2021年3月31日水曜日

豆本 開化地獄論前編 その3

P2

(読み)

がんせ奈起十  一 二ともお本゛しき可゛

がんぜなきじゅういちにともおぼ しきが


さいせんあげてお可゛ミいし可゛

さいせんあげておが みいしが


ゑんま尓む可いあ奈多ハ

えんまにむかいあなたは


そん奈尓春ミ尓

そんなにすみに


奈つて王づ可

なってわずか


ねん尓尓どの

ねんににどの


おさいせん位  で

おさいせんぐらいで


可くけいを

か けいを


たてるのハ

たてるのは


おやめ尓して

おやめにして


開 化の国 で

かいかのくにで


商  法 を奈さい奈と

しょうほうをなさいなと


いへバゑんまハ

いへばえんまは


大 張 の

おおはりの


うちで

うちで


(大意)

まだ無邪気な十一二歳とも思われる子が

賽銭を上げて拝んでいましたが、

閻魔にむかって

「あなたはそんな片隅に居て

わずか年に二度のお賽銭くらいで家計をたてるのは

おやめになって

開化の国で商法をなさいな」

と言えば

閻魔は大張の内で


(補足)

 普通なら恐ろしくて口もきけない閻魔大王に向かって、

頑是なき子どもが屈託なく話しかけます。子どもの立ち姿と大人のそれとは描き方が

違っているのがよくわかります。首の傾げ方も子どもっぽく描いているところがやはりプロ。

「がんぜ奈起」「たてるのハ」、平仮名「か」「た」。

「そん奈尓春ミ尓奈つて」、「春ミ」は「隅」としました。

「ねん尓尓どの」、変体仮名「尓」は「尓」のかたちと、英文筆記体の小文字「y」のようなかたちがあり、ここでは連続してその2つがでています。

「可くけいを」、「家計」としましたが、さて?

「大張」、辞書などで調べてもヒットしませんでしたが、閻魔大王は奥まったところに鎮座しているので、その場所のことでしょう。

 

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