2022年7月31日日曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その11

P8 国立国会図書館蔵

P9前半

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(読み)

○さう多゛可゛多づ奴るひと可゛

 そうだがたずぬるひとが


あるとてことさミをひ起

あるとてことしゃみをひき


このへん尓をるときゝあるじ

このへんにおるとききあるじ


を多のミよびよせ多る尓

をたのみよびよせたるに


つ満のミ由起奈れどどう

つまのみゆきなれどどう


やく多起多のまへを者ゞ可り

やくたきたのまえをはばかり


あるじとく右衛門尓めぐ春り

あるじとくえもんにめぐすり


(大意)

(娘)のようだが、尋ねる人が

あるとのことで、琴三味線を弾き(暮らしている娘が)

この辺にいるときいて、あるじに

頼んで呼び寄せました。

妻の深雪でしたが、同役の

多喜太の手前、名乗ることがはばかられ

あるじ徳右衛門に(盲目が治る)目薬


(補足)

 はなしがどうもこんがらがってきましたので、ネットでここまでの登場人物名で検索してみました。とても恥ずかしいことですがこの話は文楽(や歌舞伎)「生写朝顔日記」の短縮版でした。とても有名な文楽でありました。全く知りませんでした。その10以前をいろいろ修正しなければならないところがありますが、恥をしのんでそのままとします。

 ネットにあらすじがありましたので、そのあらすじのさらに要約を記しておきます。

まずは一番大まかな筋。

日向国(宮崎県)の城主秋月弓之助の娘深雪が一目惚れした、中国地方(山口県周辺)を治める大内家の家臣宮城阿曽二郎(後の駒沢次郎左衛門)をしたって家出し、目を泣きつぶし、盲目の門付芸人朝顔となって恋人の残した歌を琴三味線をひきながらうたい諸国を流浪する哀しいおはなしです。ちなみに阿曽二郎が深雪におくった歌は「露のひぬ間の朝顔に、照らす日かげのつれなきに…」。


あらすじがわかっただけでも、いままでのはなしがなんとなくわからなかったのがいろいろつながりました。

さて次は、この文楽「生写朝顔日記」にはいろいろな「〜の段」というのがありますが、この豆本では「蛍狩の段」「明石浦舟別れの段」「宿屋の段」「大井川の段」ということになります。

あらすじです。

 京都で儒学を修めていた宮城阿曽二郎は宇治川へ蛍狩りへ出かけます。折しもちょうどそのとき同じく蛍狩に来ていた秋月弓之助の娘深雪と知り合い、ふたりは恋仲となります。(ここまでは「蛍狩の段」)しかし宮城阿曽二郎は伯父駒沢了庵の命により大磯で郭遊びにふける主君を諌めるため、すぐに出発しなければなりませんでした。そののちふたりのすれ違いは何度もつづくのですが、「宿屋から大井川まで」(P6P7)の場面では役目をおえた阿曽二郎と島田の宿で出会いながら、目を泣きつぶし盲目の門付芸人朝顔となって琴を弾く深雪は、目の前の人物が阿曽二郎とはわかりません。

 阿曽二郎は駒沢次郎左衛門と名を変え、その同伴の岩代多喜太(お家乗っ取りをたくらむ悪者の一味で阿曽二郎を殺そうとねらっている)の手前名のれません。こののち、あのときの人が阿曽二郎と知った深雪は髪を振り乱し半狂乱となってあとを追い、大井川の渡しまで来たのですが川止めとなっていて泣きくずれたのでした。その後、忠義な家士に助けられ、目は回復して、阿曽二郎こと駒沢次郎左衛門と夫婦になり幸せに暮らしたのでした。めでたしめでたし。

天保3(1832)年、竹本木々太夫座初演とあります。

「ことさミをひ起」、「ひき」があるので琴三味線とわかります。「こと」は合字になってます。

「どうやく多起多の」、この話のあらすじがわかる前は、なんとく「多起多」は同伴者の名前だろうとはおもっていましたが、あらすじがわかって納得。

「めぐ春り」、さいしょは「めで春り」と読んでいて???でした。深雪が目をわずらっているので薬でした。

P8の武士はあらすじがわかったので宮城阿曽二郎(後の駒沢次郎左衛門)です。旅途中のため両刀は柄袋に覆われています。袴の柄がなんとなく朝顔っぽい。後ろの看板は「伊勢参宮」の一部分と「諸国御定宿」。

P9はあるじ徳右衛門(深雪の侍女の父)、顔の描き方が(阿曽二郎もそうですが)現在のの劇画ふうです。

 

2022年7月30日土曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その10

P6 国立国会図書館蔵

P7後半

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(読み)

ミやぎあそ

みやぎあそ


二郎 こ満

じろうこま


ざハ志゛ろ左衛門と

ざわじ ろえもんと


あう多めあづ満へ

あうためあずまへ


く多゛りこのやどへ

くだ りこのやどへ


と満りつひ多ての

とまりついたての


あさ可゛本のう多尓

あさが おのうたに


きつきあるじ尓

きずきあるじに


とへバち うごくへんの

とえばちゅうごくへんの


きやくのむすめ○

きゃくのむすめ


(大意)

宮城麻二郎は駒沢次郎左衛門と

会うために、東国へ

下りました。この宿へ

泊まり、ついたてに

朝顔の歌があることに気づきました。

宿の主人に尋ねると

中国地方の客の娘


(補足)

「ミやぎあそ二郎こ満ざハ志゛ろ左衛門とあう多め」、名前が連続しています。「こ」が「と」に見えて間沢次郎左衛門とも読めますけど、どうも意味が変。なので大意のようになりました。

「う多尓きつき」、「き」としましたが、変体仮名なのか漢字のくずし字なのかわかりません。

「きやくのむすめ」、無理やり「きゃく」としましたけど、「き」はどうみても変体仮名「連」です。よくわかりません。

 琴を弾くみゆき、目をなきつぶしたとありましたが、本当に目が見えなくなってしまったのでしょうか。それと冒頭の秋月弓之助はどうなってしまったのでしょうか。なんだかだんだん話がみえなくなってきました。

 

2022年7月29日金曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その9

P6 国立国会図書館蔵

P7前半

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(読み)

□さ満

 さま


よひめを

よいめを


奈起つぶし

なきつぶし


可奈やの

かなやの


し由く尓てあし

しゅくにてあし


をとゞめゐ多り

をとどめいたり


(大意)

さまよい、目を

泣きつぶし

金谷の宿に

とどまっていました。


(補足)

「可奈やのし由く」、金谷の宿は大井川の京都側の宿。増水して川止めになると江戸に下る客でにぎわった。

 縁側でみゆきが奏でる琴を聴き入るふたりの武士。さてこの二人は何者?

P6の縁側の土台の脚組の遠近法がなんか変です。扇をもつ武士、男っぷりがいいですねぇ。

 

2022年7月28日木曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その8

P4 国立国会図書館蔵

P5後半

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(読み)

ひ尓ミ可ハ春可本尓おもハ春゛

いにみかわすかおにおもわず


あらし尓ふ年をふき王げら

あらしにふねをふきわげら


連奈ごりをしくも王可れ多り

れなごりおしくもわかれたり


ミ由起ハ奈つ可しく王可゛やを

みゆきはなつかしくわが やを


志のびいで志よ\/本う\゛/を□

しのびいでしょしょほうぼ うを


(大意)

(たが)いに顔をみかわしたのですが

急の嵐が吹きあれ、舟ははなされてしまい

名残惜しくも離れ離れになってしまいました。

みゆきはなつかしさに我が家を

そっと出て所々方々を


(補足)

「ふき王げら連」、吹き分けられと気づくまで少々時間がかかりました。

 みゆきと侍女のキリッと切れ上がった目じりがいいですねぇ。道中と言えどもみゆきの振り袖は豪華です。

 藁葺民家の前にふたりの武士が見上げています。ひとりは麻二郎でしょうけどきりりとしまった細面だったはず。こちらは笠をかぶって丸顔、ちがうのかも。それに舟にのっててお互いに気づいたものの嵐のせいで舟が離れ離れに別れてしまったとあった内容とも異なっている。ウ~ン・・・

 

2022年7月27日水曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その7

P4 国立国会図書館蔵

P5前半

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(読み)

⧖う多をあふぎへ志多ゝめあ

 うたをおうぎへしたためあ


多へ个りそ連よりミ由きハ

たえけりそれよりみゆきは


そのあふぎを者多゛ミ者奈さ春゛

そのおうぎをはだ みはなさず


もちゐ多る可゛そのゝちあらし

もちいたるが そののちあらし


尓てふ奈可゛ゝりせしと起多可゛

にてふなが かりせしときたが


(大意)

歌を扇へしたためて

与えました。それからというもの、みゆきは

その扇を肌身はなさず

にいました。それからしばらくして、嵐の

ため舟を港に避難させたとき、たが(いに)


(補足)

「あ」がたくさん出てきますが、かたちは「お」の点がないかたち。

「者多゛ミ者奈さ春゛」、変体仮名を学んでないと読めないかも。

「あらし」、「ら」が変体仮名「可」に読めて、「明石」かとおもいました。

 ふたりとも杖の手元に手ぬぐいを添えて持ち手としています。手汗をかくし手のひらが痛くまめになってしまうでしょうから、それらを防ぐためでしょう。

 

2022年7月26日火曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その6

P2 国立国会図書館蔵

P3後半

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(読み)

郎 をミ由起尓ち可づけん

ろうをみゆきにちかずけん


とふ年をこ起゛よせてあそ

とふねをこぎ よせてあそ


二らうをま年起゛い連王り

じろうをまねき いれわり


奈きち起゛りをむ春び个り

なきちぎ りをむすびけり


王可連ををしミてのちの

わかれをおしみてのちの


志るし尓とてあさ可゛本のX⧖

しるしとしてあさが おの


(大意)

(麻二)郎をみゆきに近づけようと

船を漕ぎ寄せ麻二郎を(船に)招き入れ、

深い仲となりました。

別れを惜しみ、のちの

しるしとして、あさがおの


(補足)

「あそ二郎」、ここの「郎」のくずし字は「戸」+「巾」。

「ち可づけんと」、変体仮名「可」(か)は変化自在で「う」になったり「ら」になったり「り」や「つ」にもみえたりします。

「王りなき」「王可連」、変体仮名「王」(わ)は已のようなかたち。平仮名「わ」より頻繁に使われます。

 麻二郎が左手に持つ扇、その上で懐紙にささっと歌をしたためました。本文には扇に直接記したとありますけど・・・

 小舟にゆられて蛍狩り、みゆきは麻二郎に一目惚れ。侍女はただちにささっこちらの船へと麻二郎招き入れ「王り奈きち起゛りをむ春び个り」。なんかこれじゃぁ、ホタル狩りじゃなくて・・・はしたないのでこれ以上は言葉をひかえますけど、ねぇ。

 

2022年7月25日月曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その5

P2 国立国会図書館蔵

P3前半

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(読み)

▲あそじらうといふさむ

 あそじろうというさむ


らひもお奈じくふ年を

らいもおなじくふねを


う可べて本多る可゛り尓いで

うかべてほたるが りにいで


多る可゛ミ由起ハあそ二郎

たるが みゆきはあそじろう


をミそめて志多ハしき

をみそめてしたわしき


やう春をこしもとハミて

ようすをこしもとはみて


とり奈尓可゛奈してあそ二

とりなにが なしてあそじ


(大意)

(宮城)麻二郎というさむらい

も同じく船を

うかべてほたる狩りに出ていたところ、

みゆきは麻二郎を見初め、心惹かれた

様子を侍女は見逃しませんでした。

どのようにしても、麻二(郎)


(補足)

「あそじらう」、「ら」が「つ」に見えますが、「し」の最後から「つ」につながっているのは筆が流れているのではなく、「ら」の前半部分。

「ミ由起ハあそ二郎」、行末「郎」は「らう」がちじまっているようにもみえますが「郎」の一番簡略化されたくずし字です。八行目行頭に「郎」のもうひとつのくずし字があります。

「さむらひも」「こしもとハ」、「も」のかたちがことなっています。最初の「も」は最下部から左回りにあがってゆき、もうひとつは最下部から右回りにあがってゆきます。

 小舟の上の麻二郎、ミ由起が見初めただけはある凛々しい立ち姿。従者の首の角度がとても妙です。表情はなんとなく遠くを見ているような・・・。麻二郎の見ている方向とおなじで、麻二郎の後ろから首をちょっとひねってのぞいているような感じです。ミ由起の小船をうかがっているにちがいありません。

このような姿の絵は見たことがありません。

 

2022年7月24日日曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その4

P1後半 国立国会図書館蔵

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(読み)

ミ由起ハうぢ川 へふ年

みゆきはうじがわへふね


をう可べ本多る可゛り尓

をうかべほたるが りに


いでし可゛をりふし

いでしが をりふし


ミやぎ▲

みやぎ


(大意)

みゆきは宇治川へ船を

浮かべ蛍狩りに

でかけました。

折しもちょうどそのとき

宮城(麻二郎)


(補足)

「ミ由起」、平仮名の「き」は変体仮名「幾」(き)です。豆本などに使われるのはほとんど変体仮名「起」。見た目は「紀」に似てますが「起」です。

「ふ年」、変体仮名「年」(ね)は古文書などでは「○」+「ヽ」です。ここでは丸まりきれてません。

「う可べ」、「う」と変体仮名「可」(か)はそっくりというかほとんど同じかたちです。

 ミ由起さんの五色刷りぐらいの錦絵を見てみたいものです。

 

2022年7月23日土曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その3

P1前半 国立国会図書館蔵

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(読み)

あきづき由ミの春けハ由ゑ

あきづきゆみのすけはゆえ


ありてち うごくよりミやこへ

ありてちゅうごくよりみやこへ


うつり春満ゐを奈し个る可゛

うつりすまいをなしけるが


あるとしの奈つむ春め

あるとしのなつむすめ


(大意)

秋月弓之助は故あって

中国地方より都へ

移り住んでいました。

ある年の夏、娘


(補足)

「由ミの春け」「由ゑ」、変体仮名「由」(ゆ)の縦棒は曲がります。

「ありて」、「り」or「つ」のどちらでも意味は通じますが悩むところです。ちょうどそのすぐ左側に「つ」と「り」がありますがどちらにも見えてしまいます。

「春満ゐ」、変体仮名をいくらか勉強していないと読めません。

「个る可゛」「あるとしの」、ここの「る」は変体仮名「留」(る)なのですが、ひらがなにしてあります。

「む春め」、変体仮名「春」(す)は平仮名「す」のクルッと回るところの直前で「て」を書きます。または単純に「十」+「て」。

 小舟のヘリに豆電球が電飾のようになっているのがホタルであります。わざわざ小舟を出してホタル狩りをするなんて酔狂なと無粋なわたしはおもうのですけど。

 みゆきは振り袖に髪飾りと完璧なお出かけ衣装です。小舟で立ち上がってしまっていてグラっと落ちたらと心配です。

 左側にきれいな箱があります。お弁当かちょっとした身の回りの小物などが入っていそうです。

 顔の描き方や表情の作り方が、今風でほんとに140年前のものなのかと首をかしげることしきりであります。

 

2022年7月22日金曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その2

見返し 国立国会図書館蔵

(読み)

是 より大 井川

これよりおおいがわ


(大意)

(補足)

 燕が飛んでます。やってきたばかりなのか、それとも子育てまっさかり中なのか。

「箱根八里は馬でも越すが 越すに越されぬ大井川」、雨で増水し川留めとなるのは珍しいことではありませんでした。

 

2022年7月21日木曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その1

表紙 国立国会図書館蔵

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

 明治15年7月11日御届で定価3銭。もともとの原本が傷んでいたのでしょうか、全体が黒ずんでしまっていて何がなんだかわかりません。しかし一番の特徴で目をみはるのがふたりの顔の描き方です。構図は従来のものですが、いままでの江戸時代の美人画錦絵調のものではなくなっていることです。このようなタッチの劇画を描く現代の漫画家の何人かが思い浮かびます。

 もう少しまともなデジタル資料がないものかと探してみましたが、ほとんどありませんでした。ヒットするのは源氏物語の光源氏を袖にした朝顔の姫くらい。

 

2022年7月20日水曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その19

裏表紙 国立国会図書館蔵

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

 浴衣生地の柄にしてもよさそうです。鼓の腹に見えるのは茶釜を上から見たものでしょうか。綱に見えるのは舞台で人気だった綱渡りのもの?背景は野原ですけど、分類シートの下側に椅子の脚みたいのがみえて気になります。

 

2022年7月19日火曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その18

奥付 国立国会図書館蔵

(読み)

明治十五年七月十一日御届

東京日本橋区馬喰町二丁目一番地

編輯兼出版人 木村文三郎


(大意)

(補足)

 前回「祢づミの嫁入(木村文三郎)」では広告文の「算法新書」をとりあげました。今回もどれかをとおもったのですが、他3つの広告文が読めそうで読めません。しかし勉強のためはじめのひとつに挑戦。

刑法片カナ付き廿五銭

治罪法    三十銭

同字引     十銭

此書ハ先般中御頒布ニ相成候刑法治罪法へ解安きやう両可゛奈を以て?訓

せし書奈れ者゛初学者ニもすみや可尓讀る珠書奈り

なかなか難しい。

 

2022年7月18日月曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その17

P12後半 国立国会図書館蔵

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(読み)

个いの人 ゝ ま春\/くん

けいのひとびとますますくん


じ由奈せしと可やいま

じゅなせしとかやいま


のよまでもおこさ満可゛多

のよまでもおこさまが た


のおとぎ者゛奈し尓つ

のおとぎば なしにつ


多へのこ連りめで多し\/  \/

たえのこれりめでたしめでたしめでたし


定價三銭


(大意)

(参)詣の人々はますます

集まり賑わったとのこと。

今の世までもお子様方の

おとぎ話に伝え残って

めでたいことでありました。


(補足)

「くんじ由」、P9の4行目にも出てきました。群集。

「おこさ満可゛多の」、豆本や草双紙によく出てくるわたしのお気に入りの言い回し。

 

2022年7月17日日曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その16

P12前半 国立国会図書館蔵

P12拡大

(読み)

とり多てぶんぶく大

とりたてぶんぶくだい


め うじんとあ可゛め多れ

みょうじんとあが めたれ


者゛志よ尓んきゝおよび

ば しょにんききおよび


ふくろくえんめいをいの

ふくろくえんめいをいの


り个る尓その里やく

りけるにそのりやく


いち志゛るし个れバさん

いちじ るしければさん


(大意)

(祠を)建て、ぶんぶく大明神

と崇めました。人々はそれを聞き及び

福禄延命を祈願すると

その御利益は著しく参(詣)


(補足)

 ぶんぶく大明神が座す金とん雲のようなものの尻尾は空の奥、天上へと吸い込まれています。

右脇には鳥居がありその先には茅葺きの建物が、これが祠(ほこら)でしょうか。

 

2022年7月16日土曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その15

 

P10後半 国立国会図書館蔵

P10文章拡大

P11

(読み)

可゛満をへんのうい多しま

が まをへんのういたしま


春可らおてらのぢう

すからおてらのじゅう


もつ尓奈しく多゛されと金 百

もつになしくだ されときんひゃく


りやうをそへて本うのう

りょうをそえてほうのう


し多りぢ うぢもきいの

したりじゅうじもきいの


おもひを奈し本こらを□

おもいをなしほこらを


(大意)

(茶)釜を返納いたします

からお寺の重物にしてください」と

金百両をそえて奉納

しました。住待もありがたいことと

感謝し祠(ほこら)を


(補足)

「ぢうぢもきいのおもひを奈し」、「きい」を調べると奇偉奇異忌諱紀伊貴威貴意などがありました。さてここの文脈からどれだろうと・・・。

 P11もこれまた描けるところはすべて精緻に細かく刻んでいます。執念!襖絵は鶴でしょうか。庭の石筒のようなもののそばにある植物は万年青(おもと)?住持の衣装と座布団の立派なこと、大僧正であります。


2022年7月15日金曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その14

P10前半 国立国会図書館蔵

P10文章拡大

P11

(読み)

多て者゛やしも里んじ尓

たてば やしもりんじに


い多りおせ う尓多いめん

いたりおしょうにたいめん


奈しこれまでの事 をくハ

なしこれまでのことをくわ


しく可多り王多くしもあん

しくかたりわたくしもあん


多いのミのうへとあい奈り

たいのみのうえとあいなり


あり可゛多起由へこのちや

ありがたきゆえこのちゃがま


(大意)

館林茂林寺に

でかけ、和尚に面会

しました。これまでのことをくわ

しく語り、「わたくしも安泰

の身の上とあいなり、ありがたいことです。

ですので、この茶(釜を)


(補足)

「多て者゛やし」「あり可゛多起由へ」、変体仮名「由」(ゆ)は右回りにクルッとまわってそのまま中に縦棒となりますが、それがグニャリとまがります。「や」も筆順は同じですが曲がりません。

「あい奈りあり可゛多起」、「あ」は「お」の点がないかたちです。

 古かね買いの主人は衣装も佇まいもすっかり富貴の身の上。

お寺のお庭もきれいです。

 

2022年7月14日木曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その13

P9後半 国立国会図書館蔵

P9文章拡大

(読み)

うち尓ふる可年ハ大 可゛年まふ

うちにふるかねはおおが ねもう


けを奈しふうきの身のうへ

けをなしふうきのみのうえ


と奈り多りこ連ハまつ多くぶん

となりたりこれはまったくぶん


ぶくちや可゛満のお可げ奈りとて△

ぶくちゃが まのおかげなりとて


(大意)

うちに古かね買いは大儲けを

して、財産を持ち身分の高い身の上と

なりました。これはすべて

ぶんぶく茶釜のおかげであるので


(補足)

 浅草の奥山に小屋をかけたとありますが

どうやら野外のようで、中央に大きな木があり

背景は野山にたくさんの屋根が見えます

 文章は読みやすい。

 

2022年7月13日水曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その12

P9前半 国立国会図書館蔵

P9文章拡大

(読み)

个゛んぶんぶくちや可゛満のげいづく

げ んぶんぶくちゃが まのげいづく


しといふ可ん者゛んを可け多連バ

しというかんば んをかけたれば


大 ひやう者゛んと奈りあさ可ら

だいひょうば んとなりあさから


个んぶつくんじ 由奈し春こしの

けんぶつくんじ ゅなしすこしの


(大意)

(「新狂)言ぶんぶく茶釜の芸づくし」

という看板をかけたところ

大評判となり朝から

見物のため人が集まり、わずかの


(補足)

 ぶんぶく茶釜の綱渡り。和傘と扇はおきまりの道具。掛け声と鳴り物の音が聞こえてきそうです。

筒くぐりの編み目の描き方がもう一息でした。

「くんじ由」、「群衆・群集」の読みに「くんじゅorぐんじゅ」というのがあるのが知りませんでした。お恥ずかしい。

 

2022年7月12日火曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その11

P8 国立国会図書館蔵

P8文章拡大

(読み)

%そのよくじつふる可年可ひハ

 そのよくじつふるかねかいは


おもひついてあさくきのおく山 へ

おもいついてあさくさのおくやまへ


大 き奈こやを可け可の可満を

おおきなこやをかけかのかまを


ミせもの尓い多゛し志んきやう

みせものにいだ ししんきょう


(大意)

その翌日、古かね買いは

おもいついて浅草の奥山へ

大きな小屋をかけ、例の釜を

見世物に出しました。「新狂言


(補足)

 こんな小屋がかかったら、見てみたいもの。

大繁盛だったでしょうね。

舞台手前、画面の右下にあるコの字の物はなんでしょうか。気になります。

 

2022年7月11日月曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その10

P6 国立国会図書館蔵

P7後半

P7文章拡大

(読み)

いでゝミれバふしぎやもとのごと

いでてみればふしぎやもとのごと


く奈り多りこれハよ尓めづらしき

くなりたりこれはよにめずらしき


ぶんぶくちや可゛満とて奈りもの

ぶんぶくちゃが まとてなりもの


尓つれおどりを奈し志よ个゛いを

につれおどりをなししょげ いを


春ること多けざハとうじも奈可

することたけざわとうじもなか


\/可奈王ぬくらゐ奈りさて%

なかかなわぬくらいなりさて


(大意)

てみると、不思議なことにもとのように

なっていました。これは世に珍しい

ぶんぶく茶釜ではと、鳴り物

にあわせて踊りをし諸芸を

すること竹沢藤治(幕末の曲独楽師)もなか

なかかなわぬくらいのものだという。さて


(補足)

「もとのごとく」「志よ个゛いを春ること」、「ごと」「こと」は合字。

「くらゐ」、この部分なかなか読めませんでした。このようなときは読みすすめたり戻ったりして文脈の流れをつかみます。また似たようなかたちの部分を探します。そうしたら見つけました。3行目「まくらもと」の「くら」が同じ形です。「ゐ」はよめてましたから「くらゐ」と判明。意味も通じます。よし!

 ぶんぶく茶釜が何か訴えるような優しい表情なのが印象的。

 

2022年7月10日日曜日

婦゛んぶく茶釜(木村文三郎) その9


P6 国立国会図書館蔵

P7前半

P7文章拡大

(読み)

▲大 もうけを奈しう満いさけでも

 おおもうけをなしうまいさけでも


の満んとそのよハい年多りよ

のまんとそのよはいねたりよ


奈可尓まくらもと尓て奈尓可

なかにまくらもとにてなにか


さハ可゛し个れバめをさ満しこ連

さわが しければめをさましこれ


をミる尓个 ふおてら尓て可ひ多る

をみるにきょうおてらにてかいたる


可満へてあし可゛者へて多ぬきと

かまへてあしが はえてたぬきと


奈つ多る奈りきもをつぶしお起

なつたるなりきもをつぶしおき


(大意)

大儲けをしてうまい酒でも

飲もうとその夜は床につきました。

夜中に枕元で何か

騒がしくて目を覚まして

確かめてみると、今日お寺で買った

釜に手足がはえてたぬきと

なっていました。肝をつぶし起きて


(補足)

 文章はやや読みづらいところもありますが文脈から判断がつきます。

古かね買い屋さんのあわてようは滑稽ですが、当時ほんとうにこんなふうに夫婦で寝ていたのでしょうか。う〜ん・・・

 枕屏風の柄がなんとも幾何学的現代的、よくこんな意匠をおもいつくものです。

 箱枕が気になり、拡大してみました。頭(or首)をのせる部分に数枚の(多分)紙が束ねてあるのに気がつきました。ふたつともそうなっています。鬢付け油で汚れてしまうので、汚れたら一枚ずつ抜き取って使うようです。はじめて知りました。