2022年5月31日火曜日

猫鼠合戦 その5


P4前半 国立国会図書館蔵

(読み)

さてまたこゝにふく鼠

さてまたここにふくねずみ


といふもあ里て志多

というもありてした


の志ろねつミいふ丹

のしろねずみいうに


古んど猫 又 と

こんどねこまたと


いふやつせ可いの

いうやつせかいの


鼠  をからんと

ねずみをからんと


あまたのね古を

あまたのねこを


あつめを志よせる

あつめおしよせる


ゆふをふくねつミ

ゆうをふくねずみ


(大意)

さてこちらには福鼠という(大将)鼠がいました。手下の

白鼠が言うには

「今度猫又というやつが

世界の鼠を滅ぼそうと

たくさんの猫を

集めて押し寄せてくる」

と言うや、福鼠


(補足)

 変体仮名の使い方が興味深いです。変体仮名「尓」(に)を使わずに平仮名「に」を使い、かとおもうとあまり使われない変体仮名「丹」(に)を用いています。変体仮名「多」(た)は使われているものの平仮名「た」もあります。また変体仮名「毛」(も)がありますが、あまり見ない形です。

「せ可いの」、変体仮名「可」は現在の平仮名「ろ」そっくり。左の行には平仮名「か」があります。

 

2022年5月30日月曜日

猫鼠合戦 その4

P3 国立国会図書館蔵

(読み)

をあつめよに

をあつめよに


いふよふ国 にとう

いうようくににとう


ぞくいへに鼠  といふ

ぞくいえにねずみという


ねづミおふく

ねずみおうく


者び古る

はびこる


ね古奈き可゛

ねこなきが


古゛とく奈里

ご とくなり


よの鼠  を

よのねずみを


本ろ本゛さん

ほろぼ さん


と

と


者か里ける

はかりける


「さよう\/

 さようさよう


\/ \/

さようさよう


と

と


可くに

かくに


あるぞ

あるぞ


よ可゛つて

よが って


ん

ん


か

か


(大意)

(猫)を集め、「世に言われている

『国に盗賊、家に鼠』というのがある。

鼠が多くはびこり、猫はなきがごとくである。

世の鼠を滅ぼさんと力をあわせようではないか」


「そうだ。そうだ。そうだ」


「(俺が言うこ)と斯く斯くしかじかであるぞよ。

合点か


(補足)

変体仮名「尓」(に)がなく意識的なのか平仮名「に」だけになっています。また「ね古」では変体仮名「古」が、なにかこだわりがあるのか執拗にでてきます。

 鎧一式に身を固めて戦闘モードです。でもなんとなくさっぱり感があってとげとげしくありません。

 

2022年5月29日日曜日

猫鼠合戦 その3

P2 国立国会図書館蔵

(読み)

猫 又 といふもの

ねこまたというもの


あ里本ふ\゛/

ありほうぼ う


のね古を

のねこを


かたらい

かたらい


奈かにも

なかにも


ぶちね古

ぶちねこ


くろ

くろ


あか

あか


ミけ

みけ


きじ志ろ

きじしろ


とらね古

とらねこ


奈そと

なそと


いふごう

いうごう


ね古

ねこ


ま多ゝび

またたび


家内 安 全

かないあんぜん


「おれ可

 おれが


いふ古

いうこ


(大意)

猫又という猫がおりました。

あちこちの猫に声をかけ、なかでも

ぶち猫、黒猫、赤猫、三毛猫、きじ猫、白猫、虎猫などという

強く勇ましい猫(を集め)


「俺が言うこ(と)


家内安全

マタタビ


(補足)

 変体仮名のほうが少なく平仮名が目立ちます。

大将の背中にさしてあるのは鰹節でしょう。

 

2022年5月28日土曜日

猫鼠合戦 その2

見返し 国立国会図書館蔵

(読み)

や満又 者ん

やままたはん


者る志ん者゜ん

はるしんぱ ん


(大意)

やま又

春新版


(補足)

 やま又は版元の名前。春新版は春に出版したばかりの新版(たいていは正月三が日に出版)。

丸朱印は『 帝國圖書館印 IMP.LIBRARY. 既決・明治三六・七・二四・ 圖 』

「江戸絵本とジャポニズム」HPによると、猫と鼠の人形はともにおもちゃだそうです。昔からある素朴な玩具とありましたが見たことがありません。

 猫の方は睨みをきかしただるまのようなものが猫の人形にかぶせてあり、ややそっている羽子板みたいなものをたたくと反りが戻ってポンとだるまの頭がはねとんで猫があらわわれるのでしょう。

 鼠の方は、これは書いているうちになんとなく思い出しました。こんな玩具がありました。遊んだ記憶もあります。鼠の人形は最初細い棒の手元にあって、この手元部分を小刻みにたたくと振動でなぜか上に鼠が登ってゆくのです。最後はてっぺんの唐辛子に到着。

 豆本の見返しはほとんど表紙裏につまり表紙と同じ版木に彫られているのですが、ここでは表紙裏は白紙です。見返しはいつもながらこの部分だけをとりだし額装して飾りたくなるくらい味があります。

 

2022年5月27日金曜日

猫鼠合戦 その1

表紙 国立国会図書館蔵

(読み)

猫鼠合戦

ねこねずみかっせん


(大意)

略


(補足)

豆本です。作画者は歌川芳寅。版元はやま又。刊行年は文政〜安政頃?(1840〜1860)。

表紙の絵の通り猫と鼠が鎧に身を固め、戦うというお話。

朱の背景に白抜きの鈴があります。

 

2022年5月26日木曜日

舌切雀 その32

P20 国立国会図書館蔵

(読み)

せ うぢきぢゞいハ

しょうじきじじいは


(けん)どん者゛ゝア尓

(けん)どんば ばあに


春ゝめハ

すずめは


ときハ

ときは


尓

に


これ志多おきられ

これしたをきられ


し春ゝめ

しすずめ


可へつて

かえって


せん志ん尓春めるの志ぜんのり奈りとて

せんしんにすめるのしぜんのりなりとて


こゝろをあら多めさせ个る由へ者゛ゝアハ

こころをあらためさせけるゆえば ばあは


下女 と奈りてまめや可尓つとめむ春めハ

げじょとなりてまめやかにつとむむすめは


むこをとりて者ん志゛やう奈し

むこをとてりはんじょ うなし


めで多き者るを

めでたきはるを


む可へ个る

むかえける


めで多し

めでたし


\/

めでたし


渓斎

けさい


英 泉 画

えいせんが


吉 例 の通 り

きちれいのとおり


目出

めで


多し\/  \/  \/

たしめでたしめでたしめでたし


\/\/\/


(大意)

正直ジジイは欲深ババアに

スズメは

ときは

に


これ舌を切られしスズメ

かえって


(穏やかに住める?)自然の理であるから

心を改めさせることができたので

ババアは下女となって誠実につとめ

娘は婿をむかえ家はにぎやかにさかえました。

めでたい春を迎えたのでありました。

めでたしめでたし。


渓斎英泉画

めでたい習わし通り

目出たし

目出たし目出たし目出たし

目出たし目出たし目出たし


(補足)

「せん志ん尓春めるの」がわかりません。前頁の衝立の上の部分の文章もほとんど同じで「せんしん尓春め个る」とあります。

雀と同じくらいの大きさで、署名があります。ネットで人物像を調べ想像するに自己顕示欲満々で自信家だったようです。でも確かにうまい。この羽を広げて飛んでいる雀の羽根の部分は線で輪郭を描くことなく筆をおくだけでふんわり感やフサフサ感をだしています。

この豆本でもそうでしたが、完璧に読むことができませんでした。

 

2022年5月25日水曜日

舌切雀 その31

P19後半 国立国会図書館蔵

(読み)

「これ可らこゝろを

 これからこころを


阿ら多めま須可ら

あらためますから


どふぞおめを

どうぞおめを


お可け下 さり

おかけくださり


まし

まし


者゛け

ば け


ものを

ものを


者じめて

はじめて


ミまし多いやもふ

みましたいやもう


お者奈し尓ハ奈り

おはなしにはなり


ません

ません


(大意)

「これから心を

改めますから

どうぞお目を

おかけくださりませ


化け物を初めて

見ました。

いやもう、

恐ろしくて

話すこともできません。


(補足)

 会話の話し言葉は昔も今も変わらないようです。このままで理解できます。

 欲張りババアの背を丸めた後ろ姿だけで、気持ちを表現しているところがなんとも舌をまきます。

この婆さん、感情豊かで、化け物を見たとき驚愕し、スズメたちに宝物を要求し酔っ払ってとぐろを巻き、正直爺さん娘が宝を出しているのを障子の影からのぞいている妬みの顔と、ほんとにうまい。

 火鉢はよくある形ではなく筒状で飾りがついた高級品。奥の衝立も素敵です。現在ではパーティションとカタカナで商品自体はあるけれど、こういった昔ながらの衝立を普段使いするという文化は失われしまいました。