2024年11月25日月曜日

江漢西遊日記一 その12

P14 東京国立博物館蔵

(読み)

八 日天 氣日金(ヒカネ)山 圓(マル)山 の景色 をうつ春

ようかてんき   ひがね やま  まる やまのけしきをうつす


屏  風尓山 水 を認   ル宿 より蕎麦を贈 ル

びょうぶにさんすいをしたたむるやどよりそばをおくる


九  日曇 ル其 比 南 天 の花 さかり此 花 ハ

ここのかくもるそのころなんてんのはなさかりこのはなは


毎 日 一とヒラ宛 開 くなり盛(サカリ)リなかし生  を

まいにちひとひらずつひらくなり  さかり りながししょうを


冩 春葉至  て武川かし明日ハ出  立 せん

うつすはいたってむずかしあすはしゅったつせん


とて仕度 春る

とてしたくする


十 日朝 曇 ル昼 日照 ス晩 方 雨 今 井半

とおかあさくもるひるひてらすばんがたあめいまいはん


太夫 方 を出  立 して山 越へして三嶋 へ

だゆうかたをしゅったつしてやまごえしてみしまへ


五里あり二里登 リて峠  の地蔵 堂 あり

ごりありにりのぼりてとうげのじぞうどうあり


肉 食 妻 躰 なり誠  尓深 山 ニして鹿 能飛ひ

にくじきさいたいなりまことにしんざんにしてしかのとび

(大意)駄文のつづき

5月8日(新暦6月11日)

 晴れたが、どこへも出かけずに、昨日感動感激の日金山円山の景色を画に描いた。

屏風には山水を描いた。


 腹がへった比、宿から蕎麦が出た。

筆は出しっぱなし、仕上がったばかりの画を眺めながら、ズズッとうまそうに蕎麦をすする江漢先生。

戸部で食ったそばの味などもう覚えてはいまい。


5月9日

 曇だが、南天がちょうど花いっぱいで明るい。

南天は毎日一ひらずつ咲くので、花盛りが長い。


 江漢先生、すぐに絵筆をとり写生をはじめた。

ところが南天の葉がなかなか難しい。


 熱海についてすぐに、いよいよ西へ向かうぞと江戸に手紙をかいたが、

結局約2週間滞在してしまった。

湯治場がおもいのほか居心地がよかったのだろう、海も山も楽しい、富士山も心底気に入った。このままにしていたらせっかくの決心がぐらついてきてしまう。

下僕の自分を見る目もどことなく怪しい。


 明日出発しよう、江漢はその支度をすませ、ひっと風呂あびた。


5月10日

 朝方は曇だったが、お昼ころには日がさしてきた。しかし晩方は雨が降り出した。

長いことお世話になった今井半太夫方を出発し、三嶋へ五里の山越えをする。

二里登って地蔵堂があり、江漢は「肉食妻躰」とわざわざ記している。

よっぽど気になることなのだろう。


(補足)

「宿より蕎麦を贈ル」、現在の表現なら「贈られる」ですけど、何度目にしても気になります。宿と江漢がいて、もうひとり、日記を記している江漢がその状況を見て書いている感じなんでしょうか。

「南天の花」、開花時期は、6/15~7/10頃とあるので、まだ咲き始めの頃。 

「盛(サカリ)リ」、「成」のくずし字が目立ちます。誠尓や城でも同じくずし字です。

 三嶋への峠道、中央やや右よりに軽井沢村がある。 

 残念ながら地図に地蔵堂は見当たらず、他の図面にあるかも。

 

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