2020年12月12日土曜日

豆本 猿加尓合戦 その10

P.6上段後半

(読み)

尓多ちう春おや

にたちうすおや


多満ごのきミざう

たまごのきみぞう


者ちのさ春べゑ

はちのさすべえ


奈んどそ連\/べう

なんどそれそれべう


ぎ奈し个゛んぢう 尓

ぎなしげ んじゅうに


てく者゛りをし多り个る

てくば りをそたりける


(大意)

(一番に)立ち臼親、

玉子の黄身蔵、

蜂の刺兵衛、

などがそれぞれ評議

をして、厳重に

手配りをしました。


(補足)

「立ち臼親」関取のような名前、立膝の着物姿がふっくらしてます。「玉子の黄身蔵、蜂の刺兵衛」はそのまんま。「蔵」(ざう)、「評」(べう)、「重」(ぢう)、読みがやっかい。

 

2020年12月11日金曜日

豆本 猿加尓合戦 その9

P.6上段前半

P6文章拡大

(読み)

さし个連バきより

さしければきより


ころげおち本う\/

ころげおちほうほう


のてい尓て尓げさり

のていにてにげさり


个るあと尓て可尓

けるあとにてかに


のとも多゛ちより

のともだ ちより


あつまり多゛い一者゛ん

あつまりだいいちば ん


(大意)

刺したので木より転げ落ちて

ほうほうの体で逃げ去り

ました。その後、蟹

の友達が寄り

集まり一番最初に


(補足)

 文章は難しいところはなさそうです。立ち臼親の姿が勇ましい。わたしなら臼を胴体にして手足を、顔は臼の上にのせますけど、まさか臼本体を頭部にするとは・・・虚無僧のかぶっている笠が発想の元かもしれません。着物柄は杵(きね)。煙管一式がやけに目立ちます。火鉢側面に何やら書いてあるのですが拡大しても読めませんでした。

 襖(ふすま)には無地のところはなく、細かい点がたくさんあります。

 

2020年12月10日木曜日

豆本 猿加尓合戦 その8


P.5後半

P5文章拡大

(読み)

可尓ゝうちつけるゆへ可尓ハくや

かににうちつけるゆえかにはくや


しく奈げ起をるところへ者ち

しくなげきをるところへはち


可゛き多りてさるを志多ゝ可尓

が きたりてさるをしたたかに


「アゝざんねん\/」

「ああざんねんざんねん」


(大意)

蟹に投げつけたので蟹は悔し

くて嘆いていたところへ、蜂

が飛んできて猿をしたたかに


「ああ残念残念」


(補足)

「可尓ゝ」、「ゝ」をみおとしてしまいそう。

「者ち」、変体仮名「者」(は)は「む」の下側が右斜め方向にダラダラっと流れるようなかたちですがここではその部分が小さい。

「志多ゝ可尓」、2行前にもありました「ゝ」があります。「可尓」は洒落たわけでもないとおもいますけど「志多ゝ」という種類の蟹がいるのかもしれません。

蟹が嘆いている「アゝざんねん\/」は注意しないと書いてあるのもわかりません。

今回の頭にかぶせてある蟹のお面は、爪も立派で形もくっきりです。

野原をひょっとこみたいな顔をして逃げ回るのは蜂に追われる猿でしょうか。拡大してみると着物の柄が桃の果実と葉のようです。

P4P5見開き

 画面の構成が上手です。それよりも細い硬筆でくまなく描きこんでいることの方に関心がいってしまいます。


 

2020年12月9日水曜日

豆本 猿加尓合戦 その7

P.4

P.5前半

(読み)

ゆへとらぬ」といへバさるハ「とりて

ゆへとらぬ」といえばさるは「とりて


やらん」ときへ可けの本゛りう満

やらん」ときへかけのぼ りうま


きハおの連可゛くらい志ぶ可起を

きはおのれが くらいしぶかきを


(大意)

(登れない)ので採らないのだ」と言うと、猿は「採って

やろう」と木へかけ登り、うまいのは

自分で食い、渋柿を


(補足)

 P4は文章はなし。柿の葉っぱを頭につけてるのは猿でしょうけど、ちょっと格好良すぎる美男の役者ぶり。縦縞の着物、左脚うしろにまくれたのまで丁寧に描いています。足元には食い散らかした柿がゴロゴロ。それにしても細線で描きこんでいる、拡大してみても細かい。

P5。

「由」(ゆ)、「や」。ちょうど二つ並んでいて比べやすい。両方とも筆の運びはほぼ同じ。「ゆ」は変体仮名「由」のなごりがあって、最後の縦におろすところがたいてい「く」のように若干曲がります。「や」は「つ」のように書き出して最後は右回りにクルッと回って素直に下へ。

「可けの本゛りう満きハ」、「可」と「う」はそっくりというより同じです。文意から区別するしかありません。変体仮名「満」(ま)が硬筆なので形がよくわかります。

「おの連」、変体仮名「連」(れ)も形がよくわかります。最初に縦棒、その左側に「ミ」のようにして筆を運び、「ミ」の3画目で最初に縦棒を横切り、あとは高さが縮まった「く」。

 恥ずかしながら・・・

柿の葉っぱを頭につけてるのは猿ではありませんでした。次頁で同一人物が登場、蜂の刺兵衛でありました。頭に乗せているのは蜂です。よく見ると目もあり胴体も尻の膨らみもありました。羽根が葉っぱに見えてしまいました。初心者はよくわからないと妄想で補ってしまいます。お許しを。

 

2020年12月8日火曜日

豆本 猿加尓合戦 その6

P.2後半

(読み)

とることでき春゛奈可゛めゐ多る

とることできず なが めいたる


ところへ可のさる可゛き多りて

ところへかのさるが きたりて


あ可るミ多るをミて奈ぜとら

あかるみたるをみてなぜとら


ざるやといへバきへの本゛られぬ

ざるやといえばきへのぼ られぬ


(大意)

採ることができず眺めていた

ところへあの猿がやって来て

赤くなっている柿を見て「なぜ採らないのだ」と

言うと「登れない(ので)


(補足)

「とること」、「こと」は合字です。「より」はフォント「ゟ」がありますが、「こと」はありませんでした。

「あ可るミ多るをミて」、「可る」がわかりませんでした。話の前後の流れから柿の実のことだろうと想像できます。そうすると柿の色のことですから、「かる」とよめば意味が通じました。

P2P3見開き

 蟹役は学芸会のように頭に蟹を付けています。さすがに蟹を擬人化するのは難しかったのかも・・・、できていたとしても豆本にするには不気味すぎて受け入れられそうになかった?

 縦横縞が方眼紙のように正確です。着物のふくらみや乱れにおうじて縦軸横軸もそれらに沿っています。蟹のハサミがうしろの木の幹にかくれてわかりずらくなっているのがちょっと残念。

 葦の生えている池の向こう岸には茅葺屋根の農家などが数軒見えています。

 

2020年12月7日月曜日

豆本 猿加尓合戦 その5

P.2前半

(読み)

多年を王可゛やへもち可へり尓ハへ

たねをわが やへもちかえりにわへ


うへ多連バめを多゛し多ちまち

うえたればめをだ したちまち


多い本゛くと奈りミことの可起

たいぼ くとなちみごとのかき


多くさん尓奈り多れバきの

たくさんになりたればきの


もとへ由起多のしミゐ多れども

もとへゆきたのしみいたれども


(大意)

種を我が家へ持ち帰って庭へ

植えたところ芽をだしたちまち

大木となり見事な柿が

たくさん実りました。(蟹は)木の

下(もと)へ行って(眺めて)楽しんでいましたが、


(補足)

「王可゛やへ」、変体仮名「王」(わ)は漢字「已」のかたち。

「尓ハへ」、庭(にわ)をこのように書かれると庭のイメージがわきません。

「多連バ」、変体仮名「連」(れ)ですが、この2行あとは「多れバ」と平仮名「れ」になってます。さらにその次の行「多れども」でも平仮名「れ」です。

「ミこと」、フォントがないので「こと」としましたが、一文字で合字です。「こ」の下部と「と」の一画目がつながります。濁点がついていませんけんど「みごと」の意。

「多のしミゐ多れども」、「し」が3行前の「し」に比べるととても小さい。「ゐ」が最初わかりませんでした。わからないときはひとまずとばして次に進みます。すぐ次の行に「ゐ多る」がありました。「ゐ」のようだとわかりそれで意味も通じます。

 銅版画になり、木版と比べると細密画のように筆記具の先の細さに応じてどこまでも描きこむことができるようになりました。そうなると画工は力一杯できることは限度まで挑戦してしまいます。木版画のときの奥ゆかしさというか何から何まで描き込まないという趣がなくなってしまいました。

 この絵も画工は隙間なくペンをはしらせています。細い線だけで木に登り柿をもいでいる腕や脚の力の入れ具合が上手です。どの柿にもヘタと反対側のところに「ツ」のような模様がはいっています。

 

2020年12月6日日曜日

豆本 猿加尓合戦 その4

P.1後半

(読み)

ひさるハおの可゛くひ

いさるはおのが くい


多る可起の多年と

たるかきのたねと


む春びととり可へ

むすびととりかえ


てむ春びをくらひ

てむすびをくらい


个る可尓ハその可起の

けるかにはそのかきの


(大意)

自分が食べていた柿の種と

おにぎりを取り替えてそのおにぎりを食べました。

蟹はその柿の(種を)


(補足)

「多年」(たね)、「年」は毛筆だとほとんど「◯に丶」のかたちですが、硬筆だと「年」の形が残っているものの◯にもなれないというやや中途半端な形。

 頁の折り目に半分の文字があります、「さる可尓」と読めます。

木の幹や葉の茂るタッチも細かい。

見返しは色付きでした。この頁も蟹と猿の顔に薄く赤色を塗ってみたくなります。