P16P17 国立国会図書館蔵
P17
(読み)
ひてさとハうちもの王ざ
ひでさとはうちものわざ
尓て可奈ふましと日ころ
にてかなうまじとひごろ
袮んするあさくさのく王ん
ねんずるあさくさのか ん
せ於んを袮んし个れハふしきや
ぜおんをねんじければふしぎや
うんち う尓く王ん於んあらハれ給 ひ千
うんちゅうにか んのんあらわれたまいせん
のやさきをそろへてい可け給 ふ
のやさきをそろえていかけたもう
く王ん於んさ満もすゞ可山 この可多
か んおんさまもすずかやまこのかた
久 しくやを者奈ち給 ハぬ由へ
ひさしくやをはなちたまわぬゆえ
千 のやさき九 十 三 すし
せんのやさききゅうじゅうさんすじ
まて者つ連し可のこりの
まではずれしがのこりの
七 すし
ななすじ
七 人 の
ななにんの
まさ可ど可
まさかどが
こめ
こめ
可ミ尓
かみに
あ多る
あたる
とゝん
ととん
可川ちりと
かっちりと
いふ於と可
いうおとが
せぬ可ら者り合 可゛
せぬからはりあいが
ない
ない
(大意)
秀郷は打物業ではかなわないと、日頃信心する浅草の観世音を念ずると、不思議なことに雲中に観音あらわされ、千の矢先をそろえてお射掛けなされた。
観音様も鈴鹿山以来久しく矢を放たれなかったため、千の矢先のうち九十三(本当は九百九十三)筋までがはずれたが、残りの七筋が七人の将門のこめかみ(将門の急所)に命中した。
観音様「どどん、かっちり、という音がしないから、張り合いがない」
(補足)
「うちもの王ざ尓て可奈ふまし」、謡曲「船弁慶」の「弁慶中を押し隔て、打物業(わざ)にて叶うまじと、珠数さらさらと押しもんで」のもじり。
「うちもの王ざ」、『うちものわざ【打ち物業】刀や槍を持って戦うこと。また,その技術』
「千のやさき」、謡曲「田村(能の一。二番目物。世阿弥作か。旅の僧が清水寺で坂上田村麻呂の霊にあい,その東夷征伐の戦いのさまを見る)」の「一たび放せば千の矢先」をきかせている、とありました。
「すゞ可山」、坂上田村麻呂は伊勢鈴鹿山の悪魔を退治した。
「とゝん可川ちり」、盛り場にある土弓(どきゅう)は、矢が的に当たると「カチリ」、はずれると的の外側に張った皮にあたって「ドドン」と鳴る。
秀郷の装束の腰回りのヒラヒラ部分は草摺(くさずり)というそうです。細かく描いています。
秀郷の背後には松の木があります。
0 件のコメント:
コメントを投稿