふ

のやさきをそろえていかけたもう


く王ん於んさ満もすゞ可山 この可多

か んおんさまもすずかやまこのかた


久 しくやを者奈ち給 ハぬ由へ

ひさしくやをはなちたまわぬゆえ


千 のやさき九  十  三 すし

せんのやさききゅうじゅうさんすじ


まて者つ連し可のこりの

まではずれしがのこりの


七 すし

ななすじ


七 人 の

ななにんの


まさ可ど可

まさかどが


こめ

こめ


可ミ尓

かみに


あ多る

あたる


とゝん

ととん


可川ちりと

かっちりと


いふ於と可

いうおとが


せぬ可ら者り合 可゛

せぬからはりあいが


ない

ない

(大意)

秀郷は打物業ではかなわないと、日頃信心する浅草の観世音を念ずると、不思議なことに雲中に観音あらわされ、千の矢先をそろえてお射掛けなされた。

 観音様も鈴鹿山以来久しく矢を放たれなかったため、千の矢先のうち九十三(本当は九百九十三)筋までがはずれたが、残りの七筋が七人の将門のこめかみ(将門の急所)に命中した。

観音様「どどん、かっちり、という音がしないから、張り合いがない」

(補足)

「うちもの王ざ尓て可奈ふまし」、謡曲「船弁慶」の「弁慶中を押し隔て、打物業(わざ)にて叶うまじと、珠数さらさらと押しもんで」のもじり。

「うちもの王ざ」、『うちものわざ【打ち物業】刀や槍を持って戦うこと。また,その技術』

「千のやさき」、謡曲「田村(能の一。二番目物。世阿弥作か。旅の僧が清水寺で坂上田村麻呂の霊にあい,その東夷征伐の戦いのさまを見る)」の「一たび放せば千の矢先」をきかせている、とありました。

「すゞ可山」、坂上田村麻呂は伊勢鈴鹿山の悪魔を退治した。

「とゝん可川ちり」、盛り場にある土弓(どきゅう)は、矢が的に当たると「カチリ」、はずれると的の外側に張った皮にあたって「ドドン」と鳴る。

 秀郷の装束の腰回りのヒラヒラ部分は草摺(くさずり)というそうです。細かく描いています。

 秀郷の背後には松の木があります。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿