2022年12月6日火曜日

さ留かに合戦(堤吉兵衛) その14

奥付 国立国会図書館蔵

(読み)

定價壹銭

御届明治十八年四月廿日 吉川町五バンチ

編輯出板人 堤吉兵衛

(大意)

(補足)

 この豆本は現在使用している平仮名とそれに対応する変体仮名が半々ぐらいの割合で使われているのが目立ちました。同時代頃の豆本では平仮名が出てくるのはまれで、変体仮名一辺倒というものも多くあります。物語の書き手が何人かいるのではと考えます。

 以前にもこのBlogで紹介しましたが、変体仮名について考察した本に

『「変体仮名とその覚え方」板倉聖宣著 仮説社 ¥1600』があります。

 そのP124に以下のような部分があります。

『9.文部省は明治33年にいったん変体仮名の教育を廃止したが、・・・

明治33年、文部省は、小学校令施行規則を定めて小学校での変体仮名の教育を廃止したが、そのとき「棒引き仮名遣」をも定めたこともあって、猛烈な反対運動が起きて、明治41年に変体仮名の教育を復活した。そこで、第二期の国定国語読本には二十六種の変体仮名を教えるようになった。小学校の教科書から変体仮名が完全に姿を消すには、大正11年以後のこと。』

 この豆本の御届は明治十八年ですから、まだまだ変体仮名が主流の時代であろうとおもわれます。その中にあって、平仮名が半分以上使われているということは、かなり意識して変体仮名を使わないで平仮名で記すということを徹底しているようにみえます。

 編輯出板人の堤吉兵衛が、ある書き手には今まで通りに書いてくれと頼み、またある書き手には悪いけどさぁ、平仮名を半分以上入れて書いてくんないかなぁとお願いしていたとも考えられます。

 いずれの経緯にしても、変体仮名を覚えないことにはその当時の手紙・読本・絵本などを読むことができませんから、コツコツ学ぶしかないようです。

 

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