2021年12月31日金曜日

桃山人夜話巻四 その8

P4後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

来 ること奈し毛路こし尓東 坡 といふ人 の子庭

き多          とう者゛   ひと こ尓ハ

きたることなしもろこしにとうば というひとのこにわ


尓出 多るとき蛇 の大 い奈る可゛雀  の子越久ハへ多る

 いで    へび 於本     春ゞめ こ

にいでたるときへびのおおいなるが すすめのこをくわえたる


を見天哀  尓思 ひ竿 越取 天蛇 越打 尓蛇 ハ其

 ミ 阿ハれ 於も さ本 とり へび うつ へび 曽の

をみてあわれにおもいさおをとりてへびをうつにへびはその


侭 落 天雀  の子ハ危  き越逃  れ多りや可゛天曽の

まゝおち 春ゞめ こ 阿やう  の可゛

ままおちてすずめのこはあやうきをのが れたりやが てその


蛇 越うちこ路しつゝをの連ハ不仁 の毛の奈り

へび            ふじん

へびをうちころしつつをのれはふじんのものなり


(大意)

来ることはないのである。唐土(もろこし)に東坡(とうば)という人の子どもが庭に

出ていたとき、蛇の大きいのが雀の子をくわえているのを

見てかわいそうに思った。竿を取って蛇を打つと蛇はその

まま落ちて雀の子は危ういところを逃れることができた。すぐにその

蛇を打ち殺しながら「おまえは慈しむ心のないやつだ。


(補足)

「来ること奈し」、「ること」がやや悩む。「こと」は合字。

「東坡」(とうば)とは「蘇東坡」(そとうば)という人のことで「卒塔婆」(そとうば)とは関係がなさそうです。

「久ハへ多る」、「く」の上に「〃」があります。変体仮名「久」(く)。変体仮名「天」(て)とそっくりなので間違えやすい。

「こ路しつゝ」、「つゝ」が「个る」にも見えます。しかしそれだと話の内容がおかしくなる。

「や可゛天」、すぐに。ただちに。という意味もあることを知りました。

 

2021年12月30日木曜日

桃山人夜話巻四 その7

P4前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ら須゛曽れ与りし天病  と奈り久 しく奈やミ个る可゛

               やまひ   ひさ

らず それよりしてやまいとなりひさしくなやみけるが


医療  越得天後 尓愈 多りされども子どもホ可゛家

ゐ里やう え のち いゑ      こ  ら  いゑ

いりょうをえてのちにいえたりされどもこどもらが いえ


尓ハ蛇 の多ゝ里春こしも奈可りし是 己 れ尓感 じ思

  へび            これをの  可ん 於も

にはへびのたたりすこしもなかりしこれおのれにかんじおも


ふ可゛故 尓応 し天来 れり求 めざれバ鬼神 といふ共

   ゆへ 於う  き多  もと    きしん   とも

うが ゆえにおうじてきたれりもとめざればきしんというとも


(大意)

(蛇は)見えなかった。それからしばらくして村長は病となり長い間苦しんでいたが

治療のかいあり、後に回復した。しかし蛇をなぶり殺した子どもたちの家

には蛇のたたりは少しもなかった。これは村長自身が恐れを感じてしまった

がために、それに応じてたたりが来たのである。求めなければ鬼神といえども


(補足)

 使われている漢字は比較的楷書に近く、漢字のくずし字があってもなじみのあるものなので読みやすい文章です。

 恐れを感じたり、暗闇に何かいるのではないかとおびえたり、自分の心のすきに鬼神はやって来るものなのだと説くのですが、ウーン。まぁそういうところもあるにはあるでしょう・・・

 

2021年12月29日水曜日

桃山人夜話巻四 その6

P3後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

村 長 此 所  をとをり可ゝ里見天大 い尓恐 連

むら於さこのところ       ミ 於本  於曽

むらおさこのところをとおりかかりみておおいにおそれ


个れバ其 夜一 丈  者゛かりの蛇 村 長 可゛袮ま尓入

     よいちぜ う     へびむらをさ     いり

ければそのよいちじょうば かりのへびむらおさが ねまにいり


天枕  のもと尓息 越つきゐ多り村 長 大 い尓於ど

 まくら    いき      むらをさ於本

てまくらのもとにいきをつきいたりむらおさおおいにおど


路き天人 をして追 ハせ个る尓他の者 の目尓ハ可ゝ

   ひと   於ハ     た もの め

ろきてひとをしておわはせけるにたのもののめにはかか


(大意)

村長がちょうどそこを通りかかり、見て大変に恐れ

おののいた。その夜、一丈ばかりの蛇が村長の寝室に

入り枕元に息をついて居た。村長は非常に驚いて

人を呼んで追い払わせようとしたが、他の者の目には


(補足)

「とをり」、「と」が牛の角のようです。これ一文字だけだったら読めそうもありません。

「村長」の振り仮名が「於さ」「をさ」と異なっています。

「枕」(まくら)、「く」が「ム」のように平らです。

 村長たるもの村の子どもどもが蛇にそのような酷いことをしていたら、怒って説教しなければいけないとおもってしまうところですが、見過ごしてしまったための蛇のたたりかもしれません。 

2021年12月28日火曜日

桃山人夜話巻四 その5

P3前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ゝ阿ること奈り東 武の東   在 所 さ可さいといへる村

            とうぶ ひ可゛しざ以しよ        むら

まあることなりとうぶのひが しざいしょさかさいといえるむら


尓天い奈りの宮 を建 る時 地を掘 天个れバ其

      ミや 多つ ときち 本り    曽の

にていなりのみやをたてるときちをほりてければその


丈 一 丈  者゛かり奈る蛇 越本り出  し多り子ども多 く

多けいちぜ う      へび   い多゛   こ  於本

たけいちじょうば かりなるへびをほりいだ したりこどもおおく


集  りて是 越とらへ石 の上 尓天小刀   を以 てニ

あつま  これ    いし うへ  こ可゛多奈 もつ 尓

あつまりてこれをとらえいしのうえにてこが たなをもってに


三 寸  づゝに切 竹 の串 尓さし天毛天遊  登せり

さん春゛ん   きり多け くし      阿そび

さんず んずつにきりたけのくしにさしてもてあそびとせり


(大意)

たまにあることである。江戸の東の田舎にある「さかさい」という村

で、稲荷の宮を建てるときのこと地面を掘ってみると

身の丈1丈(約3m)ほどの蛇が出てきた。子どもがたくさん

集まってきて、この蛇を捕らえ石の上で小刀を使い2,

3寸ずつに切り、竹の串に刺してもて遊んでいた。


(補足)

「宮」というくずし字は「宀」に「五」のくずしじのような形のものがよく出てきます。ここでは「宀」の部分が「ミ」のようにして「乙」に点のようなかたちになっています。

「本り出し多り」、前行では「掘天」(本りて)と漢字でした。同じ表現はなるべく繰り返さない。

「遊登せり」、変体仮名「登」(と)が二文字に見えますけどこれで一文字。

 「さかさい」がどの辺だろうと調べました。安藤広重「名所江戸百景 逆井乃わ多し」として描かれているくらい有名なところでした。現在の江戸川区。

 

2021年12月27日月曜日

桃山人夜話巻四 その4

P2後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

念 も己 れ尓出 る時 ハ可奈ら須゛己 れ尓帰 る与り

袮ん 於の  いづ とき      をの  可へ

ねんもおのれにいずるときはかならず おのれにかえるより


外 ハ那しと志るべし子供 奈どハ数 多遍びを

本可        こども   あま

ほかはなしとしるべしこどもなどはあまたへびを


もうちころしま多ハ生 殺 し尓春ること阿れども

         奈まごろ

もうちころしまたはなまごろしにするkとあれども


其 心  無念 無想 奈れ者゛阿多をむくふこと奈し

曽のこゝろむ袮んむさう   

そのこころむねんむそうなれば あだをむくうことなし


只 是 越見て恐 連ぬる者 尓取 附 多る例  ハま

多ゞこれ ミ 於曽   もの とりつき  多めし

ただこれをみておそれぬるものにとりつきたるためしはま


(大意)

(悪)念も、自分自身から出るときは必ず自分自身に帰ってくる

他はないものであると知るべきである。子どもなどはたくさんの蛇を

なぶり殺したり半殺しにしたりすることがあるが、

彼らの心に邪念が何もないから仕返しされることはないのである。

ただ、これらの蛇が殺される様子を見て恐れをいだいた者に念が取り付いた例は


(補足)

「那しと」、いままで出てきた変体仮名「那」(な)のくずし方が少し異なっている形です。

「遍びを」、変体仮名「遍」(へ)を使ってます。同じ音がでてきたらなるべく異なる表現を使うようにしているこだわりがあるようです。

「阿多をむくふこと」、前頁にも出てきましたが、ここでもやはり「阿多」に濁点がありません。

「恐連ぬる」、「恐」と「思」のくずし字は似ています。「想」もやはり似ています。

 蛇をいたぶり殺すのに子どもも大人もあるかい!と怒っている人がたくさんいるようにおもいます。

 

2021年12月26日日曜日

桃山人夜話巻四 その3

P2前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

ざる可゛ゆへ奈り登曽゛か多り伝 ふ其 ゆへい可尓とあ連

              つ多 曽の

ざるが ゆえなりとぞ かたりつたうそのゆえいかにとあれ


者゛こ奈多尓念 越残 春可゛ゆへ尓其 念 尓応 し天

      袮ん のこ      曽の袮ん 於う

ば こなたにねんをのこすが ゆえにそのねんにおうじて


来 る此 念 ハ毛のゝ心  を志り多る者 の多つこと阿

き多 この袮ん    こゝろ     もの 

きたるこのねんはもののこころをしりたるもののたつことあ


多ハざるとこ路奈り去 バ蛇 尓可ぎら須゛一 切 の悪

         され へび      いつさ以 あく

たわざるところなりさればへびにかぎらず いっさいのあく


(大意)

(とどめをささな)かったためであると語り伝えられている。その理由は

どうしてかというと、蛇がまだこちらに念を残しているために、その念の深さに応じて

現れて来るからである。この念は物事の道理を知り得ている者でも絶つことが

できないものである。それゆえ、蛇に限らず一切の悪(念)


(補足)

 いくらか読みにくく理解も難しいところです。何度も音読するうちに文節の区切りや言い回しの意味がわかってきました。

「来る」、次につながらずにここで切れます。

「とこ路奈り」、「と」の二画目が一画目よりずっと高い位置にあるので「己」のようにみえます。

 

2021年12月25日土曜日

桃山人夜話巻四 その2

P1後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

入れ天打 多る人 の眼  中 尓毒 氣をふき可け天

い  うち  ひと 可゛んちう どくき  

いれてうちたるひとのがんちゅうにどくきをふきかけて


病  と奈し頭  をうち落 し多る者 の釜 のうち耳

や満ひ   可しら   於と   もの 可満

なやいとなしかしらをうちおとしたるもののかまのうちに


とび入 天食  毒 尓奈や満せしも其 生 根 を多\/

  いり しよくとく       曽のせうこん

とびいりてしょくどくになやませしもそのしょうこんをたた


(大意)

(追い)込んで叩いた人の目にむけて毒を吹きかけ

病気にしたり、蛇の頭を切り落とした者の飯の釜の中に

飛び込んで食毒で悩ませたりしたのも、蛇にとどめをささなかった


(補足)

 わたしが子どもの頃、蛇はよく見かける生き物で大事にされていました。中には棒で押さえ下駄で踏み殺すような乱暴者もいて、きっとたたりがあったかもしれません。

「うち耳」、「に」の変体仮名は「尓」「丹」「仁」(これが崩れて「に」になった)がよく使われるようですが調べると「耳」もありました。ここの「干」に似た変体仮名に近かったのが「耳」だったのですが、よくわかりません。