2021年3月31日水曜日

豆本 開化地獄論前編 その3

P2

(読み)

がんせ奈起十  一 二ともお本゛しき可゛

がんぜなきじゅういちにともおぼ しきが


さいせんあげてお可゛ミいし可゛

さいせんあげておが みいしが


ゑんま尓む可いあ奈多ハ

えんまにむかいあなたは


そん奈尓春ミ尓

そんなにすみに


奈つて王づ可

なってわずか


ねん尓尓どの

ねんににどの


おさいせん位  で

おさいせんぐらいで


可くけいを

か けいを


たてるのハ

たてるのは


おやめ尓して

おやめにして


開 化の国 で

かいかのくにで


商  法 を奈さい奈と

しょうほうをなさいなと


いへバゑんまハ

いへばえんまは


大 張 の

おおはりの


うちで

うちで


(大意)

まだ無邪気な十一二歳とも思われる子が

賽銭を上げて拝んでいましたが、

閻魔にむかって

「あなたはそんな片隅に居て

わずか年に二度のお賽銭くらいで家計をたてるのは

おやめになって

開化の国で商法をなさいな」

と言えば

閻魔は大張の内で


(補足)

 普通なら恐ろしくて口もきけない閻魔大王に向かって、

頑是なき子どもが屈託なく話しかけます。子どもの立ち姿と大人のそれとは描き方が

違っているのがよくわかります。首の傾げ方も子どもっぽく描いているところがやはりプロ。

「がんぜ奈起」「たてるのハ」、平仮名「か」「た」。

「そん奈尓春ミ尓奈つて」、「春ミ」は「隅」としました。

「ねん尓尓どの」、変体仮名「尓」は「尓」のかたちと、英文筆記体の小文字「y」のようなかたちがあり、ここでは連続してその2つがでています。

「可くけいを」、「家計」としましたが、さて?

「大張」、辞書などで調べてもヒットしませんでしたが、閻魔大王は奥まったところに鎮座しているので、その場所のことでしょう。

 

2021年3月30日火曜日

豆本 開化地獄論前編 その2

P1

(読み)

げ尓こう

げにこう


いんハやの

いんはやの


ごとく

ごとく


めくり

めくり


\/

めくり



ひと

ひと


とせ尓

とせに


尓どゝきまりし

にどときまりし


大 王 王十  六 日 を

だいおうはじゅうろくにちを


さい日 と奈せバ

さいじつとなせば


東 京  区中  の

とうきょうくちゅうの


奈ん女 老 若

なんにょろうにゃく


おし奈へて

おしなへて


おゑんまさ満へ

おえんまさまへ


さんけい奈す

さんけいなす


奈可尓

なかに


小  児の

しょうにの


(大意)

じつに光陰矢の如く、めぐりめぐって

一年に二度と決まっている

閻魔大王の十六日の祭日となれば、

東京市中の老若男女は

皆々、お閻魔様へ参詣する。

その中に子どもの


(補足)

 文章が今までのお伽噺などの出だしとは異なり、少し格調高く語りだしています。講談調なのかもしれません。声を出して読むとリズムも調子よくハリセンでペペンペンペンとしたくなる。

「大王王」(大王は)、変体仮名「王」(わ)のところは、現在では「は」ですし、当時も「ハ」のほうが多く使われています。しかし現在では助詞「は」や「を」のところが「わ」、「お」となっている豆本もあります。

 現在の表記になるのは明治より何十年もかかっていて、大正から昭和はじめにやっと現在に近づき、終戦後にようやくといったところではないでしょうか。いくら国が音頭を取ってもかっての教育を受けた人々が亡くならないかぎり、変化は難しいということです。

 参詣にはつきものの出店の風景。着物姿ではありますが今と変わるところはありません。たった8人しか描いてないのに賑わいを感じます。上手ですね。

 

2021年3月29日月曜日

豆本 開化地獄論前編 その1

表紙

見返し

(読み)

表紙の題名のところにラベルがあります。「開化地獄論前編」でしょうけど。

 見返しには「開化地獄ろん前編」。やっとこは歯を抜くのではなく舌を引っこ抜くため。丸い鏡は浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)というもの、亡者(もうじゃ)の生前のすべてのおこないを映し出すというすぐれもの。子どもたちはこの見返しで少し顔がひきつりビビりそう。やっとこのサキッチョがやけにリアルでパチパチと音がきこえてきそうです。鏡の周囲の飾りはどこか毒々しくて不気味です。

(大意)

(補足)

 前回の「朝日奈嶋逥り」と同じく出版人勝木吉勝の豆本。御届も価格も同じです。

前編と後編の表紙を並べてみます。

 いやはや迫力満点。本屋の店頭にはこうして2冊を並べたのでしょうね。うちのせがれたちは最近ナマいうようになりやがったからこれでチトびびらっせかなナンテいって、これなら売れそう。閻魔大王をにらみ返す小僧の面構えが負けてない。少し体を引きつつも「なにぉ〜っ」てむかっていく気持ちがあふれている。豆本の内容はこの小僧の気概がたのもしい。

 

2021年3月28日日曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その13

奥付

(読み)

明治十五年五月廿二日出版御届

東京府士族

編輯兼出版人 勝木吉勝(かつきよしかつ)

下谷區數寄屋町十五地

定價二銭

(大意)

(補足)

 縦の線がフラフラしてますけど活字を使っている。活字は宣教師が持ち込んだものや秀吉が朝鮮より持ち帰ったもの、またその後、家康が駿河版といわれた銅版活字などが有名だが、定着せず木版が全盛を誇った。しかし明治になり急速に普及し木版はすたれ現在に至る。勝木吉勝はいわばその進取の気風をしめしたかったか?でもこの豆本はお世辞にも出来が良いと言えないどころかむしろ悪い部類。それなのに定價二銭は他の豆本が壹銭五厘だから高い。

 

2021年3月27日土曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その12

P12

(読み)

だつ多ん

だったん


あめり可

あめりか


といろ\/の

といろいろの


嶋 へわ多り

しまへわたり


一 生  を

いっしょうを


春起し

すぎし


とぞ

とぞ


めで多し\/

めでたしめでたし


(大意)

韃靼(だったん)・アメリカといろいろな嶋へ渡り

一生を過ごしたとのことでした。

めでたしめでたし。


(補足)

 韃靼は普段耳にしませんが、現在では蕎麦屋に韃靼そばがメニューにあるくらいでしょうか。

「岩」に見える字は「嶋」としましたが、間違っているかもしれません。古文書では偏と旁の部品は左右に並びますが、それを上下に配置してあることがよくあります。

 朝比奈の表情はやはりひょうきんだし、左脚のスネの細さが操り人形のよう。ひざまずく「黒ん坊」は何かを懇願しているようですがさてはて?

 

2021年3月26日金曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その11

P10P11見開き

(読み)

たべもの

たべもの


やま起春ミ

やまきすみ


あるひハ

あるいは


人 をのせ多りして

ひとをのせたりして


く王つけいを

くわつけいを


多てるところ

たてるところ


奈り

なり


あさゐ奈ハ

あさいなは


それより

それより


くろん本゛う

くろんぼ う


のし満へ

のしまへ


由起それ

ゆきそれ


よりおろ

よりおろ


しや

しゃ


(大意)

食べ物や

薪(まき)炭(すみ)

あるいは

人を乗せたりして

家計をたてている。

朝比奈は

それより

黒ん坊の島へ行き

それからロシア


(補足)

出だしは平仮名「た」。「や」は現在の平仮名とほとんど同じですが書き順が「つ」のあとにそのまま左上にすすめてから反転して右下におろしています。

「く王つけいを」、悩むところですが旧仮名遣いと理解して「かけい」(家計)としました。

 朝比奈のやる気のない表情がおかしい。摺師も両足部分など色ののせかたも適当です。

 

2021年3月25日木曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その10

P10

(読み)

このく尓の人 ハ

このくにのひとは


ミ奈\/

みなみな


者ら尓▲

はらに


▲おゝ起奈

 おおきな


あ奈可゛あいて

あなが あいて


いてそのあ奈

いてそのあな


の奈可へ本゛うを

のなかへぼ うを


とをして日々の

とおしてひびの


(大意)

この国の人は

皆々腹に大きな穴があいていて

その穴の中へ棒を

通して日々の


(補足)

変体仮名「者」(は)は平仮名「む」の左半分を書いてあとは右下にダラリとたらす感じ。

「あ」は「お」の「丶」がない形。最初の縦棒が現在の「あ」はゆるく曲がりますが、当時のはまっすぐです。

変体仮名「本」(ほ)は漢字「不」の形。

 背景の白い部分は色の塗り忘れです。天秤棒にぶら下がっている腹穴あき人の顔がなんとも妙チクリン、見たこともない国の人の顔だからか。


 

2021年3月24日水曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その9


P9

P8P9見開き

(読み)

みるとこも

みるとこも


奈けれバ

なければ


春ぐ尓

すぐに


むこふの

むこうの


し満へわ多りて

しまへわたりて


このく尓をミる尓

このくにをみるに


(大意)

見るところもなかったので

すぐに向かいの島へ渡りました。

この国を訪れてみると


(補足)

最初の行「みるとこも」、最後の行「ミる尓」、平仮名「み」の使用頻度はは圧倒的に少ない、ほとんどは片仮名「ミ」。

平仮名「ふ」と変体仮名「尓」(に)は似てます。最後の行の「このく尓」の「尓」は英小文字筆記体の「y」にそっくり。

 全体の色調も色使いも明るくにぎやかです。主役は大小の太刀、見開きをバッテンにしていやはや立派なこと、朝比奈土俵入りの趣もあります。

 

2021年3月23日火曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その8

P8

(読み)

小人

こびと


じ満

じま



わ多り

わたり


この

この


く尓ハ

くには


国 も

くにも


ちいさく

ちいさく


人 もちい

ひともちい


さいくらい

さいくらい


多゛可ら

だ から


曽木とても

そぎとても


ちいさく

ちいさく


して

して


(大意)

小人(こびと)島に渡りました。

この国は国も小さく

人もちいさいくらいで

曽木でさえも小さかったので


(補足)

「小人じ満に」、平仮名「に」がでてきました。ふだんはほとんど変体仮名「尓」です。この3行あとにでてきます。

「曽木」ってなんでしょうか?読み方が違うか?

小人ふたりの服装はいたって質素単純です。


 

2021年3月22日月曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その7

P6P7見開き

(読み)

こく

こく


ふうを

ふうを


のこる可多

のこりかた


奈く

なく


へめぐりて

へめぐりて


こゝより

ここより


とをくも

とおくも


あらぬ

あらぬ


小びと

こびと


じ満へ

じまへ


由かん

ゆかん


と▼


▼びん

 びん


せん尓のり

ぜんにのり


可い志やう

かいしょう


つゝ可゛奈く

つつが なく


むこうの

むこうの


(大意)

とくにこれといった風俗習慣もなく

巡りました。

ここからそう遠くもない

小びと島へ行こうと

ちょうどそこに向かう船があり、それに乗って

海は荒れることなく

向こうの


(補足)

「こくふうをのこる可多奈く」、「こくふう」はお国ぶりと理解、「のこる可多奈く」は残っているところがないと理解、しましたがうーん・・・

その次の「へ」は何でしょう?不明です。

「便船」、ちょうど都合よく出る船。また、その船に乗ること。とありました。

「海象」(かいしょう)、海洋における自然現象の総称。

現在では使われない言葉がたくさんでてきてますが、はてさて正しい解釈かわかりません。当時でも、もっと低年齢の子ども向けに簡単な表現があったのではないかとおもうのですけど。

脚長島も手長島も、テナガザルが住んでる島と考えれば実際にありそうです。全頁で朝比奈は左手に白い食べ物を与えてましたが、この頁では左手に愛用の螺旋煙管、右手に煙草道具一式を持っています。

 

2021年3月21日日曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その6

P4P5見開き

(読み)

アゝナカ

ああなか


\/

なか


タベラレ

たべられ


ナイ

ない


\/

たべられない


あし

あし


奈可゛じ満へ

なが じまへ


わ多りいろ\/

わたりいろいろ


志゛由ん

じ ゅん


れ起を奈し▼

れきをなし


▼それより

 それより


て奈可゛

てなが


じ満へ

じまへ


由起て

ゆきて


(大意)

あぁなかなか食べられない


脚長(あしなが)島へ渡り

いろいろ巡歴しました。

それより、手長(てなが)島へ行って

(補足)

変体仮名「満」(ま)が◯に☓で記号のようです。

この頁の画は脚長島で次の頁が手長島となります。銭湯の壁絵にしてもよさそうな一場面です。

朝比奈の出自を1頁で和田義秀で勇猛果敢をにおわせましたが、どうも出てくる場面場面ではどこか茫洋としてのほほんとした感じ。

 

2021年3月20日土曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その5

P3

P2P3見開き

(読み)

おち由起

おちゆき


春ぐ尓

すぐに


こうらい国 へ

こうらいこくへ


わ多り

わたり


それより

それより


志満

しま


\゛/ヲ

じ まを


めぐらん

めぐらん


とてまづ

とてまず


女 尓んじ満へ■

にょにんじまへ


■わ多り

わたり


それより

それより


ミ奈ミの

みなみの


方 尓ある

ほうにある


(大意)

逃げ落ちました。

すぐに高麗国へ渡り、

それより島々を巡ろうと

まず、女人島へ渡り

それより南の方にある


(補足)

「わ」は変体仮名「王」が多く使われますが、ここではすべて「わ」。

「ミ奈ミの」、平仮名「み」はあまり使われず、ほとんどカタカナ「ミ」。

「方尓ある」、「方」の読みを「ほう」としましたが、さて・・・

 朝比奈が女人島で女性にもてまくっていて、イヤぁどうもどうも、とてれているの画。この当時もてれると自分の頭をトントンとたたく仕草は同じでだった様子です。

女性は唐風で、外国といえばやはり中国だったからでしょう。脚に包帯みたいにグルグル巻にしてゲートルではないでしょうけど、全体の印象はモンゴルチベット風です。

 

2021年3月19日金曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その4

P2

(読み)

あさひ奈

あさひな


三郎よし秀ハ

さぶろうよしひでは


建保元酉年の

けんぽう元(癸)酉年の


いくさ

いくさ


やぶれて

やぶれて


あハの

あわの


国まで

くにまで


(大意)

朝比奈三郎義秀は建保元癸酉(みずのととり)年の

戦に敗れて安房の国まで


(補足)

「ひ」と「い」がまぎらわしい。よく間違えます。

「よし秀」の上が不鮮明でわかりません。なんとなく文字の輪郭が「三郎」にみえますけど。

建保元年に朝比奈義秀は安房に敗走してますので、その年の干支を調べると癸酉です。建保のあとの三文字がそれらしく見えますがよくわかりません。

「国」のくずし字がこの形であることはわかりますが、どうしてこんな形になるのか見るたびに不思議です。

 

2021年3月18日木曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その3

P1

(読み)

人 皇 八 十  四 代

じんのうはちじゅうよんだい


順  徳 院 の

じゅんとくいんの


??

??


和田左ヱ門

わださえもん


よしもりの

よしもりの


三 奈ん

さんなん


(大意)

人皇84代順徳院の??和田左ヱ門義盛の三男

(補足)

「人皇」(じんこう、じんのう、にんのう)。神武天皇を初代としてそれ以降の天皇のこと。それ以前の神代(じんだい)に対していう。母はよく「神武(じんむ)綏靖(すいぜい)安寧(あんねい)懿徳(いとく)孝昭(こうしょう)孝安(こうあん)孝霊(こうれい)孝元(こうげん)・・・」とお経を読むように暗証しているのを聞かされました。母の世代では小学校で記憶させられたのです。

??のところは「御宮」に見えますが、わかりません。

 四斗樽でしょうか、赤いラベルに和田とあり、樽には朝比奈。腰掛けているのが朝比奈でしょうけど、なんとなくドッシリ感がありません。左の袖口あたりの色柄がきれい。右手には螺旋形の煙管、首周りには半紙を折り紙にして襟飾り。表情はどこかさえません。

 

2021年3月17日水曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その2

見返し

(読み)

朝 比奈

あさひな


しま


免ぐり

めぐり


(大意)

(補足)

 豆本を読むうちに、すっかり見返しファンになってしまいました。見返しのない豆本はそれだけでがっかりです。見返しだけ集めて一冊にしたいくらい。

この見返しも単純そのもの、煙管と煙草入れ。なんの変哲も無いところが見ていて飽きません。

「比」はほとんど平仮名「ひ」。 

2021年3月16日火曜日

豆本 朝日奈嶋逥り その1

表紙

(読み)

朝 日奈嶋 逥 り

あさひなしまめぐり

(大意)

(補足)

 明治十五年五月廿二日出版御届で編輯兼出版人勝木吉勝の豆本。お値段は少々お高く二銭。

着物の家紋は丸に三つ引き両紋、他の豆本の朝比奈でも同様でした。頭の後ろの白い紙を折ったものはなんでしょうか。右手に持つ螺旋の品物はパイプのように見えます。背景の赤に小さなたくさんの白い丸は絞り柄みたいです。手前では島巡り先で出会ったのか異国人が笑っています。

綴じ糸の紙こよりは綴じ直したので新品同然。

 

2021年3月15日月曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その15

奥付

裏表紙

(読み)

御届明治十八年六月一日

編輯

画工兼出板人

定價壹銭五厘

東京日本橋區

馬喰町二町目七番地

佐藤新太郎

(大意)

(補足)

 明治十三年十二月十日御届で「朝比奈嶋めぐり」が画工竹内栄久・出版人宮田幸助により販売されています。この豆本の約5年前になります。また明治十五年五月廿二日出版御届で編輯兼出版人勝木吉勝が「朝日奈嶋逥り」を販売しています。竹内版の約2年後でその3年後にこの豆本という流れになります。国立国会図書館デジタルアーカイブで朝比奈シリーズの豆本はこの3冊を読むことができますが、もしかしたら他にもあるかもしれません。内容はどれも奇想天外な滑稽本みたいなもので似たりよったりであります。

 次回は残り一冊勝木版を読むことにします。

うっかりです。もう一冊ありました。鎌田在明が明治廿一年十月廿二日出版・著作印刷兼発行してました。なお「幕末明治の豆本総解説加藤康子」P286解説で朝比奈シリーズの詳しい研究内容を読むことができます。


 

2021年3月14日日曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その14

P12

(読み)

志満\゛/

しまじ ま


をめぐり

をめぐり


王可゛志る

わが しる


もとへ

もとへ


可へり

かへり


けり

けり


めで多し

めでたし


\/\/\/\/\/\/\/\/\/

(大意)

島々をめぐり

我が知る元の国へ

帰ってきたのでした。

めでたしめでたし。


(補足)

最後はめでたし\/の大安売り。天狗の鼻をもち、羽根の生えている人の手にしているのは、左手はお酒?、右手は大福帳?、何でしょうね。

 

2021年3月13日土曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その13

P10P11見開き

P10P11竹内版

(読み)

ひとつの志満

ひとつのしま


尓うつり

にうつり


このく尓の

このくにの


ひとハ

ひとは


者年可゛

はねが


者へ

はえ


す起

すき


志゛やう尓

じ ゆうに


志゛ざひ

じ ざい


奈り

なり


それ

それ


より

より


者んこくへ

ばんこくへ


王多り

わたり


(大意)

ひとつの島に移りました。

この国の人は羽根が生え

(すきじょうに)自在でした。

それから万国へ渡り


(補足)

 この頁の絵は女人島。他の頁に比べると文字も画も比較的鮮明です。建物もビシッと描かれています。色使いもにぎやか。

変体仮名「年」(ね)は「Q」のように◯に丶。

大意のところで括弧書きにしたところが不明です。羽根が生えて自由自在に空を飛べるということなんですけど。

 

2021年3月12日金曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その12

P8P9見開き

(読み)

あさひ

あさひ


奈ハ

なは


ごくの

ごくの


おん奈

おんな


きらい

きらい


奈れバ

なれば


そう\/

そうそう


このく尓

このくに


を多ち

をたち


のき

のき


また

また


(大意)

朝比奈は極めて女嫌いなので

はやばやとこの国を立ち退きました。

また、

(補足)

「ごく」を「極めて」と理解しましたが、さて?

4人の穴あき人間、一番右側は穴の向こうの海の青を色忘れしてしまいました。腹に穴が空いていると、腹に据えかねたり、腹の読まれたり、腹が立ったり、腹の中を読み合ったり、腹の虫がおさまらなかったり、腹を痛めたり・・・がなくて平和な国かもしれません。

 

2021年3月11日木曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その11

P7

P6P7見開き

(読み)

おとこめづら

おとこめずら


志くおもひ

しくおもい


奈可゛らこの

な がらこの


く尓者おとこ

くにはおとこ


のたねをのこ

のたねをのこ


さんとあさ

さんとあさ


ひ奈をひき

ひなをひき


とゞめる

とどめる


(大意)

男が珍しくおもいながら

この国に男の種を残そうと

朝比奈を引きとどめました。


(補足)

 この頁は竹内版のほうが読みにくい。

「このく尓者おとこ」、変体仮名「者」(ハ)だとはおもうのですが・・・

当時の火消しの様子がわかります。水をかける竜吐水というポンプみたいのが江戸後期にはありましたが、ほとんど役に立つことはなく、火消しは延焼を防ぐため家を壊すのが役割でした。ここでも水はでてきません。なんかのほほんとして愉快な画です。

 

2021年3月10日水曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その10

P6

P6P7竹内版

(読み)

阿奈の奈可へ

あなのなかへ


本゛うをとふし

ぼ うをとうし


可つぎあるく

かつぎあるく


ま多可ひもの

またかいもの


奈ど尓ハミ奈

などにはみな


あ奈の奈可へ

あなのなかへ


い連あるく

いれあるく


あさひ奈ハ

あさひなは


おん奈

おんな


志゛満へ

し゛まへ


つ起け連バ

つきければ


おん奈ども

おんなども


(大意)

穴の中へ棒を通し

かつぎ歩いていました。

また、買い物などには皆、穴の中へ

入れて歩いていました。

朝比奈は女島へつき

女たちは


(補足)

この頁の文章は佐藤新太郎版でも一部かすれはありますが読むことができます。ここの画は小人島のできごと。

「阿奈」、「あ奈」、変体仮名か平仮名か、どちらをつかうかは気分次第。

右下家屋の屋根部分が佐藤新太郎版では線の本数が少ないのに気づきました。左側の窓枠も異なっています。どうやら竹内版豆本を正確に写しとったものであるようです。同じ版木ではありませんでした。

 

2021年3月9日火曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その9


P5

P4P5竹内版

(読み)

ひとハ

ひとは


者ら尓

はらに


あ奈可゛

あなが


あり

あり


(大意)

人は腹に

穴があり

(補足)

 腹に穴がある人の国の画は次の次の頁になります。

脚が長く手の長さは普通の人が手が長く脚の長さは普通の人をおんぶして魚をとっています。両方長い人はいなさそうです。両方普通の長さなら普通の人と同じ国になってしまうし・・・

 

2021年3月8日月曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その8

P4

P4P5竹内版

(読み)

ところへ志り

ところへしり


を可けた者こ

をかけたばこ


を春ひ

をすい


い多ると起

いたるとき


このく尓

このくに


のひと

のひと


けむりを

けむりを


ミてくハし

みてか じ


とおもひ

とおもい


ミ奈\/

みなみな


多ちさハぐ

たちさわぐ


このく尓の

このくにの


(大意)

ところへ腰掛け

煙草を吸い始めましたところ

この国の人は(煙草の)煙を見て

火事だとおもい

大勢で騒ぎ立てました。

この国の


(補足)

 この頁の画は前頁の手長国のものです。そしてこの頁の文章は次頁の小人の国。

「志りをかけた者こ」、平仮名「か」「た」があり、変体仮名「者」(は)があります。

「ミてくハし゛とおもひ」、前後をとって「くハし゛」だけだと?です。

 

2021年3月7日日曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その7

P3下段

P2P3竹内版

(読み)

●尓とう里う

  にとうりゅう


奈しま多ふね

なしまたふね


尓のり

にのり


こびと

こびと


志満へ王多里

しまへわたり


志者゛らく

しば らく


けんふつ奈し

けんぶつなし


あしを

あしを


や春めんとこ多゛可

やすめんとこだ か



(大意)

(この島)に逗留しました。

再び船に乗り小人(こびと)島へ渡り

しばらく見物しました。

脚を休めようと小高い


(補足)

竹内版の文字が硬筆で書いたようにみえるので、くずし方がよくわかります。

読みづらいところはなさそうです。

 

2021年3月6日土曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その6

P3上段

P2P3竹内版

(読み)

ひとての奈可゛き

ひとてのなが き


ひとをせ本い

ひとをせおい


おゝかハ尓

おおかわに


いり

いり


さ可奈を

さかなを


とるこれ

とるこれ


そて奈可

ぞてなが


志満あし奈可゛

しまあしなが


じ満

じま


奈り

なり


あさ

あさ


い奈

ひな


この志満●

このしま


(大意)

(脚の長い)人は手の長い人を背負い

大川に入って魚を採っていました。

これぞ手長島脚長島でありました。

朝比奈はこの島(に)


(補足)

変体仮名「可」(か)が意外とやっかいです。小さい「つ」や小さい「り」にみえたり、「う」のようなときもあります。

「じま」、ここの「じ」は16部音符のよう。

「あさいな」、「ひ」と彫るつもりが「い」としてしまったか?

この頁の画は前頁の頭が犬の国のはなしです。

画は弟子の又その弟子が描いたようで稚拙。

 

2021年3月5日金曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その5

P2

P2竹内版

(読み)

ま多\/ふ年尓

またまたふねに


のり志とつの(しとつの?)

のりしとつの


志満尓王多り

しまにわたり


ミれバ

みれば


この

この


く尓の

くにの


ひと

ひと


あしの

あしの


奈可゛き

なが き


こと尓

ことに


志やうあ満り

しょうあまり


ま多里んごくの

またりんごくの


ひとハミ奈ふねの●

ひとはみなふねの


●奈可ささん个゛ん

  ながささんげ ん


あ満りあしの

あまりあしの


な可゛き

なが き


(大意)

ふたたび船に乗り

ひとつの島に渡りましたところ、

ここの国の人の脚の長さは二丈あまりありました。

また隣国の人はみな船の長さが三間あまりあり、

脚の長い(人は)


(補足)

 佐藤新太郎版は読みにくいので竹内版を読みます。

「ふ年尓」、変体仮名「年」(ね)は古文書でもここの形が標準です。◯に右側or右下に丶です。

「志とつの」、文章のつながりから「ひとつの」と読みました。間違っているかもしれません。竹内栄久はしとひの区別がつかない江戸っ子だったとしても文章にしてまでもそうするかなぁ。

「あしの」、やたらにでかい「し」もあれば、ここのように上からつながってちいさい「し」もあります。わかりずらい。

「尓志やうあ満り」、読みは「二ショウ」で間違いないはずですが、これは体積の単位です。なので濁点がないのはよくあることなので「二丈」、一丈は十尺です。このあとにも「ふねの奈可ささん个゛んあ満り」と「三間」という長さの単位がでてきます。一間は六尺。

 朝比奈の表情は竹内版では男前美男で理知的にも見えますが、佐藤新太郎版ではひょうきんでちょっと間が抜けたような感じになってしまっています。歌舞伎の化粧と装束そのままです。

 

2021年3月4日木曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その4

P1下段

P1竹内版

(読み)

かしらハいぬ

かしらはいぬ


のごとくもの

のごとくもの


いふこと王可ら

いうことわから


春゛王れ

ず われ


くん

こん


王く

わく


奈り

なり


(大意)

頭は犬のようで

しゃべる言葉はわからず

われわれは困惑しました。

(補足)

 竹内版の鮮明な画があったので読むことができました。

「かしらハ」、平仮名「か」の右の部分が「し」に流れているのでわかりずらい。

変体仮名「王」(わ)が3箇所あります。「已」のような形。

「くん王く」、「く」は「こ」にも見えなくはないですが、その前の行の「こ」と比べると、にていません。

 この話の内容の画は次の頁になります。

 

2021年3月3日水曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その3

P1上段

P1竹内版

(読み)

こゝ尓

ここに


こ者゛

こば


やしの

やしの


あさひ

あさひ


なの者゛ん

なのば ん


こくを

こくを


ミんと

みんと


ふね尓のり多いようを

ふねにのりたいようを


王多りつい尓ひとつの

わたりついにひとつの


志ま尓つきこの

しまにつきこの


ところハ

ところは


奈尓志満と

なにしまと


とへどいつこう

とへどいっこう


ひとのごとく尓て

ひとのごとくにて


(大意)

ここに小林の朝比奈というものが、

万国を見ようと船に乗り大洋を渡り

ついにひとつの島に着きました。

ここは何島というのかと聞いても

少しも答えません。

(かれらは)人のようにみえ


(補足)

 文章はかすれがそこそこあり、読みにくいです。竹内版も参考にして読みます。

変体仮名「者」(は)は平仮名「む」の「丶」をとったもののようにみえます。濁点「゛」がつくと「む」ににてます。

「いつこう」は上から続くのか、下にかかるのかわかりません。

 この豆本も前回「金太郎一代記」と同じで、竹内版の版木をそのまま流用したのか重ねて写したのかはわかりませんがほとんど同一です。版木はふつう出版してしまうと次の作品のために削ってしまいますので、5年間も版木がそのままであったとは考えづらいことです。

船には表紙の朝比奈の着物にあった家紋と同じ、丸に三つ引きがあります。背景の島や空が3色で彩られそれなりに工夫のあとがあります。

 

2021年3月2日火曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その2

見返し

(読み)

朝 比奈 者゛ん古く免ぐり

あさひ奈

あさひな ば んこくめぐり


明治十九年十二月十四日内務省交付1942

東京図書館印

TKIO LIBRARY

(大意)

(補足)

 朝日新聞が本日で1879(明治12)年1月25日の創刊から5万号となったそうです。3号からは1部1銭とありました。この豆本が1銭5厘です。現在の価格で約300円〜500円前後ですから、当時新聞がそれなりに高価なものであったような気がします。

 この見返しはいいですねぇ。遠くにとがった険しい山、沖には帆船が2艘。手前の青と赤色は煙管と煙草入れに見えます。紺色の長いものは刀かそれとも遠眼鏡?

 浜の岩に腰掛け、沖ゆく船を眺めながら、若かりし頃諸国を訪れた国々を思い出しながらのんびり一服でもしているといった趣。

 

2021年3月1日月曜日

豆本 朝比奈萬國めぐり その1

表紙

(読み)

朝比奈萬国めぐり

あさひなばんこくめぐり

(大意)

(補足)

 お伽噺のなかでもちょっと雰囲気の変わったものを読みます。異人変人の国々の旅行記です。これも前回と同じで、出版人宮田幸助・竹内栄久画の「朝比奈嶋めぐり」の版権を買ったとおもわれるものです。2冊を並べてすすめます。

 左手に扇、右手の手のひらには小人をのせて、驚きの表情、手にも顔にも歌舞伎役者のように隈取っています。扇子の白抜きが文字のように見えます。回転させたり反転させたりしましたが読めそうでだめでした。家紋は丸に三つ引き両紋で吉川家(吉川元春(きっかわもとはる))の家紋とありました。

 正月の新本販売日、棚に並べてお客さんの目をひかなければなりません。この表紙なら手にとってくれそうです。といっても正月発売は江戸時代、明治のこの頃はどうだったのでしょうか。