P9 国文学研究資料館蔵
絵本直指寳(えほんねざしだから)P9
(読み)
かゐこやしない草 㐧九
生 繭 を塩 尓浸 春こと
奈まま由 し本 ひ多
あり大きなる壺 の内 底
つ本 うちそこ
丹竹 乃簀を入其 上 に
多け す そのうへ
桐 乃葉を敷 又其上耳
きり 者 しき
繭 を敷 ならべ又其上
ま由 しき
耳桐 の葉を敷 て
きり 者 しき
ふり可けよく蓋
ふ多
をして上を泥
とろ
尓て塗 ふさ起゛
ぬり
七日すぎて
とり出 し
い多゛
釜 耳入湯
可ま 由
の中 よ里
奈可
篗 に可けて
王く
糸 尓久り
いと
取 な里
とる
北尾重政 画
(大意)
略
(補足)
「ふり可け」、原本にはこの語句の前に「塩(し本)を」があります。
「篗」、『わく 2【籰・篗】〔「枠(わく)」と同源〕
紡いだ糸を巻き取る道具。二本または,四本の木を対にして横木で支え,中央に軸を設けて回転するようにしたもの。おだまき。』
わたしも子どもの頃、このくるくるまわす手伝いが面白くて大好きでした。もっともこんな大きな仕掛けではなく、繭を入れてる鍋に火をくべていますが、そのようなものではなく、鍋にお湯をはったものでした。
この作業は原本のほうが仕事の内容としては正確です。鍋の中の繭から糸をほぐしとるこの画をよくみると、繭玉に一番近いところは数本が一緒にほぐされて、それから一本になっています。実際にやったことがある人ならすぐ理解できるとおもいますけど、たいていこんな具合になります。また、巻きとっているお姉さんの手つきもこの通りで、右手は右巻きに回すのですけど、左手の繭玉からの糸をたぐる調子にあわせておこなわないと、うまく巻き取ることはできません。糸巻きの部分もちゃんと巻き取った糸が一本一本描かれています(仕掛けの右下に巻き取り終わったふたつのおだ巻も)。そして、一巻分巻き取りおわった糸を吊るして干してあるのも、実際の作業どおりです。
重政の画では、糸を巻き取っているところでは右回しにしているはずなのに、巻き取る糸の位置がおかしなところに描かれていたり、巻き取った糸も白い布のように描かれてしまっています(かまどのそばに二つあるおだ巻きも)。巻き取る仕掛けに重しの石をのせているところはそれっぽいのですけど、残念ながら精出して仕事をしているようには見えません。絵師は実際にこの作業を見たことがないのだろうということがわかってしまいます。美人絵を描くのが第一義ですから、まあ、無理なことでしょう。
美人絵はもちろん、美しい。


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