2021年6月30日水曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その6

P6

(読み)

[つゞき]

 つづき


く春やを

くずやを


与び一 者尓

よびいっぱに


うり王多し

うりわたし


それより

それより


く春゛やうちへ

くず やうちへ


もどりて

もどりて


禰多る

ねたる


ところ

ところ


与奈可

よなか


ごろ尓

ごろに


(大意)

屑屋を

呼び真っ先に

売り渡し

それから

屑屋は家へ

戻って

寝たのですが

夜中頃に


(補足)

「一者」がわかりません。いちはな(一端)が「いっぱ」と読めなくもありません。文章のながれから、「すぐに」「真っ先に」ですので、このようにしましたが、さて?

文章はくっきりはっきりでかすれもなく読みやすい。

当時の屑屋さんはこんなに長細い籠をかついでいたようです。担ぎ棒の端にちゃんと籠紐を止める出っ張りがあります、細かいですね。

 

2021年6月29日火曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その5

P4

P5

P4P5パノラマ

(読み)

P4

ぶんふく

ぶんふく


ちや可満

ちゃがま


てあし可゛

てあしが


者へ可けい

はえかけい


多゛し多る尓

だ したるに


ぢ奈いおゝ

じないおお


さ王起゛

さわぎ


(大意)

ぶんぶく茶釜

手足が生えかけ出てきて

寺内大騒ぎ

(補足)

 いやいや「寺内大騒ぎ」であります。箒をもったお弟子さんは腰巻きスカート(裙子)振り乱し太腿があらわ。どの登場人物も同じ動きがありません。読者はキャァキャァ大騒ぎしたでしょう。逃げ回るたぬきは茶釜が前掛けのよう。

 

2021年6月28日月曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その4

P3

(読み)

与びミせ个れバ

よびみせければ


お本起尓おどろ

おおきにおどろ


き者やく

きはやく


うり

うり


者ら

はら


者んと

はんと


でいり

でいり


の[つぎへ]


(大意)

呼び見せたところ

ひどく驚き

早く売り払おうと

出入りの


(補足)

「个れバ」、変体仮名「个」(け)は「々」のような形。

「者やく」「者ら者んと」、変体仮名「者」(は)が続きます。

棒をもって構えているお坊さんの黒いミニスカート(一休さんの衣装)みたいのは調べてみたら、腰衣(こしごろも)とあり裙子(くんし)ともありました。

P2P3見開き

 P2の棒手振りのお兄さんは屑屋(くずや)さんのようでした。白衣(はくえ)を着ている坊さんの右手をよく見ると、こっちへと人差し指で示しているようです。お寺の塀の中の樹木を大雑把に描いているのは簡単そうだけど腕の見せ所?両ページの地面の色が違ってしまいましたけど、気にしてないようです。

 

2021年6月27日日曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その3

P2

(読み)

せんとうの

せんとうの


ちや可満

ちゃがま


をいろり尓●

をいろりに


●可けおく尓

 かけおくに


ちや可゛満

ちゃが ま


尓志つ

にしっ


本可゛者へ※

ぽが はえ


※たる

 たる


尓お志やう

におしょう


おどろ起そ

おどろきそ


れ与りでしを

れよりでしを


(大意)

せんとうの茶釜

を囲炉裏に

かけておいたところ

茶釜に尻尾がはえたので

和尚は驚いて

すぐに弟子を


(補足)

「せんとうの」の意味がわかりません。読みを間違えた?

 棒手振りのおにいさんいなせだねぇって声をかけられたのかニコニコ顔。縦長のザルが目新しい。前の籠から細長い棒が見えるのは天秤か。「棒手振り 籠」で検索すると江戸時代後期や明治時代の写真がたくさん見つかります。わたしも子どものころ包丁研ぎやさんやら金魚売りやら魚屋さんなど棒手振りを日常に見て育ちました。

 

2021年6月26日土曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その2

P1

(読み)

明治十九年十一月廿四日内務省交付1653

む可し\/ もりんじ尓

むかしむかしもりんじに


と志ふるちや可゛満

としふるちゃが ま


あり个る?可゛ある

ありける?が ある


と起ぢ うし

ときじゅうじ


ちやの由を

ちゃのゆを


(大意)

昔々茂林寺に

古めかしい茶釜

がありました。?ある

とき住職が

茶の湯を

(補足)

 背景の青に重なっている部分がよくわかりません。この手のでだしは「むかし\/」ときまっているので、先頭の文字はかすれてよくわからないのですが、「む」の片鱗があります。

「も」のここの筆順は漢数字の「五」のくずし字とにています。

「ぢうし」、住持。「じ」は「寺」かとおもいきや「持」、もっとも「寺」が入ってますけど。

「ちやの由を」、3行前の「や」とこの「由」を比べると、にていてよく間違えてしまいます。「由」のほうは、中の縦棒がぐにゃぐにゃと曲がります。

 たぬきが熱くって変身中、住職はなぜか朗らかに笑顔。柱を画面のど真ん中に配置しているのは浮世絵や錦絵でもおなじみの構図。そのうしろには柿がたわわに実っています。

 

2021年6月25日金曜日

豆本 昔咄し婦゛んぶく茶釡 その1

表紙

見返し部分(表紙裏)

(読み)

昔  咄 し婦゛んぶく茶 釜

むかしばなしぶ んぶくちゃがま


綱 島 藏 版

つなしまぞうはん


東 京  図書 館 印 TOKIO LIBRARY

とうきょうとしょかんいん

(大意)

(補足)

 わたしの日本語変換では「話」も「噺」もでるのですが「咄」は(はなし)では出てくれません。(とっさ)で変換すると「咄嗟」と目当ての漢字がでました。「ふ」が変体仮名「婦」となっています。

たぬきは舞台衣装の様子、その隣も指示棒と綱をもっています。何色もの縦横縞の着物が目立ちます。さぁこれから出番だぞっ、気合が入った一場面。

表紙裏(見返し部分)はこのシリーズは何もないのが残念です。朱の印鑑があるのみ。

 

2021年6月24日木曜日

豆本 新版猫の者那し その14

裏表紙

(読み)

なし

(大意)

なし

(補足)

 前回の「昔噺し舌切すゞめ」の裏表紙は出版人亀吉にちなんで「亀」でした。今回のは猫にひっかけて「小判」に「鈴」、それと扇のおもてとあとひとつは何でしょうか?それらの配置をちらして柄にリズムを出さないようにしているのが気が利いています。

 次回からは「昔咄し婦゛んぶく茶釡」をはじめます。

 

2021年6月23日水曜日

豆本 新版猫の者那し その13

P13

(読み)

ごん本゛の春け多゛ち

ごんぼ のすけだ ち


尓て多いぢしゐん

にてたいじしいん


き与へも

きょへも


きさん可奈

きさんかな


ひふ多り

いふたり


めで多く

めでたく


ふう婦と

ふうふと


奈りける

なりける


めで多し

めでたし


\/\/

めでたしめでたし


\/\/

めでたしめでたし


日本橋区馬喰町二丁目十四番地

編輯兼

出版人 綱島亀吉


御届明治十九年九月廿日

定價壹銭

(大意)

ゴンボの助太刀にて

退治し、隠居(のところ)へも

帰参がかない

二人はめでたく

夫婦となったのでした。

めでたし

めでたしめでたし

めでたしめでたし

(補足)

文章に難しいところはなさそうです。

P12P13

 隠居のうしろの紅梅の屏風が引き立っています。福とおコマ夫婦、子猫も抱かれています。福の詫びをいれているニャァという声が聞こえてきそうです。

定価を壹銭としましたが、間違いかもしれません、安すぎます。今までの豆本だって壹銭五厘だったのですから。


 

2021年6月22日火曜日

豆本 新版猫の者那し その12

P12

(読み)

いる由へ

いるゆえ


ふ多り

ふたり


ともわし可゛

ともわしが


王びを春

わびをす


る由へ可い

るゆえかい


つ多ら与

ったらよ


可らんと

からんと


つれもど

つれもど


り福 ハ

りふくは


そのあら

そのあら


禰づミを

ねずみを


奈ん奈く

なんなく


(大意)

いるので

二人ともわたしが

詫びをするゆえ

帰ったらよかろうと

連れ戻りました。

福はその荒鼠を

なんなく


(補足)

 いいですねぇ〜、いかにも隠居然として。紫の羽織に黄色細い横縞着物、品と落ち着きがあります。火鉢は座布団を敷き、木目が目立った欅でしょうか。火箸に両手をのせて手焙しているような仕草もなかなか火鉢なれしている。絵になりますねぇ。

「ともわし可゛」、「わし」が重なっているので一文字かと見間違えました。ここでは平仮名「わ」ですけど、次行では「王びを」と変体仮名「王」(わ)を使っています。

「可いつ多ら与可らん」、一度読めてしまうとなんともないのですがあれこれ悩んだ箇所です。

 

2021年6月21日月曜日

豆本 新版猫の者那し その11

P11

(読み)

うちへいづれ与り可大 鼠  可゛

うちへいずれよりかおおねずみが


き多り

きたり


多いせつの箱物

たいせつのはこもの


を可ぢりこと

をかじりこと


ごとく奈んぎ

ごとくなんぎ


のよし

のよし


又 おこ満

またおこま


のし由志゛ん

のしゅじ ん


おミいさんも

おみいさんも


しん者゜いし天

しんぱ いして


(大意)

中へどこからか大きな鼠が

入ってしまい、

大切な箱物を

かじられ

ほとほと困っている

とのことだ。

またおコマの主人

おみいさんも

心配して


(補足)

変体仮名「与」(よ)がどうも「ふ」にみえてしまいます。

「多いせつの箱物」、現在なら「たいせつ(な)」でしょうけど、当時はこの表現が普通だったのでしょう。「箱物」と読みました。

「し由志゛ん」、変体仮名「志」(し)がわかりにくいですけど、「志」です。

「しん者゜いし天」、変体仮名「者」(は)に半濁点「゜」。変体仮名「天」(て)は「〃」+「く」のような形。

P10P11見開き

 P4P5のパノラマ歌舞伎舞台の再現です。両側に膝をピタリとつけて直立の立ち姿。もうひとりは膝立ちで白い大鼠を退治します。三者色とりどりでにぎやか。よぉっ! おコマとかフクとか掛け声がとんでるはず。

 

2021年6月20日日曜日

豆本 新版猫の者那し その10

P10

(読み)

可つお

かつ


ぶし

ぶし


さへ多べ

さえたべ


られぬ由へい満さら

られぬゆえいまさら


こうく王い奈しゐると

こうかい なしいると


ころへ可しらのごん本゛多づ年

ころへかしらのごんぼ たずね


き多りもと可ひぬしこの

きたりもとかいぬしこの


ごろゐんき与のくらの

ごろいんきょのくらの


(大意)

鰹節さえ

食べられないため今さら

後悔しているところへ

頭のゴンボが訪ねてきました。

(頭が言うには)

もとの飼い主が

隠居している蔵にこの頃


(補足)

 絵はまったくの歌舞伎舞台の一場面。それも勇ましく大立ち回りの姿です。左手に白いネズミをつかんでいるのはゴンボかフクか。

「こうく王い」、こうかい。旧仮名遣い。

「ころへ可しらの」、最初「ころ」を(くう)と読んでしまい意味がおかしい。前行から続いて「ところへ可しらの」でしたら意味がつながるので、「くう」は「ころ」とわかった次第。まだまだ超初心者なんです。「多づ年」、変体仮名「年」(ね)はおかしな形をしていますが、古文書では「◯」に「ヽ」になります。この豆本の「ねずみ」では変体仮名「禰」(ね)です。

「ごろ」、これはすなおに(ごろ)と読めました。2行前の「ころ」と同じ文字とはおもえません。くどいですが、5行目「こう」、6行目「ころ」、8行目「ごろ」を比較してみてください。

「ゐんき与の」、ここの「与」は最初「ふ」に見えてしまいました。


 

2021年6月19日土曜日

豆本 新版猫の者那し その9

P9

(読み)

ミもちと奈り

みもちとなり


や春\/子猫 を

やすやすこねこを


うミいとむつ

うみいとむつ


ましくゝらし

ましくくらし


ゐれどい満ハ可い

うれどいまはかい


ぬしとても奈起まぐ

ぬしとてもなきまぐ


れ禰こ由へおもふよふ尓

れねこゆえおもうように


(大意)

身ごもって

平穏に子猫を

生み、とても仲良く

暮らしていました。

しかし今は

飼い主もいない迷い

猫なので、おもうように

(補足)

親猫は着物を着てますが、おコマの膝に手をかけ甘える子猫は産着もなく猫そのまんまです。

P8P9見開き

フクの着物が淡黄色地に赤の縦縞とおしゃれです。画面全体の印象は明るく幸せな感じ。

 

2021年6月18日金曜日

豆本 新版猫の者那し その8

P8

(読み)

ところへ町  内 の

ところへちょうないの


可しらの可ゝへねこ

かしらのかかえねこ


ごん本゛といへる可゛

ごんぼ といへるが


とふり可ゝり王る猫 を

とおりかかりわるねこを


さん\゛/尓ころし両  猫 を

さんざ んにころしりょうねこを


尓可゛しやるさても二疋 禰

にが しやるさてもにひきね


こハさるい奈可へ立 の起

こはさるいなかへたちのき


ふうふと奈り王づ可尓

ふうふとなりわずかに


ひろいもの奈ぞして其

ひろいものなぞしてその


日をおくる間  おこ満ハ

ひをおくるあいだおこまは


(大意)

ちょうどそこへ町内の

頭(かしら)の飼っている猫

ゴンボというのが

通りかかり悪猫を

さんざんにこらしめ両猫を

逃してやりました。さてそれから

二匹の猫はさる田舎にたちのき

夫婦となりました。わずかに拾い物などをして

その日暮らしの生活を送りました。

そうするうちにおコマは

(補足)

2行目の「可ゝへ」が最初わかりませんでした。何度か繰り返して読んで「町内の頭が(飼っている)猫」と理解。誰々を「召しかかえる」などといいますけれど、これは人の場合なんですよね。家族同様にしているということでしょう。

「さん\゛/尓ころし」、「ころし」「こらし」「こかし」迷います。

「奈ぞして?日」、変体仮名「春」(す)に似てますけど違います。うーん、わかりません。

 貧しくとも縁側はとてもきれいです。庭をそれっぽく描くことなく単に文字の背景の柄にしているのはどことなく日本的です。

 上機嫌で語っているのはゴンボでしょうか。青地に紺と白(黄色にも見えます)の縞柄半纏、下の着物は緑地に黒でレンガ柄。煙草入れの箱は簡素ながらきちんと描いています。

<20221109記>

「奈ぞして?日」、「其」でした。古文書などよくでてくるのにどうしてわからなかったのでしょう。 

2021年6月17日木曜日

豆本 新版猫の者那し その7

P7

(読み)

いゝあ者せ可けおちを

いいあわせかけおちを


奈春とちう 天゛

なすとちゅうで


王る猫 らハ

わるねこらは


それと志つて

それとしって


ミち尓まち

みちにまち


ぶせ両  禰こを

ぶせりょうねこを


う多んと奈す

うたんとなす


(大意)

申し合わせ駆け落ちを

する途中で

悪猫たちが

それを聞きつけ

道に待ち伏せ

両猫を討とうとしました。

(補足)

「いゝあ(者)せ可けおちを」、現在の表記では「いいあ(わ)せ」。

変体仮名「奈」(な)、変体仮名「春」(す)、変体仮名「天」(て)、変体仮名「王」(わ)、変体仮名「志」(し)が続きます。

「両」のくずし字は下部で右回りに2周する感じ。

 フクは縦横縞の部屋着を着てすっかり亭主然、左手に持つは魚の開き中骨部分です。

P6P7見開き

左下隅に角火鉢をのぞかせているところが心憎い演出。

窓下薄赤色の土壁をそのまま白壁のほうへ斜めに延ばしてしまったのはご愛嬌。


 

2021年6月16日水曜日

豆本 新版猫の者那し その6

P6

(読み)

奈りとも

なりとも


立のいて

たちのいて


ふうふ尓

ふうふに


奈らんと

ならんと


ある与

あるよ


(大意)

どこでもよいから

ここを離れて

夫婦になろうと

ある夜


(補足)

 おこまが入っているのはザルではなく藁で編んだ籠でしょう。なかなか豪勢です。

ふすまの破れ、土壁の剥がれと竹で編んだ下地などは長屋住まいを描く定番です。

ふすまや屏風やおコマのひざ掛けの模様柄はどうしてもなんらかの模様を描かずにはいられない絵かきの性のような気がします。

 

2021年6月15日火曜日

豆本 新版猫の者那し その5

P5

(読み)

福禰古

ふくねこ


おこまを

おこまを


?れ天

?れ天


?の天

?のて


途(と)中悪(王る)

とちゅうわる


禰古に

ねこに


とりま可

とりまか


れる

れる


(大意)

福ねこおこまを

つれてたちのく

途中悪猫に

とりまかれる

(補足)

P4とP5は両開きにパノラマ広げて楽しむことができます。P5の説明書きの3,4行目がわかりません。

「津れ天真の天」(つれてまのて)かもとおもうのですが、意味のつながりがどうも・・・

P4P5パノラマ

 この豆本を買った人はきっと勝手なセリフをあてはめて歌舞伎の名場面のようにひとり語ってたのしんだはずです。もしくは数人で役割を決めてそばの手近なちゃぶ台などたたいて役者気分でえいやぁと演じたかもしれません。両側の脚をスッと伸ばした立ち姿がいいですねぇ。ふんどし丸出しのコケている猫や、頭を押さえてボケたような猫も笑えます。静もあり動もありあきません。

<20221109記>

読めずに不確かなところがわかりました。

津れ天

つれて

立 ちの久

 たちのく

です。

この頁の前後を再度読むと、「立」がありました。


2021年6月14日月曜日

豆本 新版猫の者那し その4

 

P3

(読み)

む可ふ

むこう


うらの

うらの


のら禰こ

のらねこ


可゛おうや

がおうや


きゝ天

ききて


さ王起゛

さわぎ


たてる

たてる


由へいつ

ゆえいっ


そ二疋で

そにひきで


いづれへ

いづれへ


(大意)

向こうの裏の野良猫が

大家が耳にして騒ぎ立てるので

いっそ二匹でどこかへ


(補足)

「む可ふ」、「ふ」が小さいのですが「ふ」だとおもいます。

「きゝ天」、変体仮名「天」(て)に濁点がついていますが、よくある間違いでしょう。

「さ王起゛」、変体仮名「王」(わ)は「已」のような形。変体仮名「起」(き)の濁点は正しい。

P3P4見開き

 おコマののる屋根は瓦のようですが、ふくのほうは色が赤なので銅葺きのよう、豪華です。きっと紺縦縞に暗い瓦の色では映えないので構図と色でバランスをとったのでしょう。左脇には蔵もあります。

2021年6月13日日曜日

豆本 新版猫の者那し その3

P2

(読み)

禰こ

ねこ


ふくと

ふくと


多可゛ひ尓

たがいに


いヽ奈可

いいなか


尓奈り

になり


猫 志れ

ねこしれ


づ多の

ずたの


しんで

しんで


いるを

いるを


きん志゛よ

きんじょ


のどら

のどら


禰こや

ねこや


(大意)

猫ふくと

互いにいい仲になり

ねこ知れず(人知れず)楽しんでいるのを

近所のどら猫や


(補足)

「猫志れづ(人知れず)」、誰にも知られないようにそっと。変体仮名「志」(し)がこのあとにもでてきます。

屋根の上で娘姿のおこまと次頁のふくがあいびきしている図。

 

2021年6月12日土曜日

豆本 新版猫の者那し その2

P1

(読み)

こゝ尓

ここに


志んミちの

しんみちの


かこゐものゝ

かこいものの


うちの可ひ

うちのかい


禰古おこま

ねこおこま


とと奈りの

ととなりの


ゐんきよ

いんきょ


のひそう

のひそう


(大意)

ここに新道(しんみち)の

囲いもの(妾)の家の

飼い猫おこまと

隣の隠居の

肥えた

(補足)

お妾さんの日本髪が色ズレかなにかで不細工になってしまってます。残念、他の部分はなんともないのに。

「禰古」、これじゃぁ、猫っていう感じがつたわりませんね。

「ひそう」、読み間違えかと辞書にあたると、「肥壮」がありました。文字通りの意味です。

 

2021年6月11日金曜日

豆本 新版猫の者那し その1

表紙

見返し

(読み)

新版 猫の者那し

しんぱん ねこのはなし


綱島藏版

つなしまぞうはん


明治二十年二月廿五日内務省交付2950

丸朱印 東京図書館印 TOKIO LIBRARY


(大意)

(補足)

 使い込まれた朱漆塗り漆器のような質感の縁取り。男の右手がのぞくのみで他は袂のふくらみで感じさせるという憎い構図。男の縦縞柄の色合いが渋い。女の縦横縞は庶民的な雰囲気。顔の描き方はごく簡単な線のみでいたって簡潔。お互いの視線はずれているもののホッとする安心感がある。

「な」の変体仮名はほとんどが「奈」ですが、ここでは「那」

 交付は明治20年2月の日付ですが御届は明治19年9月となってます。

 

2021年6月10日木曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その13

P13

(読み)

つゞらをあけ

つづらをあけ


れバ奈可より

ればなかより


いろ\/奈者゛けものいてゞ

いろいろなば けものいてで


者ゝアを

ばばあを


さん\゛/尓

さんざ んに


くるしめ

くるしめ


多り

たり


めで

めで


多し\/  \/

たしめでたしめでたし


御届明治十九年九月廿九日

馬喰町二丁目十四番地

編輯兼出版人 綱島亀吉

定價弐銭

(大意)

葛籠をあけると

中より

いろいろな化け物が出てきて

ババアを散々に苦しめました。

めでたしめでたしめでたし

以下略

(補足)

「いてゞ」、「いでて」の意味でしょうけど、次行の「ばばあ」を「者ゝア」と記すことは頻繁にあるので大したことではないのでしょう。

 地面の三色は境界がはっきり摺られてますが空の紺と水色はボカシが入ってます。描き分けているところが職人らしい。

P12P13見開き

縄の蛇の顔は漫画チックでかわいらしい。どの化け物もどこかひょうきんです。

裏表紙

出版人の名前が亀吉なので亀を意匠にしたもの、でもそのまんま。そのまま風呂敷の柄になります。

 

2021年6月9日水曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その12

P12

(読み)

者゛ゝあハ

ば ばあは


よろこび

よろこび


可へりて

かえりて


(大意)

ババアは

喜び

帰って


(補足)

 化け物だらけ。全部で7人?ヤシの幹に見えるのは首。縄は次頁で頭があります。いやいや怖い怖い。

「よろこび」、ここの「よ」は平仮名。

 

2021年6月8日火曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その11

P11

(読み)

△ミやけをやらんと

 みやげをやらんと


いゝけれバよく者゛り

いいければよくば り


由へとしハとつても

ゆへとしはとっても


ち可ら可゛ある可ら

ちからが あるから


おもひのをもら

おもいのをもら


王んといふ

わんという


由へおもひ

ゆへおもい


つゞらを

つづらを


やりけれバ

やりければ


(大意)

みやげをやろう言いました。

欲張りなので

「歳はとっても力があるから

重いのをもらいましょう」

と言うので、

重い葛籠をやり


(補足)

「ミやけをやらんと」、「や」が「ゆ」のように見えてしまいます。3行目と7行目の「由へ」と比較してください。「や」の変体仮名は「也」。

「ち可ら可゛ある可ら」、「ら」「う」「可」がみなよくにてます。しかし先頭の「ち」は書き間違いのような気がします。

 ふすまの奥の部屋からこっそりのぞく二雀はお正月の羽織袴に振り袖と正装のよう。

P10P11見開き

見開きの中央、どうしても欲張りババアの表情に見入ってしまいます。いろいろな人に似て見えます。

 

2021年6月7日月曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その10

P10

(読み)

れハ志可多

ればしかた


奈し尓つ満ら

なしにつまら


奈いもの

ないもの


尓てお

にてお


さけを

さけを


のませ

のませ


者やく

はやく


可へさん

かえさん


とおもび△

とおもい


者゛ゝ

ばば


「まこと尓

「まことに


このあひ多゛

このあいだ


ハお起のどく

はおきのどく


をい多し

をいたし


まし多

ました


(大意)

(来たので)仕方なく

つまらないもので

お酒を飲ませ

早く帰そうとおもい△


ババ

「まことに

この間は

お気の毒を

いたしました


(補足)

この頁と次頁は色の発色がよく、文字も鮮明です。ふすまの柄、雀やババの着物、火鉢の側面の模様と鉄瓶などどこをみても細かく描きこまれています。ババの表情は拡大してみても見事です。

「お起のどくをい多しまし多」、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。


 

2021年6月6日日曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その9

P9

(読み)

いろ\/の多可らもの

いろいろのたからもの


いで多りぢゝいハ

いでたりじじいは


よろ

よろ


こび

こび


ける

ける


と奈

とな


りの△

りの


△けん

 けん


どん者゛ゝ

どん者゛ゝ


それを

それを


ミ天

みて


うら

うら


や満しくおもひ春ぐ尓春ゞ

やましくおもいすぐにすず


めを多つ年尓由起个る尓春ゞ

めをたつねにゆきけるにすず


めハけんどん者゛ゝ可゛多づ年き多

めはけんどんば ばが たずねきた


(大意)

いろいろな宝物が出てきて

爺は喜びました。

隣のケチなババアがそれを見ていて

うらやましくおもいすぐに

雀の家を訪ねて行ったところ

雀はケチなババアが訪ねてきたので

(補足)

白壁背景のところはくっきりはっきりですが、床の緑色背景は暗くて読みづらい。

「ける」と「个る」両方の表記が使われています。

「ミ天」(みて)、変体仮名「天」(て)は「く」の上に小さな「乙」のような形がつきます。

「多つ年尓」、変体仮名「年」(ね)は「◯」+「ヽ」のような「Q」に似た形になります。ここでは◯になっていませんけど。

 爺さんは部屋の中でもわらじを履いているように見えます。よほど嬉しかったのかあわててそのまま上がってしまったのか、それとも土間なんでしょうか。どうやら旅支度もとかずにお土産がたくさん入った葛籠を開けてしまった感じ。爺さんの旅支度の色合いがシックでいいです。

P8P9見開き

隅から隅まで手を抜くことなく描いています。

 

2021年6月5日土曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その8

P8

(読み)

いへハ王しハとし可゛

いへばわしはとしが


とつてち可ら可゛

とってちからが


奈い可ら可る

ないからかる


いの(可)よい

いの(が)よい


とて

とて


つゞら

つづら


を●


●せおひて可へり

 せおいてかえり


个るうちへ可へりつゞ

けるうちへかえりつづ


らいあけてミれバ

らいあけてみれば


(大意)

問われ、わしは歳を

とっているので力が

ないから軽いのがよい

とのことで葛籠(ツヅラ)を

背負って帰りました。

帰宅して葛籠をあけてみると


(補足)

二行目「よつて」なのか「とつて」なのかわかりません。どちらも違うかも。

「可るいの(可゛)よひ」、(可゛)を忘れたようです。

「つゞらいあけて」、途中の「い」は何でしょうか?

 欲張り婆さんが葛籠を開けているところをのぞいている図。両手の指をいっぱいに広げて驚いています。

 古びてしまった木の壁の下はちゃんと石の基礎が敷かれているところがなかなか細かい。

 

2021年6月4日金曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その7

P7

(読み)

き多りし可バ

きたりしかば


春ゞめおふ

すずめおう


ぜいよつておくへと本し

ぜいよっておくへとほっし


いろ\/とちそうして

いろいろとちそうして


春ゝめおどりを春る

すずめおどりをする


やらお本さ王き

やらおおさわぎ


このよハと満り

このよはとまり


あくるひ尓奈りけれ

あくるひになりけれ


バぢゝいれいをのべ可いらん

ばじじいれいをのべかいらん


といへハおミやげ尓可るい●

といえばおみやげにかるい


●つゞら可゛

 つづらが


よい可お

よいかお


もひの可゛よい可と

もいのがよいかと


(大意)

着いたところ

雀が大勢出迎えて奥へと案内され

いろいろと馳走してくれました。

雀踊りをするやら大賑わいとなり

この夜は泊まりあくる日になって

爺は礼をのべ帰ろうと言うと

お土産に軽い葛籠がよいか

重いのがよいかと


(補足)

 赤や青の背景に文章が読みづらいところがあります。変体仮名「可」(か)がたくさんあります。形は「う」と同じ。ベンツのマークみたいな形は変体仮名「満」(ま)です。

「おもひの可゛」、ここの「も」の筆順は下部から左回りに上がって、ちょうど「S」を下から上へ書くような流れです。

 爺さんの表情がとても幸せそう。袴の四角い柄がいいですね。

P6P7見開き

 朝からお土産をもたせるのにも大騒ぎで「重いのがよいですか、軽いのがよいですか」とピーチクパーチク聞こえてきそうです。


 

2021年6月3日木曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その6

P6

(読み)

それ

それ


与り

より


春ゞめ

すずめ


のうち

のうち


を多づ年

をたずね


由起

ゆき


尓????


春ゞめのうち尓

すずめのうちに


(大意)

それから

雀の家を訪ね行き

?????

雀の家に


(補足)

 背景の薄紺色に文字がかすれていて大変に読みづらい。拡大して判読しましたけど終わりから2行前が読めません。

「由起」が行間にあります。彫ってから後で付け足したような感じです。

絵は雀の親がお土産の葛籠(ツヅラ)を爺さんにわたしているところ。横縞の色柄がきれい。うしろの子どもはいかにもという娘らしい明るい柄模様。縁側の板も茶色一色にしてしまわずに白色で変化をつけています。

 

2021年6月2日水曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その5

P4

P5

P4P5panorama

(読み)

P5

志やうしき

しょうじき


ぢゝい春ゞ

じじいすず


めのうち

めのうち


尓由起て

にゆきて


ちそう尓

ちそうに


奈る

なる


(大意)

正直爺

雀のうちへ行き

馳走になる


(補足)

 綱島亀吉のこのシリーズの特徴は二丁と三丁が広がって4頁ぶんのパノラマになる仕掛けがしてあることです。歌舞伎舞台のように横広がりの大きな空間を豆本という手のひらにのるような小さな中に実現しています。

 三味線お囃子笛太鼓の姉さんがた4人が右側に、それに合わせて踊る芸人たちは脚が人間なので呼び寄せたのでしょう。そして雀の母娘とその家族。爺さんは火鉢を横に満ち足りて幸せそうです。縁側の奥には見事なお庭がのぞめます。賑やかさが聞こえてきそうですがどこか上品さが漂っています。

 背景が真っ赤な絵の説明書きは短いけど少々難しい。

「志やうしき」は次の行が「ぢゝい春ゞ」でなければ読めなかったかも・・・

「尓由起て」、変体仮名「由」(ゆ)は縦棒の下部が少し曲がるのが特徴です。

 

2021年6月1日火曜日

豆本 昔噺し舌切春ゞめ その4

P3

(読み)

由起多づね

ゆきたずね


し尓その

しにその


者奈しを

はなしを


きゝて

ききて


奈げき

なげき


「これハ\/ハ

「これはこれは


おぢいさんよく

おじいさんよく


おいで奈さい

おいでなさい


まし多

ました


(大意)

ゆき、尋ねたところ

その話をきいて

嘆き(悲しみ)ました。

「これはこれは

お爺さん

よくおいでなさいました。」


(補足)

文章の出だしの「由」が背景の竹やぶと重なって見落としそうです。

下部の会話文の文字が女性文字っぽく感じるのは気のせいでしょうか。

「よく」、「よ」の変体仮名は「与」。

出迎えた二人は奥様風と娘風の衣装で奥様風はぽっくりのような高下駄を履いています。両手をそろえてお辞儀するその白い指の長さが目立ちます。

P2P3見開き

 見開きで見ると、すずめのお宿は左のやや奥まったところにあって二人をやや小さく描き、それよりも大きく描かれたお爺さんは手前からそこへと歩いてゆく遠近感があります。