2024年4月7日日曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その11

P3 国文学研究資料館蔵

P4

(読み)

P3

「八 まんさ満おうま

 はちまんさまおうま


尓て可い尓き玉 ふ

にてかいにきたまう


「ふ个゛ん本゛さつきをつけ玉 ふ

 ふげ んぼ さつきをつけたまう


小象(こぞう)よそのさげている

   こぞう よそのさげている


命  を多゛以し尓もてふと

いのちをだ いじにもてふと


くじやうぶ

くじょうぶ


奈やうでも

なやうでも


本川き

ぽっき


りと

りと


おれ

おれ


類ぞ

るぞ


「者やの勘 平 尓さ

 はやのかんぺいにさ


づけるいのちハ三 尺

ずけるいのちはさんしゃく


尓多る可たら春゛

にたるかたらず


でよい志奈の

でよいしなの


やのお者ん尓さ

やのおはんにさ


づけるいのち

ずけるいのち

P4

を一 尺  四 寸

をいっしゃくよんすん


八百屋お七

やおやおしち


尓さづ个る

にさずける


いの

いの


ち

ち


を

を


一 尺  五寸

いっしゃくごすん


もらひ

もらい


多いと

たいと


ふどうさ

ふどうさ


ま者ん

まはん


ゑり可

えりか


そで口

そでくち


をかふ

をかう


きどり

きどり


奈り

なり

(大意)

 八幡様がお馬にて買いにいらっしゃった。

 普賢菩薩が、小象に注意あそばす。

「小象よ、その提げている命を大事に持て。太くて丈夫なようでも、ぽっきりと折れるぞ」。

「早野勘平に授ける命のは、三尺にたるかたらずでよい。信濃屋のお半に授ける命を一尺四寸、八百屋お七に授ける命を一尺五寸もらいたい」と不動様、まるで半襟か袖口を買うような様子である。

(補足)

 早野勘平(仮名手本忠臣蔵)は三十一歳で亡くなったので、三十になるかならずと引掛け。信濃屋のお半(浄瑠璃「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」)は十四歳で一尺四寸、八百屋お七は一五歳で一尺五寸ともじっている。

 半襟も袖口も汚れやすいところを防ぐために日常的に生地をあてて縫いかえたりするので身近な事柄。

 不動明王様のお顔は京伝の知り合いを似せて描いたような気がします。こんな挿絵でも、右手には煩悩を断ち切る剣をもち、左手には煩悩から吊り上げる縄を持たせ、きまりを守っています。

 

2024年4月6日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その10

P4 国文学研究資料館蔵

(読み)

春し八 十  八

すしはちじゅうはち


ハよねのまもり

はよねのまもり


とて人 可゛めで

とてひとが めで


多可る由へね多゛ん

たがるゆへねだ ん


高 直 奈り七 十  八

こうじきなりななじゅうはち


十  の命  もよい\/

じゅうのいのちもよいよい


尓奈りこし可゛ぬ

になりこしが ぬ


け多りてあし可゛

けたりてあしが


き可奈ん多りろう

きかなんだりろう


もう志多り春れ

もうしたりすれ


バいきている可ひも

ばいきているかいも


奈起ゆへ多とへいのち

なきゆへたとえいのち


可奈可゛くてもこれら

がなが くてもこれら


ハこれらハひけもの

はこれらはひけもの


尓てね多゛ん可くべ川

にてねだ んかくべつ


や春し

やすし

(大意)

(値段はや)すい。八十八は米(よね)の守りになり人がめでたがるので、値段は高値(たかね)になる。命も70、80になると、よいよいになり、腰が抜けたり、手足がきかなくなってきたりする。老いぼれになってしまうと、生きている甲斐もなくなってしまうので、たとえ命が長くても、これらは売れ残りとなり値段は格別に安い。

(補足)

「高値」、これは二文字セットで覚えたほうがよいくずし字です。よく出てきます。

「よい\/」、こんな時代から使われていたとは。

「ろうもう」、老耄ですが、〔「老」は七〇歳,「耄」は八,九〇歳の老人〕とは知りませんでした。

「ひけもの」、『ひけもの【引け物】

欠点があって,値引きしてある品物。「―の強売(おしつけうり)でもするやうに」〈二人女房•紅葉〉』

「ね多゛ん」、この変体仮名「多」は「さ」の一画目の横棒がないかたちとは異なるかたちのもの。

 

2024年4月5日金曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その9

P3P4 国文学研究資料館蔵

P4

(読み)

P3

「いのち者可

 いのちばか


りハうり可い

りはうりかい


尓奈らぬと

にならぬと


いふハも川と

いうはもっと


もなりいの

もなりいの


ちをうり可ひ

ちをうりかい

P4

尓志玉 ふハ

にしたもうは


可ミ本とけ

かみほとけ


者゛可り奈り

ば かりなり


「おとこのいのち

 おとこのいとち


ハ二十  五と四十  二

はにじゅうごとしじゅうに


女  の命  ハ十  九

おんなのいのちはじゅうく


と三 十  三

とさんじゅうさん


これらハ

これらは


やくどしと

やくどしと


いゝて人 可゛

いいてひとが


きらふゆへ

きらうゆへ


尓ね多んや

にねだんや


春し八 十  八

すしはちじゅうはち

(大意)

「命ばかりは売り買いにならぬ」というのはもっともなことである。命を売り買いされてるのは神仏ばかりである。

 男の命は25と42、女の命は19と33、これらは厄年といって、人が嫌うので値段は安い。

(補足)

「尓志玉 ふハ」、「ふ」の文字のかたちが不明です。

「やくどしと」、「ど」が「土」のくずし字のようにみえるのですが。

 店先の暖簾には「命」の現代風書体の意匠です。ひとつおいて「長寿や」とあります。

 

2024年4月4日木曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その8

P3P4 国文学研究資料館蔵

P3

(読み)

いのちといふものふとくじやうぶ尓ミへ

いのちというものふとくじょうぶにみえ


てもミじ可起あり本そくて

てもみじかきありほそくて


よ王\/志多る丹毛奈可゛き

よわよわしたるにもなが き


ありみ可け尓ハよらぬ

ありみかけにはよらぬ


もの奈り

ものなり


「一 代 の満もり本んぞん

 いちだいのまもりほんぞん


王可゛あ川゛可り能子の

わが あず かりのこの


うまれる多び尓いの

うまれるたびにいの


ちのとんやへき多り

ちのとんやへきたり


玉 ひそれ\/の

たまいそれぞれの


いんゑん尓志多可゛ひて

いんえんにしたが いて


あるいハ奈可゛くあるい

あるいはなが くあるい


ハミじ可起いのち

はみじかきいのち


を可いとりてさ

をかいとりてさ


づけ玉 ふ春こ

ずけたまうすこ


しもゑこひ

しもえこひ


いきハ奈され

いきはなされ


春゛と可く奈可゛

ず とかくなが


ミし可ハさ多゛

みじかはさだ


まれるいんゑん

まれるいんえん


奈り

なり

(大意)

 命というものは、太くて丈夫に見えても短いのもあり、細くて弱々しくしていても長いものがあり、見かけにはよらぬものである。

「人間の守り本尊が、おのれの預かりし子の生まれるたびに、命の問屋へおいでになって、それぞれの因縁に従って、長い命やあるいは短い命を買い取って授けられる。少しもえこひいきはなされず、いずれにせよ命の長短は定まった因縁なのである。

(補足)

「満もり本んぞん」、『人はそれぞれの生まれ年の干支によって、守り本尊が決まっていて』、ここに出てらっしゃた普賢菩薩は辰・巳、虚空蔵菩薩は丑・寅とありました。

「あるいハ奈可゛くあるいハミじ可起」、『② (「あるいは…あるいは…」の形で)同じような事柄を列挙して,さまざまな動作が行われたさまを表す。「―海山に遊んで休養をはかり,―勉学にいそしむ者もある」〔漢文訓読に由来する語法。古く「あるひは」と書かれることもあったが,「あるいは」が本来の形〕』

「よ王\/志多る丹毛」、ここの変体仮名「毛」(も)はこのあとのものとかたちがことなっていますが、両方とも同じように使われます。

 日除け暖簾に染め抜いてある字は「大丈夫請合」、P4の箱看板のと同じでした。

それにしてもにぎやかすぎる店前です。

 

2024年4月3日水曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その7

P2 国文学研究資料館蔵

(読み)

「日 月 の

 にちげつの


ものさし

ものさし


尓て命

にていのち


の奈かミし

のながみじ


可を者可る

かをはかる


「者んく王のちハ

 はんか のちは


人 のやう志゛やう

ひとのようじ ょう


可゛王るうござ

が わるうござ


れバ多ふんみ

ればたぶんみ


じ可い命  可゛

じかいいのちが


うれま春

うれます


と可く奈

とかくな


可゛い以のち

が いいのち


ハ以奈可

はいなか


む起で

むきで


ござり

ござり


ま須

ます

(大意)

「年月の長さを測る物差しで命の長短を測る

「人の集まるにぎやかなところは健康を保つのが難しくございますので、多分短い命が売れます。どちらかといえば長い命は田舎向きでござります。

(補足)

 「火」が測っているものさしは「鯨尺」のよう、いくらか長く命を測ることができそう。「木」「土」の二種類の羽織紐が丁寧に描かれています。

 

2024年4月2日火曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その6

P2 国文学研究資料館蔵

(読み)

◯木 火土

  もっかど


金 水 の五

きんすいのご


ぎやうハいの

ぎょうはいの


ち能者゛んとう

ちのば んとう


奈りこの五

なりこのご


人 尓ていのち

にんにていのち


をうけもち尓

をうけもちに


して志者い春る

してしはいする


ゆへ尓春べて人

ゆへにすべてひと


のいのちハ木 火

のいのちはもっか


土金 水 の者゛ん

どきんすいのば ん


とうもち奈り

とうもちなり


一 人可けても

ひとりかけても


いのちまつ多

いのちまった


から春゛

からず


「いのちの仕入

 いのちのしいれ


ふちやう可゛つ以て

ふちょうが ついて


可多奈かけのやう

かたなかけのよう


奈もの尓可けてある

なものにかけてある

(大意)

◯木火土金水の五行は命の番頭である。この五人で命を受け持ち支配するので、すべて人の命は、木火土金水の番頭がついていることになる。一人欠けても命は完全なものとはならない。

「仕入れた命が、商品札がついて刀掛けのようなものにかけてある。

(補足)

「志者い春る」、変体仮名「者」(は)だとおもうのですけど、かたちがなんか変、ことなる変体仮名?

「五ぎやう」、五行(説)のこと。『① 中国古来の哲理で,万物を組成する五つの元になる気。木・火・土・金・水の称。五行のおのおのを,兄(え)・弟(と)の二つずつに配してできたのが十干(じつかん)である』

「まつ多」、「待った」ではなく「全き(まったき)」。

 木火土金水の五人、目がみな同じで、五人で一組と納得。


2024年4月1日月曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その5

P1 国文学研究資料館蔵

(読み)

いのちハ人

いのちはひと


者゛可り尓あ

ば かりにあ


ら春゛ちやう

らず ちょう


るいちくるい

るいちくるい


う本むし

うおむし


けらさう

けらそう


もく尓

もくに


い多るまで

いたるまで


それらに

それらに


仕入 あり

しいれあり


つる可めの

つるかめの


奈が起いの

ながきいの


ちぶゆう

ちふゆう


のいちごの

のいちごの


みじ可起松

みじかきまつ


のちとせ

のちとせ


あさ可゛本のひ

あさが おのひ


とさ可りミ奈

とさかりみな


さ多゛満りのい

さだ まりのい


のちなり

のちなり

(大意)

 命あるものは人ばかりではない。鳥類・畜類・魚・虫けら・草木にいたるまでそれぞれに仕入れがある。鶴亀の長き命、蜉蝣(かげろう)の一生の短きこと、松の千年、朝顔の一盛り、これらみな定まりの命なのである。

(補足)

「あさ可゛本」、江戸時代に何度か朝顔人気が高まったそうで、品種改良も盛んに行なわれたとありました。