2018年8月21日火曜日

紙漉重宝記 その11




P.4 紙漉重宝記譜言 l.6〜最後まで


(読み)
間   尓遺跡 せし事 疑 ひなし 隣 郡 濱 田 御領 土州  豫州  大
あい多゛にいせきせしことう多いなし。里んぐん者ま多゛ご連うとしう・よしう・於本


州等 各 々彼 地より伝 ふ 訳 天正  一 位柿  本  人 麿 明  神 是 を
春とうをのゝ可のちよりつ多う。王けてしょういちいかきのもとのひとまろみょうじんこれを


製 春る御 祖神 多れバ これを仰 ぎ尊 敬  春べし 世 人 其 神 慮
せいするをんそしんたれば、これをあをぎそんきやうすべし。よのひとそのしん里よ


を知らざ類を歎 きかくいふのミ
をしらざるを奈げきかくいうのみ


(大意)
地域で漉かれ始めたことは疑いがない。隣郡の濱田御領や土佐・伊予・大洲などは、
先程の地域から伝わったのである。そういったなかでも特に正一位柿本人麿は紙漉きの
御祖神であるので、これを仰ぎ尊敬しなければならない。世間一般の人びとがその神のありがたい配慮を知らないことを歎き、ここに記している次第である。


(補足)
各々(をのをの)ですが、縦書きの繰り返し記号「く」の長いフォントがありません。
また原本では「〃」のようなフォントも「々」を代用しています。

柿本人麻呂を広辞苑で調べるとこのようにでてきます。この原本では「麻呂」が「麿」となっています。てっきり二文字かとおもっていたら一文字でした。逆に古文書では二文字のような漢字が一文字のようなことがよくあります。

 遺跡、疑、伝、正、尊敬、歎などのくずし字はじっとながめているとなんとなく元の字が彷彿としてきますが、神、慮、類はどうでしょうか。学校で習った書き順などてんでに無視してることが多いのがくずし字と勝手に解釈しています。
形として覚えるしかありません。しかしながら各人が各様にくずすのでなかなか読めませんが、
これって現代の手書きの文字でも同じことです。

 扨(さて)、この頁の最後でもご祖神に感謝し尊敬しろ、庶民のそれらの心なきことがなんとも嘆かわしいと訴えています。

 かっての和紙生産地は、高齢の方が数名やっとのことで作られているようです。
弟子をとることもできず、このままでは和紙の伝統が絶えてしまいます。
国や公共団体は無形文化財などの指定はしますが、風前の灯に火をおこそうとはしません。

「予盤紙の問丸尓して文字尓拙く後笑の必然なること越志類されども」そうしないためにも
なにかできることから行動にうつしてゆかねばとおもっています。


0 件のコメント:

コメントを投稿