2018年8月14日火曜日
紙漉重宝記 その4
P.2 l.3からl.6まで
(読み)
予これを家
よこれをいへ
童 丹教 諭せんと其 始終 を画 尓顕 ハし此の一 書 を
和らハにきやうゆせんとそのし志゛うをぐハにあらハしこのいつしよを
奈春 友 人 何 可゛し是を 梓 尓ちり者゛めん事 を乞ふ
なす。由(ゆ)うじん奈尓が しこれをあづさにちりば めんことをこふ。
(大意)
わたしはこのことを幼い者に教え諭そうと、その始終を絵に描きおこし、此の一冊の
本とした。ある友人がその本をみて出版してはどうかとすすめてくれた。
(補足)
「予」の漢字が中心線からはずれて右によってます。5行目の下の「予」も同様です。
どうしてなのでしょうか。
古来、手紙や口上書など文献では、平出(へいしゅつ)、闕字(けつじ)などの作法がありました。
高貴な人や称号、お役人やお役所などが文中に出てくるとき、行を改めて前の行と同じ高さにその文字を書いたり、一文字または二文字空白を空けたりすることです。
この「予」は自分を脇によせて左側に空白を空けています。
道ですれ違うときに脇による感じと似ているような気がします。
みずから一段低くあるいは脇に身を寄せ、相手に対する謙譲のあらわれでしょうか。
「尓」がアルファベットの筆記体の小文字の「y」に似ています。下側がクルッとまわっています。
二行目の下の方、にその「y」に似た字がありますが、これは「又」でした。
振り仮名がないと「に」と読んでしまいそうです。
「顕」のくずし字は振り仮名があっても?。じっと見て辞書で調べてわかりました。
旁の「頁」(おおがい)はこれが典型的なくずし方です。
「是」のくずし字もこれが代表的なものです。P.1の五行目にも「是」がありますが、
こちらは楷書です。変体仮名と正体仮名の使い分けと同じく、くずし字と楷書の使い分けも
どうなっているのかわかりません。
「梓にちりばめん事」、なんて風流な表現なんでしょうか。
木版刷の材木に「あずさ」という種類の木をつかったからだそうです。
一昔前の新聞なら「鉛にちりばめん事」となりそうですが、なんとも趣に欠けます。
発音です。
労苦(らうく) → ろうく
冥慮(めいりよ) → めいりょ
教諭(きやうゆ) → きょうゆ
始終(しじう) → しじゅう
画(ぐは) → が
本日はここまで。
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