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(読み)
む可しゝ
むかしむかし
あるとこ尓
あるとこに
正 ぢ起奈るぢゞいあり
しょうじきなるじじいあり
そのと奈り尓
そのとなりに
与くふ可起
よくふかき
者゛ゞア
ば ばあ
ありし可゛
ありしが
ある
ある
とき者゛ゞア
ときば ばあ
せん多くを
せんたくを
奈さんと
なさんと
のりを
のりを
おきし尓かのぢゞいの
おきしにかのじじいの
(大意)
昔むかしあるとこに
正直な爺がおりました。
そのとなりに欲ふかな婆が
おりました。
あるとき洗濯をしようと
糊(のり)を置いておいたところ
となりの爺の
(補足)
「与くふ可起」、「よ」の変体仮名「与」。
「者゛ゞア」、「は」の変体仮名「者」は、平仮名「む」の後半が上がらないで平らかもしくは右下に流れます。ここでは「゛」がついて「ば」。
「かのぢゞいの」、平仮名「か」を使っているのはめずらしい。ほとんどは変体仮名「可」です。
頁の四隅どこをみてもしっかり丁寧に描き込んでいます。配色も渋くすばらしい。
輪郭線はやや太めの黒です。
右手に和鋏をもつ婆の表情、口を半開きにし白髪の髪の毛は海のうねりのように逆立っています。
手足の力のこもりようと指先までもこまかく描き、縁側の板を踏み抜いてしまいそう。
着物にたすき掛け、裾は端折って血気盛んな欲深婆さんの荒々しさが雀を追って縁側から飛び降りそうです。
雀は左上やや大きく描き、婆さんとの対比で遠近感をだしています。
右側、壁にひびが入り下地の竹組が見えて住まいが荒れています。
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